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00039 : トイプードル様、精霊さんがね…ねぇ。

俺の手の平へ乗ったトイプードル…もとい、エンシェントドラゴン様が町の精霊達の様子を見て唖然としてんよ。

いやね、一見、トイプードルの子犬としか見えないエンシェントドラゴン様がお口をさ、あんぐりこって開けて真ん丸お目目を更に見開いてるのは…萌えるんですがぁっ!


俺の視線に気付いた精霊さんが、俺の手の平を窺い固まる。

視線が釘付けなんですけど…どったの?

俺達の近くに居た他の精霊様達も精霊さんの様子に気付き、俺の手の平をのぞき込んでは固まる。

そんな集団を見て、何事かと集まり…固まる。


なんぞ、これ?


「慶…さ・まっ…この、愛くるしい生き物は?」何かを堪えるように。

「ああ、この方はエンシェントドラゴン様だよ。

 正確にはミニマム・エンシェント・ドラゴン様だね。

 中央から来られたんだ。

 フェンリル様のお師匠様でもあらさられるんだよねぇ。

 偉い方だからさ、失礼の無いようにね」っと告げたんだけど…

見た目詐欺だかんなぁ。


依り代へ宿った精霊さん達に囲まれ、エンシェントドラゴン様が驚き固まってんだが…

絶対にドラゴンっより愛玩動物だよねっ!


『こ、この者達は、何故集まって来て儂を食い入るように見て、おるの、じゃ?

 なんだか、怖いのじゃがの』

エンシェントドラゴン様と精霊さん達が争えば、エンシェントドラゴン様は負けないだろうね。

でも、この異様な雰囲気にのまれ、ピルピル震えてるんですが…

愛くるしさ、アァァァップゥッ(UP)ってね。


したらね、精霊さん達が感極まったように…

「「「キャァァァッ!可愛いぃぃぃっ!」」」って。


「ねぇねぇ、慶様ぁっ!

 その子、抱かせていただけませんこと?」

「あっ、ズルいわよっ!

 私も、私もぉっ!」

「当然、私もですわよね」

そんな感じで、急に姦しい。


中には男性精霊がね。

「俺も良いかなぁ」ってたんだけど…

「アンタは後々」って一蹴され、スゴスゴと。

哀愁漂う背中が物悲しかったよ。


皆が目をギラギラして近寄って来るからさ、思わずフェンリルさんを見ると…目を合わせぬように、そっぽを向かれてしまった。

をいぃぃぃっ!


『け、慶よっ…なんじゃか、怖いのじゃが…』

『大丈夫ですよ。

 優しくしてくれますからね』っ()げた。


『へっ?

 慶よ、何を?』

いや、この御姉様軍団に迫られて抵抗は不可能です。

気持ちも分かりますので…


「優しくしてあげてくださいね。

 毛を引っ張ったりとか無茶はダメですからね」って、エンシェントドラゴン様を御姉様方へと。


『いや、慶、止めよ。

 いやいや、撫でるでない、抱き着くでない。

 胸に埋めると息が苦しいではないかっ!

 これっ!そこは、ダメじゃっ!

 ノォォォォッ!』


尊い犠牲であった。


『やはり、こうなったか…』っと、フェンリルさんがね。

『いやいや、やはりって…

 以前に同じようなことが?』

思わず尋ねるとね。


『うむ、中央へは人型は居らぬのだが、師匠を巡って雌共が取り合いなどをな。

 それも種族問わずでだぞ。

 師匠は、あの庇護欲を搔き立てられる容姿に無頓着でな、色々とやらかしておるのだ』


いや、そんなことを知っているのに連れて来たんだね。

しかし話を聞いた限りでは、当然の帰結と言えるんじゃね、これ。


『そうは言ってもな、何処へ居ても同じだからな。

 あの姿では仕方あるまいが、意識せずとられる仕草が狙っているようにしか思えぬしな』

まぁ、それは同意かな。


『なれば、それを理由に同行拒否するのは意味がなかろう。

 仮にも師匠の願いだからな、無下に断れもせん』


フェンリルさんの立場では仕方ないかぁ…

まぁ…エンシェントドラゴン様の宿命ってヤツか、ねぇ。


揉みくちゃにされているエンシェントドラゴン様を見つつ遠い目を。

御免よぉぉっ、そこへ分け入る勇気は、俺には、ないっ!


ある意味、ご褒美とも言う人はいるだろう。

出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいるスタイルが良い美女達に囲まれ、揉みくちゃ状態。

そこの君、羨ましいとか言うんじやないよ。

エンシェントドラゴン様のつぶらな瞳が光をなくしてるねぇ。


…しばらくお待ちください…


『ううううっ、酷い目にあったわい』っと。

精霊美女軍団の皆さまは、満足したのか去って行ったよ。

物陰から指を銜えた美男精霊さんが見ているけど…スルーで。


流石に美女軍団で揉みくちゃにされたエンシェントドラゴン様へ、美男子精霊さんとは言え更にとは…流石に言えないよ。


『まぁ、歓迎されたと考えていただければ…』

『思えるかぁっ!

 まぁ…邪悪な存在では無いことは間違いあるまいて

 しかし、精霊へ依り代を与え暮らさせるとはのぅ…

 ここは、不思議な空間じゃて。

 何よりも真那が濃い。

 儂にとっても心地良い場所じゃ』


そんなことを言うからビックリしてね、思わず尋ねたよ。

『ここって、そんなに真那濃度が高いんですか?

 私は特殊なことをした覚えは無いんですけれど?』

したらね。

『この空間を創り出しただけでも十分特殊じゃわいっ!

 じゃが、確かに空間を創っただけでは、空間内の真那が濃くなることはあるまいて。

 これは精霊が集い、精霊が整えた環境が存在するためであろうの。

 ここで中央の動植物を育てるならば、更に真那が濃くなっていくであろうぞ』


まさか、そんなことになっているとはね。

びっくりです!

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