00028 : パーティですが、色々と大騒ぎってね。
本宅の引き渡しパーティへ、陛下と陛下妹君がシレッと参加して…大騒ぎになっていました。
外が、ね。
俺達の団地へも多くの家が建ち、住む人は増えている。
そんな方々は自営業の方もいるけど大半はサラリーマンなんだ。
まっ、一般的な庶民だよね。
そんな方々が住まう団地へと天帝陛下と妹君が起こしなされたとなれば、そら、騒ぎにもなるわさ。
そして騒ぎを聞き付けた雑誌記者達がさ、先を争って雪崩込もうとしたらしいんだ。
当然だけど、警官と憲兵隊へ拘束されてたけどね。
普通は宮廷へ許可申請してから承認されての取材だろうに…
許可なく陛下へ近付こうなどと恐れ多いことを画策すれば、そら捕まるわさ。
言い分としては真実かの事実確認のための取材だとか。
いやいや、然る筋に確認すれば知れることだし、それを怠って侵入を試みれば、ねぇ。
ってもさ、別に一般人が住まう区画へ立ち入ったから拘束された訳ではない。
小宮殿と俺達の家が在る区画は別区画扱いとなっており、その区画へ立ち入ろうとしたからなんだ。
新聞記者達は、流石に心得ていて正式な取材申し込みを行っているそうな。
まぁ、許可されて無いけどね。
けど雑誌記者達はスクープ合戦に勝つためと、結構な無茶をね。
それで拘束されてちゃ意味がないだろうに…
外で、そんな騒ぎが起こっているんだけどさ、ここは静かなものだよ。
っても、親戚連中は陛下と麗輝様に委縮して縮こまってるけどな。
例外は父方の祖父母と両親だけだね。
週一の参内に保護者として同行することが多いし、麗輝様は家へ頻繁に訪問して来るかんなぁ~
そら慣れるわさ。
そんな免疫が付いた俺達に、免疫なしの親戚達が驚愕顔で見てる。
普通は近寄ることもできない方々が側に居るという、非日常的な空間へ迷い込めば仕方ないだろう。
そんな親戚達とは別に、最近通っている幼稚園で仲が良い友達も招待してたんだけどね。
最初は楽しく料理を食べたり話してたりしてたんだよ。
けど陛下達の参加に気付いた友達の親が硬直して友達を押さえ付けてねぇ。
まぁね、子供が陛下へ無礼を働いたらっと思うと…気が気じゃないか。
そんな感じで微妙なパーティになってしまったんだけど、まぁ、それなりに楽しめたかな?
俺は後半、陛下と麗輝様に捕まってたけどね。
そんな本宅引き渡しパーティが終わり、翌日に幼稚園へと行ったんだけど…
非常に微妙な空気になっていましたよ。
なんだか先生方がビクビクしてんだけど…まぁ…陛下と親しく話をする5歳児の扱い。
そら、扱い辛いわな。
まぁ、俺は気にしないし、5歳児に身分など理解できないから関係ないね。
友達の態度は何時も通り。
ただ、昨日の料理が食べたいって、せがまれるのは困ったものです。
先生方が腫物を触るような態度なのが困りものだが、後数か月で卒園だしね。
今度は小学校へ通うことになる訳だ。
ってもね、習うことなど、何も無いんだけどさ。
陛下からは研究所で働くことを望まれてたりするが、それは麗輝様が止めてくれている。
「兄上、流石に5歳児を働かせるのは如何なものかと」ってね。
それで陛下が折れてくださり、取り敢えずは普通に園児していた訳だ。
っても、半分は働いているようなものだけどさ。
困りものなのは、升田の爺ちゃんなんだよ。
俺を狩人にしたいらしく、家の近くへ態々道場を建ててね、そこで俺を鍛えようって画策を。
升田の婆ちゃんも、俺と遊び感覚で一緒に鍛練するのが楽しみになっててさ、結構な頻度で鍛練に付き合わされています。
爺ちゃんや狩人さん達より婆ちゃんと鍛練する割合が高いんだけど、婆ちゃんは体へ負荷が掛からない鍛練を主体にしてくれている。
技や精神面での鍛練だね。
まぁ、5歳児の体で無茶したら碌なことにならないからさ、それを考えてだね。
ところが爺ちゃん達は肉体言語で語ろうと…
婆ちゃんに、しばかれて大人しくなったけど…何を考えているのやら。
こんな感じで1歳から幼稚園児卒園間近まで過ごして来たんだけど…世の中は黙って成長させてくれないみたいでね。
『結構、近くまで来てるわ』
「いや、ほんと、勘弁して欲しいんだけど…
結局、この近辺まで来るの?」
『他の精霊達と連携して監視しているけど、そろそろ慶の感知範囲内に入るわ。
フェンリルの若い個体みたいね。
何かを探して、こちらへ向かっているようなのだけど…』
現在、緊急事態発生中です。
大陸中央部より神獣と扱われるフェンリルさんが、暮町を目指して驀進中とのこと。
原因不明、俺の感知範囲外だが、親しい精霊達が精霊ネットワークにて情報を得て俺へと。
「そのフェンリルは、話ができる個体なの?」っと尋ねると。
『知能は高そうね。
念話も可能だと思うわ。
けど、流石に精霊と意思の疎通は行えないみたい。
ある程度の経験を積んだフェンリルなら精霊とも意思の疎通が可能なんだけどねぇ』
そう風精霊さんがね。
最近は俺の近くへ頻繁に現れてくれる風精霊さんなんだけど、間違っても名付けてはならない。
呪で縛ることとなるため、自由を貴ぶ風精霊を縛ることになるからだ。
行って良いのは、風精霊側から名付けを求められた時だけさ。
そんな彼女は、俺が検知できない場所の情報を教えてくれる、ありがたい存在だ。
今回もフェンリル来襲の報を伝えてくれてるからね。
しかしフェンリルかぁ…どないしょっ!




