00026 : お袋さんよ、私は帰って来たっ!
暮の海軍基地へ転移し、そこからリムジンで送って貰い家へとね。
リムジンの中ではズッっと話し続けてたからさ、喉が厳しいことに。
まぁ、一応はお茶を頂きながらではあったのだけど、アカシックレコードを駆使しつつ話題をチョイスしてたからさ、話題が尽きることは無かったよ。
家の前で爺ちゃんと婆ちゃんと別れ、俺は家へと。
むろん麗輝様とも、ここでお別れだ。
リムジンは爺ちゃん達を送ってから海軍基地へと戻るそうな。
それを聞いて麗輝様が喜んでたよ。
リムジンでも決まったルートでしか移動ができないのが常なんだってさ。
だから、全く知らない場所へ行けることが楽しいらしいんだ。
喜々として別れたから、今日はお役御免ってことだね。
ふぅ、疲れたよ、パトラッシュ。
家の前では連絡を受け、俺を出迎えに家から出ていたお袋さんの姿がね。
一応、両親には前世の記憶があることは内緒っと言うことになっている。
成長が早い子供ってね。
実際は、見えない英雄と言われる存在でもあるんだけれど…
しぃぃぃっ、それは、秘密だよ。
「慶、楽しかった?」ってお袋さんがね。
「うん、あのねぇ、帝都で宮殿へ行ったんだよ」っと告げると、お袋さんがね。
「帝都観光の定番ね。
一般開放されている宮殿施設を巡るのは、陽元国民の憧れですもの。
宮殿観光に連れて行って貰えたなんて、良いわねぇ、慶は」
実に羨ましそうに。
こ、これは…宮殿へ泊ったことは秘匿した方が良いの、かな?
でもなぁ~遅かれ早かれ、結局はバレそうなんだよ。
なら、早めに告げた方が無難かな?
でもね、ここではダメだ。
近所の人達が集まって来てるからねぇ。
宮殿で過ごし、天帝様と謁見し歓談したなどとバレれば大騒ぎになるだろう。
まぁ、信じないだろうけどさ。
「お母さん、僕、疲れちゃったぁ。
お家へ入ろうよ」
そう、お袋さんを促す。
「そうね、送って貰ったと言っても疲れるわよねぇ。
家へ入りましょうか」
そう告げたお袋さんは、近所の方々へ会釈した後に自宅へと。
家へは大家さん宅とは別の玄関から入る形であり、建物の外へ2階まで階段が付いている。
その階段を上って玄関まで移動するんだ。
ここは1階が大家さんで2階が俺達一家が借りている部屋なんだ。
大家さんと俺達一家以外に住人はいないから、ある意味気兼ねがないね。
それに大家さんも母方の親戚筋だから、親しい間柄だからさ。
親代わりみたいに親身になってくれるから、大家さんの奥さんとお袋さんは非常に仲が良いんだよね。
そんな大家さんへ自宅へ向かう途中でお土産をね。
いやね、天帝様より麗輝様へ託されたお土産がさ。
その内の1つを大家さんへ渡したんだよ。
まぁ、詐欺1歳児の俺の体格は4歳児未満だからさ、流石に持てないんでお袋さんが受け取ってたんだ。
そしてお袋さん経由にて大家さんへね。
中は帝都で帝族ご用達の銘菓である洋菓子らしい。
暮にも洋菓子店は在るんだけれど、やはり田舎だからか野暮ったいんだよね。
それに比べて、流石は帝都の名店だけあり洗練された形の洋菓子で味も非常によろしい。
田舎だとクドイ甘さの菓子が多いのだが、甘過ぎず、クド過ぎず、されど満足できる甘味が口内を巡る。
そんな一品である。
包装では中身は分からないので、大家さんの奥さんは、単純に喜んで受け取ってくれたよ。
まぁ、良かったっと言うところか。
赤子を含む両親合わせて3人家族なのに、土産は5袋。
1袋は爺ちゃん達に持って帰って貰ったんだけど、大家さんへ渡しても後3袋あるんだよなぁ~
こがぁに、どがぁせいと?
お袋さんが土産の3袋を苦労しながら持って階段を上がる。
1袋がデカ過ぎんだよっ!
袋の中の紙箱を開けるのが怖いぜっ!
階段を上がり切り玄関を開けて家の中へと。
ようやく家へ辿り着きました、疲れたよ、ほんと。
んっ?パトラッシュは、どうした?なんのこと?
俺はまだ、身罷るつもりはござーせん。
「ようやく着いたぁ~」って、思わずね。
「ふふふっ、お帰り、慶。
お疲れ様」
笑ってお袋さんが労ってくれるよ。
「お母さん、聞いてよ。
帝都に着いたらさぁ、いきなり宮殿へ連れて行かれたんだよ」
「それは、さっき聞いたわ。
宮殿観光したんでしょ、良かったわねぇ」っと微笑むが…
「違うんだよ、宮殿の中へ入ったのっ!
天帝様と謁見して来たんだよっ!
そして宮殿へ泊ったんだよ。
もう、いきなり、訳分かんなかったよっ!」
お袋さんが目を剥いて固まる。
まぁ、自分の息子が天帝様に謁見したと聞いたら、ねぇ。
「それって…ほんとう、なの?」
まぁ、信じられなくても仕方がないよね。
一般庶民が天帝様と理由も無しに謁見って…普通は有り得ないもの。
「本当だよ。
そしてね、週に1度は宮殿へ参内するように下知を承っているんだ。
だからさ、来週も帝都へ行くことになるよ。
それとね、さっき乗って帰って来たリムジンには天帝様の妹様である麗輝様が乗ってられたんだ。
爺ちゃん達を送ってから帝都へ帰るんだって。
宮殿から余り出られないし、知らない所へ行けないのに、爺ちゃん達が住まう山奥へ行けるって喜んでたよ。
まぁ、リムジンからは降りれないみたいだけどさ」
情報が多過ぎ、混乱状態のお袋さん。
仕方ないから色々と説明していたら親父が帰って来てねぇ。
親父へも説明する羽目にさ…更に疲れましたよ。
さて、これからどうなるのやら、ふぅ。




