00022 : リムジンで帰ります、いえ、お出掛けですよ。
宮殿の玄関ホールまでメイドさんがエスコートしてくれ、扉を執事さんが開けてくれたよ。
人力自動ドアかな?
ドアが開くとリムジンのドアが開いており、扉を潜ると直ぐにリムジンへ乗り込めるようになっていたよ。
簡易版どこでも扉かな?
俺がリムジンへ乗ると、爺さん達も乗り込む。
しかし…車内っかさぁ、完全に室内だよね、これ。
「伊井幕僚長様は何時も、このような豪華な車で移動しているんですねぇ。
凄いなぁ~」って言ったらさ。
「とんでもないわい。
儂程度が日々使えるはずがなかろうが」ってね。
どゆこと?
不思議そうに見るとね、溜息を吐いてからさ。
「この車は宮殿付きの車じゃて。
本来は帝族方々が用いられる車でのぅ、儂らが使えるような車ではないのじゃよ」っと、爆弾発言を。
「いや、だったら…なんで僕らは、この車で送迎されているんです?
有り得ないじゃないですかっ!」
どゆことかいな?
「それはのぅ天帝様の下知によるものじゃて。
理由は申されなんだが、慶を丁寧に持て成すようにと賜っておってな、送迎にこの車を差し向けなされた訳じゃて。
まぁ…昨日の謁見にて理由は判明したがのぅ…」
ああ、転生者を迎えるにあたって、ね。
いきなりバレるとは思わなかったからビックリしたよ、ほんと。
「僕も知られているとは思わなくて驚きましたよ。
しかし…神様って、本当に実在するんですねぇ…
架空の存在とばかり思ってましたよ」
ハハハっと、思わずカラ笑いが出てしまっぞっと。
「おお、そうであったな。
慶君、いや、慶さんの前世年齢は、かなりの年であったのだとか。
そういう意味では、子ども扱いは不味いであろうの」って。
いやいや、明らかに赤子の俺を、さん付で呼ぶってさぁ、有り得んだろっ!
「止めてくださいよ。
この世界で生まれたからには、この世界の人間ですからね。
前世は関係ありませんから。
それに幼児に、さん付けしているのを人が見て、どう思うと思います?」
酷い絵面だと思うんだが?
「ふむ…確かに見れたものでは無さそうではあるな。
まぁ、今まで通りが良かろうか?」
「そうしてくださいね」
そんな遣り取りをしていると、ようやく宮殿敷地を抜けたよ。
どんだけ広いんやねんなっ!
宮殿敷地を出たリムジンが一般道を走る訳なんだが…外で待っていた白バイが前後左右へ展開してエスコート兼警護をね。
うむ、超VIP待遇やね、苦しゅうないぞってね。
そして市街地を走って住宅街へと。
一般庶民の皆様方が何事かと驚いて見ているね。
スマホどころかカメラも普及しているとは言えないからさ、令和みたいに勝手に撮影されることはない。
むろん、SNSどころかネットなど存在しないからさ、情報拡散など有り得ないよ。
この点は令和時代と違って安心できるね。
便利過ぎるのも、ある意味では不幸とも言えるのかもしれないなぁ~
白バイがガードし、少し後から黒塗りの覆面パトカーが数台追尾しているみたいだね。
そんな一行へ群がる野次馬は流石に存在しない…いや、巡回中の警官に職務質問されている者か数人…阿呆なのか?
でぇ、軍官舎へ隣接する住宅街へと。
この団地は軍関係者が住まう場所であり、一般人が立ち入ることはない。
まぁ、規制している訳では無いので立ち入ることはできるが、憲兵が巡回しているので不審人物として職務質問されることになるだろうけどね。
そして住宅街でも高級住宅が立ち並ぶ一角へと。
その内の一軒の前へとリムジンが進み、玄関前で停まった訳だけど…
「着いたぞぃ。
ここが儂宅じゃて。
さぁ降りた、降りた」って、急かさんでくださいやぁっ!
伊井幕僚長殿に促されてリムジンから降りる。
リムジンはここから走り去ったが、近くの駐車場にて待機するのだとか。
幕僚長殿宅の周りでは警護の者達が辺りを警戒している。
俺達が出てきたら無線で待機しているリムジン運転手の兵へ連絡するんだとさ。
俺達がリムジンから降りると、伊井幕僚長殿の案内で幕僚長宅の入り口の門前へと。
カギは掛かっていない門を開けて玄関前アプローチの飛び石を踏みつつ歩む。
宮殿ほどでは無いが、結構な距離があるぞ、これ。
十分に豪邸だと言えるだろう。
まぁ…宮殿と比較するのが可笑しいかな。
玄関へ着き扉を開けて中へ。
いや、カギを掛けてないのかよっ、不用心…って、憲兵が目を光らせてるんだから不審者が近付きようがないか…
ある意味、最強のセキュリティやね。
中へ入ると幕僚長殿が声を上げる。
「帰ったぞっ!」ってね。
「あら貴方、お帰りなさい。
今日は早かったのですわね」っと、上品な感じの老夫人が出て来られたよ。
伊井幕僚長殿の奥方かな?
そんな老夫人の後から老夫人を若くしたような女性も現れた。
娘さんかな?
そして、その女性を更に若くしたような幼女がね。
う~ん…なんてクローン。
似過ぎでしょっ!
そんな幼女は女性の陰に隠れて半分だけ顔を出しつつ隠れてるよ。
人見知りなのかな?
「うむ、今日は陛下へ招かれておった慶君と慶君のご祖父母を宮殿へ迎えに行ったでな。
帰りに家へ寄って貰ったのじゃよ」っと。
したらさ。
「それって、本当?」っと、幼女な美樹ちゃんがね。
「うむ、そうじゃぞ」
そう幕僚長殿がつげると、パァァッと良い笑顔で「わーい」って。
何、この子…和むわぁ~




