00019 : 天帝様へ謁見してしまいましたよっ!
筆頭執事さんに案内されて宮殿内へと。
何故か伊井幕僚長殿よりも俺を優遇しているような…はは、気のせい、だよね?
宮殿内を歩いていると、話が通って無かったと思われる方々が驚いて俺を見ている。
そら3歳児が筆頭執事にエスコートされつつ宮殿内を歩いてれば、ねぇ。
天帝様は政務をされておられない。
おられないのだが、拒否権と決定権および検閲権をお持ちだ。
面倒毎は全て下々が行い、複数の部署が相互監視つしし政務を行い陽元国を回しているそうな。
では、何をされておられるのか。
様々な情報を得て陽元をどのような国へするのかを考えられておられる、そう聞いてるよ。
いや、さぁ…一般庶民には詳しい話しなど降りて来ないからね。
ただ暇されておられる訳では無い…んじゃ、ないかな?
俺などと会う時間はあるのだろうか?
そんなん思いながら歩いてんだけど…土足で歩いてるこの廊下…毛足の長いフカフカの絨毯が敷かれてんだよね。
フカフカ過ぎて足が埋まるんですが、ちと、歩き難い。
「こちらで、お待ちされておられまする」っと執事長さんがね。
彫刻が施された1枚板の扉が2つ。
観音開きってヤツ、かな?
扉の両脇へ控える執事さん達が畏まりつつ扉を手前へ引き開けてくれる。
謁見の間?なんて思ってたんだけど…室内へは兵隊さんが控えていた。
っかさ、扉の向こうへ更に両開きの扉がさ、どゆこと?
室内へ入ると身体検査を受けたよ。
本来は宮殿の敷地へ入る時、宮殿内部へ入る前に身体検査と検閲を受けるのだとか。
だけと今回は天帝様直々の招きにて省かれたそうな。
えっ、それって…良いの?
本当はダメでしたぁぁっ。
どうも天帝様の勅命にて特別に省かれたそうなのだが、流石に玉体有らせられる場へ無検閲にて立ち入らせるはなりませぬと。
天帝様も折れてね「相手は幼い、無理に召喚したゆえ丁寧に扱うように」だって。
良い方なのかな?
2人の兵隊さんが視線を合わせ頷く、そしてね。
「どうぞ、お通りください」って、扉を開いてくれたよ。
「ありがとうございます」ってお礼を告げて部屋へ。
兵隊さんが驚いてたけど、なんだろね?
中は謁見の間では無く応接間のような部屋で、ソファーセットが置かれているね。
壁際にメイドさん達が控えているのが、普通の応接間とは趣が違うんだけどさ。
ソファーへ座って書類へ視線を落としている男性へ、近くへ控えていた執事さんが耳打ちを。
すると男性は顔を上げて書類を執事へと手渡すと立ち上がる。
「良く来た。
朕は陽元天帝輝皇である。
そちが話に聞く慶であるか?」っと。
この方が天帝様…若くね?
20代だと思われる青年紳士、口髭を蓄えて細マッチョだがスラリとスマートさんです。
品の良いスーツを隙無く着こなし、スッっと立ち上がった身姿は上品と言えるであろう。
高貴さが滲み出ているような所作である。
尋ねられた俺は緊張しつつ応えを。
「卑賎の身なれど召喚に応じ罷り越しました。
私がご召喚いただいた升田 慶でございまする」
そう告げて、恭しく一礼をば。
安芸領の領事館にて高官達が他国の外交官達へ挨拶していたのを真似たのだけど…良かったかな?
「ふむぅ、そなたは1歳児と聞き及んでおったのだが、3歳児、いや4歳児と告げられても頷ける体格。
しかも、その堂に入った所作は幼子が行えるとは思えぬ所作。
そなた…転生者か?」っと。
へっ?なんて仰られた?
「陛下、転生者とは、なんでしょうか?
仏教六道輪廻で語られる転生と関係いたしましょうや?」っと尋ねてみる。
「ふむ、素直に認めぬか…
いや済まぬ、朕も確信があって告げておるのでは無いのでな」
なんじゃ、それ。
「実はな、夢見なのだ」っと。
夢見?なんだ?
「帝族では夢でお告げを賜ることがあると言う。
眉唾だと朕も笑っておったのであるが…」
「お告げを夢でお賜りになられたと?」
天帝様が頷かられる。
え~っとぉ、意味が分かりません、どゆこと?
「その夢ではな、この世と異なる世より魂が移りて赤子の身へと移ったと。
その者のが居た世界は、この世よりも優れた技術で溢れておったそうな。
しかも、その者、老齢にて経験を積みし魂とか。
宿りし魂は、その世の知識を失わず持つとのことだった。
異なる世から現れし魂は安芸領の暮へと降り立ち、無事に生まれ育っており、その身姿は年齢と掛け離れ育っておる…
該当する者など居らぬと思っておったが…目の前に居るわっ!」
いや…具体過ぎね?
まさか、さぁ…ファンタジー定番の神とか悪魔が実在したり…嘘だよねっ!
輝皇陛下がジィィィッと俺の顔を見ている。
アレ、これって…詰んでね?
ここで嘘を吐いて、万が一後で発覚したら無事では済まないよね、これ。
観念するしかないか…この世界に実在するのか知らん神だが、輝皇陛下へ神託を下ろしたのだとしたら禄でもない輩なのだろう、うん、今俺が決めた。
仕方ないな。
「そうですね、確かに私には前世の記憶が残っております。
ですが前世の私は一般庶民であり、技術も優れた物は持っておりませぬ。
ですので、この世で劇的な技術革新などを行うことなど出来ませぬ故、そこはご容赦を」
そう告げ頭を下げる。
陛下は驚きつつ納得。
俺の後ろへ控えていた爺ちゃん達が驚愕している。
まぁ…そだよねぇ~




