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00001 : ここって…どこですか?

ふと、目が覚めた。

覚めたは良いが…辺りが霞んで良く見えない。

音も聞こえるが、鈍く響くような不明瞭な音…


手足の感覚はあるのだが、首もまともに動かせない始末。

いったい…何が起こっている?


混濁した意識がハッキリとしてきた俺は、状況が把握できずに困惑。

確か…昨日は…!!

課長のパワハラに激怒した後から記憶がない。


何か頭でブッと、胸に激痛…アレ?これって…ヤバくね?


仕事は夜勤ありの12時間勤務。

3連夜勤、休、1日勤、休、3連夜勤の最終日だったか…

日勤者がやらかした後始末を残業しつつ行った後で連帯責任と、なじられたんだったよな。


定年間近の独身爺さんの俺。

両親も既に他界しており天涯孤独の身だったとしてもだ。

頼れる者もない俺の世話をしてくれる者などない訳で…今、どういう状態だ、これ?


恐らくは会社で倒れて病院なのだろうが、辺りが窺えず状況が把握できないのはいただけない。

誰かを呼ぼうと声を出そうとするが、声も…いや、言葉が発せられない。

これ…相当ヤバい状況か!?


俺は辺りを窺えないかと焦って見えない目を凝らすが、やはり見えない。

何とかならんのかぁっ!っと、脳内で怒鳴ったところ…不意に辺りが見渡せた。


見渡せた?

いや、見たっと言うか…脳内へ周囲の映像がダイレクトに!

ファッ!


どういう状況だぁっ、これってばよぉっ!

映像には色もだが音も匂いも…いや触感さえも感じられる。

把握できない事態が増えたんですが…どゆこと?


しかもだっ!ここ…病院、(ちゃ)うやん。

見知らぬ民家の中、木造家屋のワンルーム…だな。

部屋へ隣接する台所が見え、そこで炊事を行っているらしき女性の姿が。


はぁっ?どういう状況だぁ、これ?

部屋からはガラス窓から外が窺える。

千切れ雲が青空に漂う晴天、良い天気だなぁ~


そう思い空を見ていると…視点が切り替わったぞ。

外から木造2階建ての建物を見ている。


うん、外からの視点やね。


って、訳分からんわっ!

慌てて近場を窺うように考えるとさ、瞬時に視点が元へと。

その視点で再度部屋を確認するとな、赤子がベビーベッドに寝ているのが。


その赤子と炊事をしている女性以外に人影は無し。

って…もしかして…これってラノベで使い尽くされた転生物と同じ現象…

はは、ま、まさかね。


だが、女性以外に部屋へ居るのは赤子のみ。

確認…するか…


瞼を閉じ開きしてみると、赤子の瞼が連動している。

指は多少動くので動かすと…動くな。

いや、マジ、です…か…


はは、パワハラ死亡ですか、さいですか…それで、転生ね…んっな、アホなぁ~


そんなことを思っているとな、炊事を終えた女性がこちらへと。

なんでしょう?


したらな、「(けい)ちゃん、ごはんでちゅよぉ」って…

いや、ご、ご飯って…はい、そうですね。

女性が服を(はだ)けて…こ、この年で…なんてぇ羞恥プレイ!


誰だぁっ!ご褒美ってぇ言ったヤツぁっ!

だが…母乳は乳幼児には必要な栄養素だけでなく抗体を摂取する手段でもある。

得なければ、後々己の首を絞める羽目になるであろう。


そう考えると、ここは飲まねば…!?えっ?美味いんですが…

必死に飲んで、片方が終われば、もう片方をば。


「あらあら、食いしん坊だわ、この子」

なんか、呆れられているが…構ってられっかぁっ!


独り身で食うことしか楽しみがなかった俺。

そんな俺は、休みとなれば美味いと評判の店へ出向いて色々と食したものだ。

その俺を夢中にさせるほどの旨味を…母乳、侮り難し!


まぁ、そんな食事と下の世話を、なされるままで…羞恥プレイ?慣れたよ、そんなもの。

気にしていたら生きて行けんわさ。


生前の記憶を取り戻し辺りの状況を脳裏にて知覚できるようになって3か月ほど。

首がすわり、寝返りが行えるようになって暫しってな。


母乳を我武者羅に、せがんだのが良かったのか…一般的な乳幼児よりは発育が良いんだってさ。

病院の先生が成長の早さを驚くほどには早いみたいだぞ。


でな脳内知覚の精度は以前よりも増していてな、俺が置かれた状況…転生環境が把握できてきたよ。

まず、お約束の魔法は存在するようだ。


お袋さんが使ってるのを見たかんな、うん。


ただなぁ、単なる日常使い能力的な扱いなんだわ。

庭で枯れ葉を風を使って集め、火を放って焚火をさ。

年嵩の女性と駄弁りながら…濡れ新聞紙に包んだサツマイモを熾火へと。


2人して美味そうに食ってたよ、くそっ!

年嵩の女性は大家さんの奥さんなんだ。

俺の家は貸し部屋でな、2階を借りてんだが、1階は大家さん夫婦が住んでんだよ。


親父の給料日に家賃を払いに行ってたのを見て知ったよ。

給料なんだがな、手渡し支給みたいだよ。

給料袋をお袋へ渡しているのを見て知ったんだが…ホント、何時の時代だよっ!


まぁ昭和中期ころかな?って、思っていたりする。

流し台に水道蛇口があり、コンロも存在しているかんな。


まぁ、冷蔵庫や電子レンジやオーブン、炊飯器は無いようだ。

灯りは蛍光灯ではなくて白熱電球だな、LEDなんぞ、とんでもない。

むろんエアコンなんぞ存在しないし扇風機も普及してないみたいだ。


だが自動車やバイク、自転車が道を走ってるぞ。

数は多くは無く、自家用車の普及はまだまだのようだな。


親父はバスで通勤しているみたいで、決まった時間に帰って来ては家で食事をしている。

赤子で睡眠時間が多い俺が、3か月で集めたにしては十分な情報量…だよな?

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