あの夏の記憶
ホラー苦手ですが、書いてみました。お盆終わる前で良かった。
私は高校時代、電車で通学していました。
東北の山奥の生まれでしたので、通学は毎日発生するイベントみたいなものでした。
フラグ管理をきっちりしないと大惨事になってしまいます。
寝坊とか乗り過ごし等は悪いイベントですね。一番発生して欲しく無いのは大雪からの運休でしょうか。駅から動けないですから。
ちなみに自宅から車で15分かけて最寄りの駅です。家族に送ってもらいます。其処からたった二駅。当時230円の区間、電車に揺られます。
まあ、20分弱でしょうか。
都会の電車は、一駅の区間が短くて驚いたものです。
そうやって高校のある駅で降り、徒歩で20分強頑張って到着です。
ちなみに、私は普通高校に通っていましたが、すぐ近くに工業高校と農業高校、さらには私立の普通高校があるという高等学校密集地帯でした。
どうして全てを駅から遠くした。いやマジで。
ちなみに、そんな環境ですので通学風景も若干風変わりでした。
中学時代の同級生なんかが一緒に登校する場合もありますので、様々なカラーリングの集団が出来上がります。
ちなみに、先程述べました各校の制服の色は、紺、黒、茶、緑です。
戦隊ものにすらなりゃしねえ。欠かす事の出来ない赤、青、黄色が行方不明です。捜索願いの地域放送を流して下さい。
突き抜けているような、地味なような色の組み合わせです。
いや、茶色のブレザーはかなりインパクトがありましたが。
ちなみに、在学中にブレザーに変わってしまった先輩は「茶色に決定とか、最早ホラーだったよ」と語っていました。それまでは全ての高校で学ランを正装に据えていましたからね。
お、ホラーと言う単語を使えました。これでノルマ⋯⋯解っていますよ。駅が絡んでいませんね。
こほん、失礼しました。
怪談と言う程ではありませんが、こんなふた昔ばかり前の田舎で起きた、ちょっとだけ不思議な話をさせて頂きます。
「午後からどうする?」
「図書室も閉鎖でしょ、確か。部活も出来ないから、普通に帰るよ」
「えー、駅からどうするの?」
「待ち時間はあるけど、バスがあるよ」
「そっか。それなら遅くとも夕方までには帰れるのか」
「うん。折角の半日だしね」
真夏の真昼。
太陽が自らの存在の偉大さ、暴力性などを主張する時間帯だ。
クラスメイトと教室を掃除しながら、放課後の予定を確認する。
将来的には変わるらしいが、少なくとも現状、土曜日は月の半分しか休みでは無く、午前中だけ授業、という形だ。週休二日制とか言ってるが、ウチの高校は大体模試という定期イベントが発生する。
休みを返せ。
いや、農業高校だと実習と呼ばれる労働が発生するらしいけど。動物にしろ植物にしろ、生き物の世話は大変みたいだ。
「でも珍しいね?素直に帰宅するなんて」
「部活行けないから。何か会議だか説明会だかがあるみたいだからね。図書室使わないで欲しいよ」
「普段は入り浸ってるもんね、図書館準備室」
図書室と言う名称なのに、図書館準備室とは此れ如何に。
校舎から渡り廊下を使わないと行けない、独立した造りだし図書館で良い気がする。
「勉強しても読書しても良いし、部員達で駄弁るのも好きだし、部活の仕事しても良いしね」
「優先順位がおかしいぞ図書部員」
「一応、出席した時は必ず仕事はしてるよ?内容も量もランダムだけど」
「そもそも、市から司書さん派遣されてるのに図書部は必要なの?」
「必須では無いかな。でもウチの学校って、歴史だけはあるからね。蔵書数が半端無いんだよね。後、単純に生徒数」
「あー、1000人軽く越えてるもんね。うん、何かストンと腑に落ちたわ」
「でしょ?まあ、役得も多いしね」
「言ってたね。新刊入荷に口出ししたり、普段仕舞いっぱなしの蔵書読めるとか」
「そそ。こないだは市が合併する前の町史読んだわ」
「渋っ!」
「面白かったよ?昔の駅は、現在とは少しズレてるんだって。ホームは別にしても、建物が」
「何で?」
「増改築と、老朽化による取り壊しの結果かなあ」
「つまらない理由だけにリアルだわ⋯⋯」
「現実だからね」
「新幹線が発着するようになったのも原因かな」
「その所為で、駅そのものが大きくなったもんね」
「アンタのトコは?」
「少し立派になったよ。立て直したから。でも、無人」
「立派な無人駅」
「立派な無人駅」
質問とツッコミで会話を弾ませていた友人が、秒で表情を消して呟いた言葉を繰り返してやる。
「田舎あるある、かもね」
「そだねー。っと、これで終わり。後はゴミ投げ(方言)に行った人が戻って来たら先生に報告かな」
「なら、先帰りなよ。貧乏くじはこっちで回収しとくからさ」
「良いの?」
「こうやって恩を売るのだよ。それが徳と利を得る秘訣なのだよ、明智君」
「出来ればワトソン君と言って欲しかったかな」
「BBCのシャーロック観てから、彼はワトソン君じゃなく、ジョンなのさ」
「うん、把握した。それは仕方が無い」
「まあ、タネ明かしをすると、先生に呼ばれてるからなんだよね。どうせ行かなきゃならないんだから、掃除の報告を一緒にすれば良いだけなんだよ」
「じゃ、お先にー」
「遠慮も感謝も無くなったよね!」
友人の声を背に真夏の真昼の真ん中に飛び出す。「真」という文字が三つだ。絶対に熱い。これぞ青春だ。
暑かった。
即座に後悔し、なるべく日陰を選んで歩く。矢張り、勢いだけでは良く無いのだ。
東北だって夏は暑い。
そうやって身体を労わりながら歩みを進め、駅に到着した。が、だ。
向かって右から左へと、ゆっくり電車が走って行ってしまった。
下り列車だ。
自分が乗る予定だったものである。
徐々にスピードを上げる列車を見送りながらため息を一つ。
地元の電車状況だが、単線なので上りと下りしか無い。普通列車と新幹線のみ。まあ、花火大会の日は特別列車も走るが。
そして、朝のラッシュ時以外は大体1時間に一本のみ。
「これだから田舎は⋯⋯」
「お?行っちゃった?」
思わずぼやくと、後ろから馴染みのある声が聞こえた。
振り向くと茶色の制服を身に着けた小、中学時代の同級生が居た。
中学、2クラスしか無かったから、大体同級生だったし、そもそも全校生徒を知っていたんだけどね。誰も名字では呼ばない学校だったなあ。地域毎に同じ名字が纏まっている傾向があったから、名前じゃ無いと誰なのか解らなかったんだよね。
いきなり高校でスケールが変わってしまったから大変だった。
「うん、間に合わなかったよ。13時台が行っちゃったから、14時台まで無いよ」
「後50分はあるのかー。何処か涼しいトコ行かない?」
「そだねー。裏の食堂行こうか。お昼まだだよね?」
「そうするか。あそこの煮付け食べたいし」
「渋っ!」
そんな小さなコミュニティで長年友人をやっていたのだ。道路でばったり会って、挨拶より先に目的を決めてしまう。
二人で狭く古い路地に入り、駅の横を通っていると、これまた古い駅倉庫の前に花やら酒やらが置かれているのが目に入る。
「ん?こんなのあったっけ?」
「あー、それね⋯⋯」
疑問の声を上げる友人に説明しようか、少しだけ悩むが、結局話す事にする。
「こないだ死体が見つかったんだって。以前、壁の一部が塗り直された時に、一緒に、じゃないかって」
「それって事件じゃん!死体遺棄?に、なるの?」
「いやー、殺人みたい」
「ひゃぇあっ!」
小さく珍妙な悲鳴を上げる友人。気持ちは解る。
この倉庫、人があまり来ないから不良達の溜まり場になっているんだよね。
まあ、精々が喫煙くらいなんだけど。
で、先日まで農業高校の学生が何人か怪我したりしちゃって、色々あって、死体発見、みたいな。
色々の内容は正直良く解らないんだけどね!
「こないだ、そーゆーのに強いお坊さんが色々してったみたいだから、大丈夫なんじゃないかな?」
やっぱり、色々の中身は知らないよ!
「もしかして、ウチの学生が怪我したりしてたの、って⋯⋯」
「確証は無いけど、噂はあるよ」
「うわぃやぁ」
またも奇声を発する友人。まあ、本当に気持ちは解る。
ちなみに、友人は怪談が苦手である。
仕方がないから、宥めてやろうと思った時だった。
『全身、茶イロの服ヲ着た奴⋯⋯。ワタしヲ、殺シた奴⋯⋯。憎イ』
何やら、聞こえた。
いや、そんな馬鹿な。真昼間だぞ?いや、違う。そうじゃない。
幽霊なんて存在しないだろうに。
存在したところで、先日供養された筈だろうに。
『⋯⋯はッ』
⋯⋯鼻で笑われた。
「早く、早く食堂行こう」
「そ、そだねー」
怯えてしまった友人に負けず劣らず恐怖を抱いた自分は、歩調を早め通り過ぎて行く。
そして、つい振り向いてしまう。
『わたシは、許さなイ。ワたシを殺しタ茶いロの服を着た奴』
美しい女性だった。
ただ、肌には色が無かった。
そして、胸は真っ赤に染まっていた。
思わず、今が夏である事に感謝した。
それ以来、私と友人は其処に近づく事はありませんでした。
行きつけの食堂も、店主が急死してしまった事もあります。
店主は。
茶色の甚平を好んでいた記憶があります。
想像の余地が残るタイプのホラー好きです。
色々考えられる、って怖いですよね。
ちなみに、本当に怖かったのは、13時台の次の列車が16時台だった事です⋯⋯!
午前で授業終わった意味⋯⋯!