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明けない夜はない

作者: ずんだ


「死ぬのは怖い。死にたくない。そんな勇気は持てない。」


死にたくなった時、いつも私の頭をグルグルする言葉だ。


そんなに大したものではない。

いつもくだらない理由から始まり、不安がどんどんと大きくなっていく。

今日も例外ではなかった。


ベッドに入ったのは深夜一時のことだった。

お気に入りの入浴剤を使って心地よくお風呂につかり、

どうにか快眠を得ようとしたがそうは問屋が卸さない。


今日の議題は「将来」だったらしい。

勝手に頭の中で不安が広がる時間が延々と続く。


私は都内でOLとして日々を過ごしているが、

この日常の先には満足以上に不安がある。


時間は誰にだって平等であり、

悩もうが、嘆こうが、受け入れようが刻々と経過していく。


「今のままでいいのか」「変えるためにはどうすればいいのか」

「このままでは何も得られないまま歳だけとってしまう」


私の変に野心家な性格が災いしているのだろう。

凡人が凡々たる日常を送っているだけなのだから、現状の生活は分相応といえる。

だがそれでは嫌だ。


よく、「うまれた意味をみつける」ことが人生などと言うが、冗談ではない。

生まれた意味は「見つける」のではなく「つくる」のではないか。

どこかに落ちていると思っているなら大間違いだ。


意地汚く、自分である事に拘り、自分にしかできないことだと決めつけて頑張る。

アイデンティティを持たぬ凡人にはその道しかない。


ただ欠かせない大事なことがある。

それはこの資本主義社会において金で買えない数少ないものである。

それが人間関係における信頼というものだ。


そこで詰まる。

不安が突然、爆発的に膨れ上がる。


「○○さんはすごいね!」

私の口癖がふと頭をよぎる。


この言葉を口にするとき、いつも自分の中の誰かが訂正する。

「○○さんがすごいのではなく、お前が平均より劣っているのに過ぎないだけだ。」と。


努力は欠かさなかったつもりだ。

業務も。雰囲気作りも。凡人として考えられ得る生存戦略は何でもやった。

でも、だめだった。


人の信頼は成果についてくる。

どれだけ優しい人間でも無能であればマスコットにすらなれない。

逆に、厳しく、人に嫌われるようなことを平気でする人間でも成果が出せるのなら歓迎される。


嫌い。嫌いだ。

それでいいとされるこの世の中が嫌いだ。


一番になれなくても幸せになりたい。

そんなに悪い事だろうか?



――と、こんな具合である。




朝。

深夜三時ごろまでは記憶があるのだが、それ以降はめっきりである。


どうしようもない眠気を従えながら無事夜を乗り越えられたことに安堵する。

胃が気持ち悪い。

自発的にする夜更かしとは違い、損をした気分になる。


いよいよ本当に死ぬ方法を探し出したら精神科に罹ろうと思う。

死にたくないから。


身支度も早々に私は家を後にした。


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