私の本気
考えます、ひたすら。
どうしたら、奇妙様に嫁ぐことができるでしょうか?
大名家の姫とはいえ、私はまだ子供。
主導権はありません。
いつ嫁ぐかは、私が決められることではないのです。
「松、どうしたの?朝からずっと難しそうな顔をして?」
「母上は父上とでも遊んでください。」
「そうね。じゃあ、着替えなさいよ。」
着替えると、饅頭を食べました。
辛党なのですが、普段と違った行動をすると、ふと何かを思いつくことがあるのです。
でも、いつまでたっても、良策は思い浮かびませんでした。
結局、眠ってしまいました。
とはいえ、睡眠は大事です。
「姫様は、どうなされたのじゃ?」
侍女の方々の声が聞こえてきます。
「きっと、縁談の事で放心してるのよ。」
放心なんてしていません。
ただ、考えているだけなのです。
・・・思いつきました。
父上は、織田との同盟が崩れた後に亡くなりました。
ですから、その後に私が武田家当主になってしまえば良いのです。
きっと、勝頼の兄上たちが反対するでしょうが、そんなことはどうでも良いのです。
武田家を乗っ取り、織田との同盟を復活させ、武田家存続を実現したいのです。
何も知らない父上や兄上よりも、前世の記憶で全てを知っている私の方が、家を残せる可能性が高いでしょう。
父上が死ぬのは嫌ですが、これも信忠様に会う為。
私と相談もせずに、上洛したいという野望から、織田との同盟を破ってしまうのは酷すぎます。
私の本気を見てほしいのです。