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腿太郎、鬼ヶ島に立つ

「いっぬーのー!お巡りさんっ!!困ってしまってワンワンワワーン!!ワンワンワワーン!!」


犬塚が楽しげに歌いながら自転車を漕いでおりますと、あっという間に鬼ヶ島に辿り着いてしまいました。


「襲撃とかなくてよかったですね」

「猿山見ました?あの巨大な櫂が並んでいるの。壮観でしたね」

「お前は観光しにきてんのですか?」


猿山が雉尾にキレそうになっている中、腿太郎は冷静に鬼ヶ島の様子をうかがいました。

灰色の砂浜のあちこちに黒い岩が突き出ています。

道らしきものは見当たりません。あるのは崖だけでした。


登るしかないようです。


「私が一回登って安全か確認しよう。それから一度戻ってきて投げ上げる」


かなりぶっ飛んだ作戦でしたが、それが一番早くて安全だったので三人は腿太郎の案に賛同しました。


「とうっ!!」


腿太郎が足に力を込めて飛び上がりました。

崖の高さは30mはありましたが、腿太郎はたったひとっとびで崖の上へと着地しました。


「鬼だ」


しかしそこにはなんと複数の鬼がおりました。

見回りなのでしょうか。手には金棒を持っております。


「人間が島に乗り込んできたぞ!!!」

「おいおい、この人間、もしやモモタロウではないか!?」

「もしそうだとしたら手加減はいらねぇ!!仲間を呼んでみんなで袋叩きにしてやろう!!!」


そう言うや、仲間を呼びにいった一体を除いて一斉に襲い掛かってきました。

腿太郎にゲームを持ち掛けさせる時間を与える気はないようです。

自分に迫る鬼達を見て腿太郎。


「平和的に解決したかったのですが、致し方ありません」


すぐさま構え、近くの鬼へとタイキックを炸裂させました。


「クミテ師匠直伝の技を味わわせてあげましょう」
















なにやら崖の上が騒がしいのを三人は見詰めていました。


「鬼がいたのかな」

「みたいですね。ごらん、金棒が飛んでいった」

「やはり海上で襲撃されなかったのは運が良かったからですか。どれ」


袖をまくり上げる猿山が崖に近付いていきます。


「何をしている猿山」


犬塚が声を掛けました。


「このまま腿太郎に全て任せれば確かに安全でしょう。だけど、それでは友達ではなくなってしまう」


猿山は崖の端の方にある出っ張りを使ってスルスルと登っていきます。


「さすがは猿だな」


そう言いながら犬塚も猿山に続いて登ろうとしますが、うまく登れません。


「退きなさい。僕が登りやすくしますから」


雉尾が犬塚を横に退かして岩に斜め下方向に穴を空けながら登っていきます。

なるほど、これなら犬塚でも登れそうです。


ヨイセヨイセと登っていくと既に終わっておりました。

三人の視線の先には大量の鬼の屍(気絶)の中に立っている腿太郎。

凄く動いたのか体から湯気が立ち上っておりました。


「なんだ、登ってきたのか」


と、腿太郎。


傍らにアイアンクローをしていた鬼をゆっくり横たえてからこちらにやって来ました。


その時です。


「貴様か!!!俺様の仲間をこんなにしたのは!!!?」


大きな声が響き渡りました。


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