第一章1話
あの悪夢のような出来事から三日がたった。
俺は故郷の村を出て、そこから一番近いシャムルという少し大きな町に立ち寄っていた。
まずはここで、あの赤いローブの連中の情報を探していこう。
そして、姉さんを助けるんだ。
町の中を歩いていると、一つの大きな宿屋に目が行く。
ここなら何か情報が手に入るかもしれない。
そのように思い、店の中へと入っていく。
宿屋の中は酒場のようになっており、昼間であるにもかかわらず店内は人で賑わっており、エルフのウェイトレスが忙しそうにしている。
俺は店主らしき大男がいるカウンターの方に歩いていく。
店主は俺に気が付いたようで、声をかけてくる。
「ん? なんだ君は。ここは君のような少年が来るようなところじゃないと思うが」
男は不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いえ、用が済んだら帰りますので」
そう言いながら,カウンター席に腰掛ける。
「ふむ、それで用というのは何なのかね?」
男はそう言いながら、俺の前にコップ一杯の水を置いてくれる。
「ありがとうございます。それで用というのは、赤いローブを身に着けてる集団のことを何か知らないでしょうか?」
「赤いローブの集団……聞いたことないな。どうしてそんなこと聞くんだい?」
「そいつらを追って旅をしてるんです。何か小さな情報でもいいので教えてもらえませんか?」
「……関わらない方が身のためだろうな。そういった連中は危ないぞ」
男は小さくため息をつき、グラスを磨いている。
「……それでも、あいつらを探し出さないといけないんです」
—――何としても姉さんを助け出さないといけない。
このまま放っておくなんて俺にはできない。
机の上に置いていた拳を強く握りしめ、視線を机に向ける。
「……この町から歩いて三日ほどのところにガブリスという村があるんだが、最近その村が謎の連中に襲われたらしい」
顔を上げ、男の顔を見る。
「君が探している連中かはわからないが、そういった話は聞いたよ」
「……それは本当ですか?」
「気になるんだったら自分で確認してみるんだな。ちょっと待ってなさい」
男は奥にある扉を開け、中に入っていく。
待っているとある会話を耳にした。
「なあ、最近耳よりの話を聞いたんだ」
「あ? またくだらないがせじゃないのか?」
「いや、今回のはマジらしい。王国の王女が逃亡してて捕まえて差し出せば懸賞金が手に入るとかでよ」
「マジかよ、これ飲んだら探そうぜ。大金は山分けな」
そんな噂があるのか、まあ俺には関係ないかな。
噂話を聞いていると奥から男が紙切れを持って出てくる。
「待たせたな、この丸がついてることがガブリスだ。この地図は君に上げよう」
「ありがとうございます」
席を立ち、男に頭を下げる。
「くれぐれも無理はするんじゃないぞ」
その言葉を聞きながら俺は宿屋を後にする。
早速有力な情報が手に入った。
そのことに歓喜しながら町中を歩いていく。
「よし、ガブリスに向かう準備を……」
そう思い道具屋へ足を進めようと振り返った時、突然人影のようなものが視界に現れぶつかってしまう。