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人に寄り添う君、終わりと始まり

走っていくサラを俺たちは追いかける。

「サラ...!待てって!サラ!」

やっとのことで追いつきサラの手を取る。

「ごめんなさい。ごめんなさい...ごめん...なさ...」

「サラ!」

俺は震えるサラの体を抱きしめる。

「落ち着いて。大丈夫...大丈夫だから...」

サラの背中をさする。すると少しずつ落ち着きを取り戻した。

「...あの村で何があったんだ...?」

「...怖い...言ったら皆が離れてく...怖い...」

「今まで一緒に過ごしてきてサラの良いところ沢山知ってる。たとえ何があったとしてと俺はサラの傍にいるよ」

「サラ...そんなに怖がらないで。私たちを信じて」

レイナとグリフもそっとサラの背中に触れる。

「...本当に...?」

「あぁ大丈夫だ」

その言葉を聞き、サラは深呼吸をした。一度静かに目を閉じ、ゆっくり開く。そして話し始めた。

「奇跡の歌姫の話をご存知ですか?」

「奇跡の歌姫...」

確かおばあさんがそんな話をしていた...。


『その子の歌声を聴くと病気も怪我も治しちまうらしいんだ。それが結構噂されてて奇跡の歌姫なんて呼ばれてるよ』


「どんな病気も怪我も歌声で治すってやつか?」

「はい」

「そんな話があるのね...」

レイナは知らなかったという顔をする。

「もしかしてサラが...?」

「...はい。私がその歌声を持つ人なんです」

「え...」

俺たちは驚き、言葉を失った。そんな夢物語のような人物が目の前にいるサラなんて思いもしなかった。

「そんなすごい人なのにどうしてあんなこと...」

グリフがあの悲しい対応のことを聞く。

「私はこの歌声で多くの人を救いたいと思い、旅をしていました。少しずつ人を治していくうちに私の噂は広がっていきました。そしてある時誘拐されたんです」

「誘拐...?」

「はい。どうやら悪い組織のボスが病にかかったようなんです。暗い部屋に連れて行かれ、目の前にいる人を治せと言われました。私は怖くて仕方ありませんでした。でも歌わなければ殺されてしまうかもしれない。私は恐怖を抑え歌いました。そしたら...」

サラの体がまた震え出した。俺はサラの手を握る。

「ゆっくりでいいから...」

「...ありがとう」

サラはもう一度深呼吸をし、話を続ける。

「そしたら私の歌声を聞いた人全員がその場で倒れ苦しみ始めました。私は何が起こったか分からず、怖くなって逃げ出しました。無我夢中で走って逃げた先が先ほどのロイ村でした」

俺たちは何も言えなかった。話される事実の衝撃が大きかった。

「そのロイ村ではとある病が流行していました。多くの人が高度の熱で苦しんでいました。そして私のことを知っていた人がいて、私に助けを求めました。皆を助けてくれって...」

「...歌ったのか...?」

「...私に助けを求める人を無視することはできなかった。心ではもしさっきのように苦しみ出したらどうしよう。救えなかったらどうしよう。その思いでいっぱいでした。それでも私には歌うしかなかった。私は歌いました。そしたら...また同じように...人が苦しみ出した...」

その光景はどれだけ悲痛なものだっただろう...。想像するにはあまりにも辛すぎる出来事だった。

「私はロイ村の人たちに責められ、追放されました。私は走り続けました。どうしたら良いか分からなかった。私は何処でもいい、私のことを誰も知らない地に行きたかった。そうして走り続けた先で倒れた私を助けてくれたのがリヒトでした」

出会った時の暗い表情の理由が今わかった。そんな辛いことがあったなんて思いもしなかった。

「これが起こったことの全てです。黙っていてごめんなさい。もう私とは関わらない方がいい。今までありがとうございました。さようなら」

サラは俺たちから離れようと立ち上がる。俺はサラの手を掴み離さなかった。

「サラ...お前がしてしまったことはどれだけ謝っても許してもらえないことかもしれない。でもお前は最初から人を救いたいと思っていたんだろ?お前はずっと優しくて温かい人なんだよ」

サラの目に涙がたまる。

「私が人殺しなのは変わりません。私はもう人を救えない。そんな私に生きる価値はないんです」

「そんなことねぇよ!サラは俺が狼少年だって知っても変わらず接してくれた。それがどれだけ俺にとって救いだったか...。俺はお前に生きて欲しい。俺と一緒にいて欲しいよ...」

サラのことを姉のように慕っていたグリフ。そんなグリフはサラの優しさを十分感じていた。

「同世代の女の子と話せて私嬉しかったよ。また一緒に星空見ようって言ったよね?その約束破るなんて許さないから」

サラと楽しそうに話していたレイナ。姫としてではなく1人の女の子としてサラと話せたことが何より嬉しかったのだろう。

「...ピエロの痛みを最初に気づいたのはサラだった。お前は人の痛みを誰より感じることができるんだ。ヒロの練習に毎日付き合っていた。お前は人に寄り添う優しさがある人なんだ。お前は心から優しくて温かい人なんだよ」

俺たちの言葉にサラは涙を流した。ずっと一人で苦しんでいたのだろう。その苦しみが涙によって吐き出されていた。

「...私ここに居ても良いんですか?生きてていいんですか?」

「ここに居ていいんだよ」

俺たちはそっとサラを抱きしめる。サラは泣き続けた。サラが泣き止むまで俺たちはずっと離れなかった。






泣き疲れたサラはそのまま眠りについた。

「...俺村に行ってみるよ。2人はサラのことを頼む」

「あぁわかった」

「うん。気をつけてね」

「あぁ」

俺はロイ村に向かった。今どのような状況なのか確かめる必要があると思った。

そして村に入る。人が少なく、静かな村という印象だった。

「おっと、ごめんよ」

「あ、すみません」

ぶつかってきた人に反射的に謝る。その人は紙袋を落とした。俺はそれを拾い渡す。

「はい、どうぞ」

「あぁ、ありがとよ」

「...それなんですか?」

「薬だよ。嫁が病気にかかっててね...。ハレン草があれば良いんだけど...」

ハレン草。それは俺が探し求めていたものだった。

「ハレン草ってクラル山にあるんですよね?」

「あぁ。半年前まではな」

「え?」

「一年前に来た台風で全部吹っ飛んでいったよ。今は一本も残ってない。俺たちの最後の頼りは奇跡の...いや、すまん。なんでもない」

ハレン草がもう無いということに絶望しそうになった。しかしそれよりもサラのことを話そうとした時の憎い顔が俺の心を苦しめた。

「...もし奇跡の歌声がまた現れたら...」

「やめてくれ。聞くだけで怒りではち切れそうになる。この村でその話はしてはいけない」

それだけ言うと男の人はさっさと歩いて行った。

今もこの村では奇跡の歌声が必要だと思っている。しかし過去の出来事によりその力を信じられなくなっている。それでも出来ることならサラにこの村を救って欲しいと思った。何よりサラ自身がこの村を救いたいと思っているのだと感じていた。






俺はサラの元に戻った。

「おかえり、リヒト」

「おかえりー」

レイナとグリフが優しく出迎える。

「...おかえりなさい」

サラも目覚めており、俺を迎えてくれた。

「...サラはもう歌えないのか?」

「...私のせいで苦しむ人たちをもう見たくありません。私はもう歌わない...歌えないんです...」

「サラはどうやってその力を手に入れたんだ?」

「...いつのまにか持っていたんです。最初に治したのは母の風邪でした。母が寝込んでて、歌うことが好きな私は母の前で歌いました。すると母の風邪が治ったんです。最初は偶然だと思いました。しかし別の日に友達が1ヶ月ほど安静にしていないといけない怪我をしました。そのお見舞いに行き、私が歌を歌うとその怪我が治ったんです。それから少しずつ噂が広がっていきました」

「そっか...」

人を救う歌と人が苦しむ歌となったのには違いがある。それさえ分かり、心を改めればきっとまた救いの歌は歌えるようになるはずだ。

「サラはお母さんとか友達を救う時どんな思いで歌ってた?」

「...治ってほしいと思って歌いました」

「じゃあ誘拐された時やロイ村で歌った時は?」

「...怖いと思ってました...。できたら歌いたくないと...心では震えていました...」

「その気持ちの差が人を救うか苦しめるかの違いになったってこと?」

レイナも俺と同じことを思ったようだ。

「あぁ、そう思う。だから怖がらずにサラの優しさを持ったままで歌ったらきっとまた人を救う歌を歌えると思う」

「もうダメです...!」

サラは大きな声で拒絶した。

「私はもう歌いません。もう失敗して人を苦しめたくない。そんな恐れがあるくらいなら歌わない方が良い...。絶対にその方が...」

「サラ」

俺は近くにあった折れ木で腕を切った。

「リヒト!」

3人が俺の行動に驚いた。

「ちょっと痛かったかな...。サラ治してくれないか?」

「いや...ダメ...また倒れ...」

「サラはこれ治ってほしいと思う?」

「当たり前です!」

「だったら頼むよ」

「いや、ダメ...」

傷口から血が流れる。少し刺しすぎてしまったのか傷口がヒリヒリと痛んだ。

「サラなら大丈夫だ。もう怖がらなくて良い。助けたいって思いがあるならきっと治せるよ。俺はサラを信じてる」

「...サラ」

グリフとレイナもサラに寄り添う。

「俺たちと一緒にいる時のサラは楽しそうに見えたよ。もう怖かったことなんて考えなくて良い。こんなバカなリヒトを助けたいって思ってくれるなら助けてやってくれよ」

「バカ呼ばわりは酷くないか?」

「自分で腕傷つけるなんて馬鹿としか言いようがないだろ」

「まぁそうだな」

「そうよ。もう助けなくていいわよサラ。こんなやつほっときましょ」

「おーい?レイナ?」

「そんな大切な力こんなやつのために使う必要ないわ」

「本当あたり強いなお前...」

「ふふっ」

サラは笑った。ずっと悲しい顔をしていたサラがやっと笑顔を見せてくれた。

「...その笑顔があれば大丈夫だよ」

「...リヒト。私は貴方を助けたい。貴方の怪我を治したい」

「うん」

サラは一度深呼吸をする。そして静かに歌い出した。

とても綺麗で澄んだ歌声。周りの景色が輝いて見えた。

「リヒト...傷が...」

グリフに言われ腕を見ると傷は綺麗さっぱり消えていた。

「すげぇ...」

「サラ!」

レイナがサラに抱きついた。

「すごいすごいっ!本当に治した!」

「私...治したの...?」

「あぁ。ありがとうサラ。治してくれてありがとう」

サラはまた涙を流した。もう二度と人を救えないと思っていた彼女がまた人を救った瞬間。俺の傷が治った腕を見てサラは心から安心していた。

「このまま別の地に行くことはできる。サラにもうやりたいことがないなら出発していいと思ってる。どうだ?」

サラは少し黙った後、顔を上げて言った。

「ロイ村の方達に謝りたいです。そして今苦しんでいる人たちを救いたいです」

サラの真っ直ぐな目。とても強い意志がある彼女を心からすごいと思った。

「あぁ。行こう」

またあの目を向けられるかもしれない。もしそうなら俺が守る。そう思いながら俺たちはロイ村に行った。






ロイ村の入り口。サラはまた震え出した。呼吸も荒くなる。

「サラ。大丈夫だ」

背中に手を添える。すると安心したように俺の方を見た。

「はい。行きます」

俺たちは村に足を踏み入れた。

入った瞬間に村の人はサラを見る。

「お前!何しに来た!」

「また俺たちを苦しめに来たのか!」

「あんたのせいでもっと苦しむことになったのよ!」

一気に浴びせられる罵声。その声を静かに聞くサラ。

「頼む!話を聞いてくれ!今サラは...」

俺が話をしようとした時隣でサラが頭を下げていた。深く、深く頭を下げた。

「沢山の人を苦しめました。謝っても許してもらえないことだと分かっています。それでも言わせてください。申し訳ございませんでした」

サラの誠実な謝罪に村の人は何も言えなくなっていた。

「今でも苦しんでいる方がいることは存じています。もし少しでも私を許してくださるのならお願いします。もう一度私にチャンスをください。もう一度皆さんを救うチャンスをください」

「なっ...!そんなことやらせるわけないだろ!」

「彼女は俺の傷を治しました。彼女の力は俺が保証します」

「そんな言葉...信じられるかよ...」

「もうあんなことにはさせません。絶対に救ってみせます。もう一回だけ私を信じてください。お願います」

サラの真っ直ぐな瞳は強い説得力がある。サラの言葉も瞳に気圧された村の人たちがそこにはいた。

「...もしまたあんなことになったらどうなるか分からないと思っとけよ」

「...はい」

「俺の妻が寝込んでいる。来てくれ」

「はい!」

俺たちは男の人についていく。家に入り、ベットで寝込んでいる女の人の元へ来た。高熱があるのか、顔が赤く苦しそうにしている。

「...頼む」

「...はい」

サラが目を閉じる。その雰囲気から感じられる緊張。俺はサラの手を取る。

「リヒト...」

「大丈夫だ」

「...はい」

優しい顔になった。今のサラなら大丈夫だ。

そしてサラは息を吸い、歌い出した。歌声を聴くのは2回目。この歌声は何度聴いても美しいと思えた。

俺たちはもちろん俺たちを連れてきた男の人も自然と柔らかい顔になった。

そして寝込んでいた女の人もだんだんと優しい顔になっていく。赤かった肌も健康的な淡い肌色になっていた。

「...貴方...」

「リサ...!」

男の人が女の人に駆け寄る。

「体は大丈夫か?」

「えぇ、今すごく楽よ。...貴女が治してくれたの?」

女の人はサラの方を見る。

「あ、えっと...はい...」

「ありがとう」

優しい笑顔だった。とても柔らかく温かい笑顔だった。

「...救ってくれてありがとう。酷い言葉をかけて悪かった」

男の人も感謝と謝罪の言葉を述べる。

「いえ、私が皆さんを苦しめたのは事実です。そのことへの謝罪は必要ないです。その代わりどうか皆さんを救わせてください。お願います」

「こちらからも頼む。皆を救ってくれ」

そこからは早かった。1人の女性を救ったということは村にすぐ知れ渡り、皆がサラを頼った。サラは歌い続け何十人もの人を救った。そして病気に苦しんでいた村の人全員を救った。

「ありがとうサラ...」

「ありがとう」

沢山の人がサラに感謝する。俺たちが最初に来た時悪者になっていた彼女は今村のヒーローになった。

「サラ...」

最初に病気の人のところへ案内した男の人がサラに近づく。

「俺たちは君に酷い言葉をぶつけた。それなのに今は手のひら返ししたように君を讃えている。こんな俺たちを酷いと思うかい?」

サラは優しく笑う。

「先ほども言った通り私が皆さんを苦しめました。私がどれほど今救ってもその事実は消えません。それに対する言葉は何年経っても受け止めます」

「ここにはもう君に酷い言葉をぶつける人はいない。そのことは安心してほしい」

「...ありがとうございます」

「改めて言おう。皆を救ってくれてありがとう。俺たちは君のことを絶対に忘れない。何年経っても俺たちは君に感謝し続ける」

「皆さんを救えて良かった...。心からそう思います。私にチャンスをくださりありがとうございました」

「またここに来ることがあったら尋ねてきてくれ。俺たちの精一杯のおもてなしをしよう」

「はい。ありがとうございます。リヒト」

「ん?」

「行きましょう」

満足そうな顔をしているサラ。過去の悲しみを乗り越えたことが伝わってきた。

「あぁ、行こう」

そして俺たちはまた歩き出した。

「本当すごかったなサラ!」

「ありがとうございます。またこの力を人のために使えることができてすごく嬉しいです」

「人のことを大切に思って、人に寄り添うことができるサラだから与えられた力なのかもね」

「そうだと嬉しいです」

「サラ...」

「はい?」

俺は旅に出たそもそもの目的を今言うべきだと思った。

「俺の母さんが怪我で寝たきりの状態なんだ。サラの力で治してほしい」

「はい、わかりました」

サラは迷うことなくすぐに返事をくれた。

「...ありがとう」

「私もついてくよ!」

「俺も!」

「あぁ。一緒に来てくれ」

4人で俺の家に向かった。最初は一人で旅に出た。しかしいつの間にか一緒に行動する仲間ができた。今俺の横には3人の大切な仲間がいる。

「...ありがとう皆」

「こらー!リヒト!あんたが早く来ないといけないでしょー!」

「おせーぞ!早く早く」

「ふふっ。置いてっちゃいますよ」

優しくて温かい皆。そんな皆と旅ができることが幸せだと思った。

「待てよ!」

俺は少し先を歩いていた3人に飛び付いたのだった。






「サラ、こっちだ」

俺はサラを母が寝ている部屋に案内する。

「リヒト。おかえりなさい。その子は?」

「母さんの体を治してくれる人だよ」

「...こんな女の子が...?」

「初めまして。サラと言います」

「サラさん。よろしくお願いします」

「じゃあ、いきますね」

サラは歌い出した。その歌声を聴く母さんはとても安らかな表情をしている。そして母さんが不思議そうな顔をした。

「歩けるか?」

母さんがベットから足を出す。そして立ち上がり、歩いた。

「歩けるわ...」

「良かった...」

心の底から安心した。母さんは再び歩くことができた。自由になることができた。

「サラさんありがとう。ありがとう」

「いえ、本当に良かったです」

「サラさんはリヒトと一緒に旅をしていたの?」

「はい。あと2人一緒に旅した子がいるんですよ」

「そう。楽しい旅だった?」

「はい!とても楽しかったです」

「それは良かったわ」

「リヒト」

「ん?」

「ありがとうね」

「...おう」

久しぶりに会えた母さん。その母さんの満面の笑みを見れたことが嬉しかった。これも全てサラのおかげだった。

そして俺とサラは外で待っていたグリフとレイナの元へ行った。

「どうだった?」

「治すことができました」

「さすがサラ!やるじゃん!」

「えへへ」

サラもとても嬉しそうに笑ってくれている。

「サラ本当にありがとう。君がいてくれたから母さんを救えた」

「私の方こそありがとうございます。リヒト...そしてグリフとレイナが居たから私は人を救う勇気をまた持つことができました。またこの力を人のために使うことができました。ありがとうございます」

そんな風に言ってくれるサラを見て俺たちは優しく笑った。

「これから皆はどうするんだ?」

「私はまたこの力を必要としてくれる人の元へ行き、沢山の人を救いたいと思います」

「私はそんなサラについていく」

「俺も一緒に旅をするつもりだ」

「リヒトは?」

「俺は...」

俺が旅に出た目的は母さんを救うためだった。母さんを救った今、旅をする理由はない。俺は皆と別れ、前のようにここで暮らす。そう思っていた。

「リヒト」

後ろから俺を呼んだのは母さん。

「なに?」

「行きたいんでしょう」

...母親には敵わないと思った。

「...あぁ」

「貴方の人生だもの。自由に生きていいんだよ。行ってらっしゃい」

「ありがとう母さん」

そして俺は3人の方を向いた。

「俺も皆と一緒にまた旅に出るよ」

「よし!いっくぞー!」

レイナの元気な掛け声が響き渡る。俺たちは並んでまた旅を始めた。






この広い世界の中で出逢えたかけがえのない彼らたち。いつか俺はこの出逢いをこう呼ぶだろう。これは奇跡だったとー...。

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