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新たな仲間、いつも笑う君

「で?どこに行くんだ?」

グリフは俺の顔を見上げて聞く。

「何も知らないのによく着いていこうと思ったな」

俺は呆れ顔になりながら言う。

「一人だった俺にリヒトは手を差し伸べてくれたから...。そんな人の傍に居たいって思ったんだ」

俺のことを慕ってくれていることが分かる言葉だった。それは素直に嬉しいことだった。

「うん...。そっか...。隣の国に行くんだよ。ハレン草ってのを探しに行くんだ」

その草さえ見つけることができれば母さんを救うことができる。そのために俺は家を出たんだ。

「聞いたことあるな、それ」

「え!?知ってるのか?」

「あぁ。人が話してるのを聞いたことがある。確か隣の国のクラル山の頂上にあるって言ってた」

思いがけない所で情報を得られた。隣の国に着いたら何処を探そうか正直不安に思っていたが、これで目的地が確定した。

「ありがとうグリフ!」

「お、おう」

俺の反応の大きさに驚いたのだろう。グリフは戸惑ったが、俺の嬉しそうな顔を見て同じように笑った。

そして俺たちは歩き続け、夜になった。

「今日はここら辺で寝るか」

「うん」

「お前寝袋あるのか?」

「今までもこのままで寝てたから大丈夫だよ」

「えぇー...」

流石にそのままで寝させるのは気が引ける。俺はバックの中から毛布を取り出した。

「これ使えよ」

「良いのか?」

「あぁ。俺は寝袋があるからな」

「...ありがと」

最初は一緒に旅に出ることが不安だったが、案外上手くいくかもしれない。グリフと一緒に旅ができそうだ。俺はそう思いながら眠りについた。







「...ト。...リヒト!」

陽の光が眩しい。俺はグリフの声に起こされた。

「ん...。どうした?」

「人が倒れてる!」

「なに!?」

焦った様子で言うグリフ。俺はグリフの後についていった。

そして長い髪の女の子が森の中で倒れているのを見つけた。

「おい!大丈夫か?」

「ん...」

息はある。腕や足に痣はあるが、大きな怪我はしていないようだった。

「グリフ。俺のリュック持ってこれるか?手当てする」

「分かった」

そしてグリフは走っていった。

「一人でどうしてこんな所に...」

怪我の手当てをし、目覚めることを待つことにした。

そして2時間後。

「...ここは...」

「目覚めたか?」

女の子はボーッとしながら俺とグリフを見る。

「あんた大丈夫か?」

グリフも声をかける。

「手当てしてくれたんですか...?」

「あぁ。何があったんだよ」

女の子は何も答えない。答えたくない事情があるのだろう。

「名前はなんていうんだ?」

「...サラ」

透き通った声で答えるサラ。彼女の瞳は悲しみで満ちていた。

「...帰る場所あるのか?」

「...ない」

殆ど何も言わないサラ。俺は対応に困っていた。

「じゃあさ俺たちと一緒に行ったら良いんじゃねぇか?」

するとグリフが素っ頓狂なことを言った。

「おい!女の子だし、そんな勝手な...」

「...私の傍にいたら不幸になります。貴方達の為にもやめた方が良い」

サラは暗い顔のまま答えた。グリフは悲しい顔でサラを見る。

「不幸になるって...?」

「そのままの意味です。手当てしてくれてありがとうございました。それでは」

そう言って立ち去ろうとするサラ。

「待てよ」

俺はそんなサラの腕を引く。

「不幸になるとか何で勝手に決めんだよ。人の幸せは他の人が決めるもんじゃない。自分自身で決めるものだ。サラと一緒にいて幸せか不幸かを決めるのは俺たちだろ」

悲しい瞳をしたまま別れてはいけないと思った。自分の傍にいたら不幸になるなんて悲しいこと言わないで欲しかった。

「行くところが無いなら俺たちと一緒に行かないか?」

ほんの少し前にグリフを咎めた俺がなんてことを言うのだろうと思う。それでもサラには傍にいる誰かが必要だと思った。

「でもそれは...」

「ダメなわけない。誰かの傍にいることがダメなわけないんだよ」

サラの目からは一粒の涙が溢れた。そして少しの間悩み、

「...本当は誰かと一緒に居たい。...居て...くれますか?」

と言った。

「あぁ。一緒にいるよ」

「俺もいる」

俺とグリフは真っ直ぐ答える。

「ありがとう」

少し微笑んだその顔はとても優しいものだった。

「俺の名前はリヒト」

「俺はグリフ!」

「リヒト、グリフ、よろしくお願いします」

「あぁ。今日はしっかり体休めるんだぞ」

「はい」

そう言ってサラは眠りについた。

「この傷どうしたんだろうな...」

グリフは手当てされた腕を見ながら言う。

「...どこでも酷い人は居るんだな...」

「何があったかはわかんねぇけど、傷つけられる痛みは分かるから...。俺は何があってもサラの傍にいたい」

「...俺もそう思うよ」

痛みが分かるグリフ。そんな彼だからサラに優しく手を伸ばしたのだろう。

「サラが回復したら出発しような」

「あぁ」

そして俺たちはサラが目覚めるのを待った。







「隣の国に目指してるんだよ」

「そうなんですね」

サラが回復し、俺たちは再び歩き出した。

「あ、ここは...ライ村...か」

そして俺たちは新たな村に着いた。

「店いっぱいだな」

グリフが興味深げに周りを見渡す。今まで見てきた村の中で一番栄えていた。人は多く、マジックなどの見世物をしている人もいた。

「あ、ちょっと待ってて」

二人に声をかけ、俺は見つけた服屋に向かった。そして買い物をし、戻る。

「何買ってきたんだ?」

「はい、これグリフに」

差し出したのはフード付きの上着。

「俺に?」

「お前ずっと耳気にしてたから...。もし隠したいんだったらこれで隠せばいいよ」

「耳ですか?」

サラは今気づいたのか、グリフの耳に触れた。

「俺狼少年なんだ。この耳を見られてよく人に色々言われてて...」

「狼少年...」

「前までは誰にも受け入れてもらえなくて辛かったけどリヒトとおばあさんに救われた。それにサラとも出逢えたから」

辛い過去も笑顔で言えるグリフは強いと思った。

「...そうだったんですね...」

サラの瞳がまた淋しい色になった。

「...誰かに受け入れてもらえないかもしれないことは隠して良いと思う。それで自分が救われるなら。でも隠さなくても受け入れてくれる人は居るってことはわかって欲しい」

これはグリフとサラに向けて言った言葉だった。グリフの耳もサラが隠したいことも俺は受け入れると思っている。

「...ありがとな」

そしてグリフは俺が渡した上着を着た。

「似合うか?」

「あぁ、似合ってるよ」

「はい。似合ってます」

そう言うとまたグリフは子供のような無邪気な笑顔になった。

「ん?あれ、なんだ?」

グリフが指差した先にはボールの上に乗った人。

「あぁ、あれはピエロだよ。ああやって色んなことして人を楽しませるんだ」

「ふーん」

グリフは初めて見るピエロに興味を持っていた。俺も存在は知っていたが、見るのは初めてだったため出逢えたことが嬉しかった。

「サラは見たことある?」

「はい。以前ここを訪れたとき見ました」

「前に来たことあったのか」

「あ、えぇ...」

どうしてまた隠しておきたいことのように話すのだろうか...。まだ彼女の心の扉は開けそうになかった。

「あ、落ちた」

グリフの声を聞きピエロの方を見ると、ボールに乗っていたピエロが地面に横たわっていた。

「え、大丈夫か」

駆け寄ろうとしたがすぐにピエロは起き、

「えへへ。落ちちゃった」

と頭を掻きながら言っていた。俺は一先ず安心し駆け寄るのをやめた。

「痛いでしょうね」

「え?」

サラが小さく呟く。

「落ちて痛いはずなのに皆がいるから、皆を笑わせるピエロだから笑ったままでいる。そんな気がします」

ピエロの彼は仮面を被っている。そのため彼の本当の顔は見えない。仮面の下で泣いているのだろうか...。サラの言葉を聞いて俺はそう思った。

「なぁ腹減った〜」

ピエロに興味がなくなったであろうグリフが俺に言ってきた。

「あ〜確かにな。どっか店入るか」

そう言って俺たちは店に入り、注文した。

「一応聞くけどグリフ。お前の持ち金は?」

「0」

まぁ今まで森暮らしだったのだから当たり前か...。

「今まで何食べてたんだよ」

「木になってた木の実とか動物狩ったりもしたな」

普通の人間として接しているが、そこらへんは狼少年としての血がしっかり流れているのだと分かった。

「サラは?」

「あ、えーと、こんな感じです」

目の前に出されたのは数ヶ月暮らすには余裕のあるほどのお金だった。

「なんでこんなに持ってるんだ?」

「あ、ちょっと...はい...」

「まぁいいや。悪いけどサラも少し出してもらって旅するって感じで良いか?」

「もちろんです。私がついていかせて頂いていますから」

優しさに溢れた人で良かったと思った。そうして俺たちは食事を終え、店を出た。

「よーし、腹も膨れたし行くか〜」

グリフの掛け声と共に行くつもりだった。


『痛いでしょうね』


その時俺の頭にはサラの声が流れた。

明日もあのピエロはあそこで笑ってるのだろうか。痛い思いをしても笑い続けるのだろうか。誰にも本当の心を見せずに...。

「あのさ、もう少しここに留まらないか?」

「なんで?」

「あー、えっと...。さっきのピエロが気になって...」

そう言うとグリフは笑った。

「な、なんだよ」

「お前は本当優しいやつだな。まぁそうだよな。俺の初めての味方になってくれた人だもんな。良いよ、お前がここに居るなら俺もここにいる」

「リヒトがしたいようにしてください。私も貴方についていきますから」

「うん。ありがとう」

そして俺たちはこの村で過ごしながらピエロの様子を見ていた。

毎日同じ場所で玉乗りやパントマイムなど様々な芸をしていた。夕方になり帰っていくときの一人で歩く背中が俺には淋しく見えた。

そして今日もピエロとして芸をする。

俺たちが見ている後ろから声が聞こえた。

「あんなんやっててバカらし」

「あぁ。どうせすぐ飽きられるくせに」

その声はグリフの耳にも届いていた。

「お前...!!」

「グリフ」

俺の声で殴りかかっていきそうなグリフは悔しそうな顔で止まった。

「あいつ...頑張ってんのに...。なんでそんなこと言われなきゃなんねぇんだよ」

「沢山の人の為に頑張る人ほど非難の声を浴びせられることがあるんだよな」

「なんで...」

「皆バカで弱虫なんだよ。だから人のために頑張れてる人が羨ましくて、でも自分にはそれが出来なくて、その悔しい気持ちを暴言にして吐くしか出来ないんだよ...」

「皆が頑張りを認めて優しく声をかける世界になれたら幸せなんですけどね...」

人には嫉妬という気持ちがあってしまう。それが嫌な言葉として出てきてしまうことがある。それは辛く悲しいことだった。

「わぁ!大丈夫〜?」

子供達の声が聞こえた。見るとまたピエロが玉から落ちていた。俺は駆け寄った。

「大丈夫か?」

俺はピエロに手を差し出す。膝を見るとズボンも破れ血が出ていた。

「お前...怪我...」

「ありがとう〜」

俺の手を取り立ち上がったピエロ。そして何もなかったようにまた芸を始めようとした。

「手当てしないと...」

「大丈夫だよ。君最近見てくれてるよね。ありがとう〜」

柔らかな口調で話すピエロ。本当は痛いはずなのに...なんで...。

「どうして笑ってられるんですか?」

サラも心配しながら聞く。

「皆に笑って欲しいから」

ピエロはすぐ答える。それが彼にとって一番の思いなのだろう。そう思うと次の言葉が出てこなくなってしまった。

「お兄ちゃん見えない〜」

ピエロに一番近い位置に立っているため後ろの子から言われてしまった。

「あ、ごめんね」

そして俺たちは後ろに下がった。

「俺はさこの耳隠したいから隠してるけど、あいつの涙は隠したいから隠してるのかな」

「...隠したいからだろうな。でもグリフとは少し違う感じがするよ」

「私もそう思います」

「そうだよな。泣きたい時は泣けば良いのに...」

俺もそう思った。しかしピエロでいる限り彼は泣かないのだろう。

俺たちはただ黙ってピエロを見続けるしか出来なかった。







そして次の日もまたピエロの下へ訪れる。今日も変わらず芸を披露する彼。

「じゃあ次は玉乗りするよ〜」

そして玉乗りを始めた。子供たちは楽しそうにはしゃいでいる。

「今日も楽しそうにしてるな...」

「はい...」

俺たちがぼんやりしている時男たちの声が聞こえてきた。

「ガキ共うるせぇぞ!!」

千鳥足でピエロの周りの子たちに近づく二人の男。昼間だというのに酒に酔っ払っているようだった。

「あ、お前ピエロってやつか?俺たちのためになんかやってくれよなぁ?」

「あぁ。お、玉乗りじゃん。やれよ〜」

ケラケラ笑いながら言う態度に腹が立った。しかしピエロは動揺することもなく玉に乗った。そしてバランスを取りながら乗り続ける。

「お〜っと〜」

男のうちの一人が足で玉を蹴った。バランスを崩したピエロは落ちてしまった。

「ハハッ。落ちた落ちた〜」

「よう兄ちゃん立てよ」

ピエロを無理やり立たせる男。

「お前笑わせるのが仕事だろ?俺たち今ムシャクシャしててよぉ。誰か殴ったらスッキリして笑えると思うんだよなぁ。だからよぉ」

男は拳を握った。そしてピエロに向かって突き出した。

俺は咄嗟にその間に入った。

嫌な音が響き、俺は男に殴られた。

「貴方...」

「あぁーん?だれだお前」

「おめぇらこそつまらねぇことしてんじゃねぇよ」

「やんのかコラァ!!」

男たちがキレ、もう一度殴られると思ったその時だった。

「止まれお前ら!」

そう言って男二人を取り押さえたのは村の警備をしていた人。

「あん?何すんだ!」

「いいからこい!」

暴れる二人を抑え、連れ去っていった。

「リヒト!大丈夫?」

サラが駆け寄り殴られたところを見る。

「あぁ。こんなの大したことじゃねぇよ」

「ひゅ〜カッコいい」

グリフは少しからかい気味に話しかける。

「僕のせいで...ごめん...」

ピエロは申し訳なさそうな声色で言う。

「別に...あんたが悪いわけじゃないから」

「本当にありがとう」

普通に話しているが落ちて痛いはずじゃないのか?変なちょっかい出されて笑われて悔しくないのか?なんで人の心配ばっかしてるんだよ。

「あんたは平気なのか?」

「僕は殴られてないし大丈...」

「そうじゃねぇだろ」

少しの沈黙が流れた。

「なんで怪我して痛いっていわねぇんだよ。なんであんなことされて悔しそうにしねぇんだよ」

「...僕は笑わせるのが仕事だから...」

「人を笑わせる人は泣いちゃいけねぇのか?」

「僕が泣いたら人は笑ってくれない」

「心配してもらえば良いじゃんか。いつも笑わせてるんだ。時には皆に笑わせてもらっても良いんじゃないのか?」

「そんなの...ダメだよ...。ピエロは笑ってなきゃ...」

いつでも笑ってないといけないという気持ちが前に出過ぎていた。しかしそれを全否定することは出来ないため俺は困ってしまった。

「とったり〜」

その時グリフがピエロの仮面を取った。

「あっ!ちょっと、返して!」

「へぇ〜カッコいい顔してんだな」

初めて見た仮面の下の顔は淋しそうだった。

「その仮面を取ったらただのお前だ。今は泣いても良いんじゃねぇのか?」

「僕は...」

「お前はピエロである前に人間だ。泣きたい時は泣いていいし辛い時は辛いって言っていい。そして笑いたい時だけ笑え」

「我慢しなくて良いんですよ」

サラの声を聞いた瞬間に何かが切れたようにピエロは涙を流した。

「...落ちる度に痛かったんだ。でも笑ってないと皆が離れていってしまいそうで...。それが嫌で...。さっきも怖かったんだ...。でもピエロなら誰の前でも戯けて見せないとって思って...」

涙とともに心の内に秘めていた思いも溢れた。

「泣くピエロだって良いじゃねぇか。そんなピエロを見る人もいるよ」

「そうかな...?」

「いるよ。現にここにな」

そう言って俺はピエロの前から退き、子供達を見せる。

「大丈夫お兄ちゃん?」

「俺ハンカチ持ってるよはい」

「お兄ちゃん元気出して」

子供達がそれぞれピエロに声をかける。

「みんな...」

「愛されてるんだな」

「...そうかな」

仮面の笑顔よりも涙を流しながらの今の笑顔の方が好きだと俺は思った。

「良かったな...」

グリフもいい笑顔でピエロを見つめる。サラも優しい笑顔になっていた。







次の日もピエロは芸を披露していた。そしてまた玉から落ちてしまった。

「大丈夫?ピエロさん」

「...痛い...」

「わぁ〜大変!絆創膏あるよ!」

「痛いの痛いの飛んでけ〜」

「ふふっ。ありがとう。痛み飛んでったよ」

痛いと声に出していったことに安心した。

「もうちょっと玉乗りの練習したらどうだ?」

俺は笑いながらピエロに話しかける。

「あぁ。そうするよ」

「俺たちまた旅始めるんだ」

「そうか。色々ありがとな」

「おう」

そして俺たちは握手をした。

「あんたはずっとここに居るのか?」

グリフが俺の横から話しかける。

「あぁ。俺この村もこの村の人も好きなんだ」

仮面の下の顔はとてもいい顔をしているのだと思った。

「そっか。いいと思うよ。この村にお前は似合う」

「僕もそう思うよ」

「あの...」

サラがひかめえな態度で話す。

「ん?」

「どうしたらずっと笑ってることが出来るんですか?」

「...目の前にあるものを愛すること。それさえ出来れば笑顔になることは出来ると思うよ」

ピエロはこの村の全てを愛しているのだろう。だから何があっても笑うことが出来ていたのだと思った。

「ピエロさんは強いですね...」

「弱いよ。その弱さを出すか出さないかの違いだよ」

「そうなんですね...」

今まで弱さを出さなかったピエロ。これからはきっと出していくのだろう。

「頑張れよピエロ」

「あぁ」

そして俺たちは別れ、旅を再開した。

「グリフそれ」

グリフの手にはピエロの仮面があった。

「あぁ。なんか同じやつ何個かあるみたいでくれるって言ったからもらった」

「いつの間に...」

グリフは顔に仮面をつける。

「似合うか?」

「あぁ似合うよ。なぁサラ」

サラは俯いている。

「どうしたんだ?」

「疲れたのか?隣の国まであと少しだから頑張れ!」

俺とグリフの声が届いているのかすら分からなかった。少しの間待つとサラは顔を上げた。

「私が何を言っても受け止めてくれますか?」

今まで見たことがないほど真剣な顔をするサラ。

「あぁ、もちろん」

「うん」

俺とグリフはその顔に気押されつつ答える。

「ありがとうございます」

サラは一息置いて緊張した面持ちで言った。



「私は人を殺しました」

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