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真似
そこにあったはずの山が一夜にして消えた。昔はそういうことがあったらしい。
それはきっと山が逃げ出したからだろう。正確に言えば山に化けた何者かが、だ。
しかしそれも仕方のないことだ。なにせ山に化けていても安全と言える世の中ではない。そこかしこで山が削られ更地にされてしまうのだから。
だからこそソレらは今まで真似ていた山の姿を捨て、別の姿を真似ることにした。人に見つからないように、人に狩られないように。
ソレらは今もまだ、人に見つかることなく存在し続けている。
ところで世界の人口推移グラフを見たことがあるだろうか。興味深いグラフで、ゆっくりと右肩上がりに推移してきたグラフが突然ほぼ垂直に伸び始めている。
急激に人口が増えたということを表しているが、果たして増えたのは本当に"人"なのだろうか。