第三部の登場人物 その一
三章終わりに当たっての登場人物の整理です。半分に分けますので、前半を投稿します。後半はいつも通りの明日の朝になる予定。
<主人公>
アンリ・ド・リヴィエール 十三歳 男
転生した「ぼく」によって、本来背負っていた「英雄」の宿命すら凌駕する「中途半端」」の特性を獲得してしまった少年。「英雄」らしくすべてにおいて優れた才能を発揮できるが、「中途半端」により、その能力の成長は必ずどこかで頭打ちになる。
半端な能力のまま英雄となって自分のまわりの世界を混乱させ、親しい人々を苦しめ,挙げ句の果ては自分が力不足の英雄として死ぬ、という展開を避けたいという、きわめて個人的な動機で、英雄召喚を先延ばしするべく歴史に介入することを決意した。ちなみに、世界を救うとか人々を助けるとか正義を実現するとかの、いかにもな行動にはまったく興味がないし関わる気もない。
学生としての生活の終わりが見えてきたこともあり、卒業後を見据えて情報収集や仲間集めに力を注いでいるが、その行動がトラブルを引き寄せている側面があることは否定できない。
親しい人を自分の生き方に巻き込めない、というポリシーから、誰にたいしてもそこそこいいヤツ、を演じるが、一歩引いた接し方が時に女の子を引き寄せてしまうことも……。現在ベアトリーチェとの関係の持っていきかたに悩んでいる。
闘いは才能というよりセンスと経験に頼るタイプで、死なないための戦い方に特化しつつある。冒険者ランクはC。
現在王立学舎六回生
<ド・リヴィエール家>
マリエール・ド・リヴィエール 三十六歳 女
アンリの母親でド・リヴィエール伯爵第二夫人。天真爛漫な性格だが、信じると決めた相手はとことん信じ通す。アンリを含めた一女一男の母。相変わらず末っ子にはダダ甘。
ロベール・ド・リヴィエール 四十四歳 男
アンリの父親。ドルニエ王国伯爵で、王国の武の重鎮のひとり。剣術に優れているが、二歳のアンリに本格的に剣術の訓練を課すなど、残念なところもあるナイスガイ。領地騎士団でのマルコの研修の話に前のめりに乗ってくるなど、柔軟な頭は持っている。
シャルロット・ド・リヴィエール 三十八歳 女
ド・リヴィエール伯爵第一夫人。ふわふわっとした性格だが締めるところは締めるらしい。一女二男の母。マリエールとも仲が良く、イネスとアンリも自分の三人の子供と同様にかわいがっている。
カトリーヌ・ド・リヴィエール 二十二歳 女
アンリの長姉。母はシャルロット。王立学舎総合課程を首席で卒業後、伯爵家のカルターナの屋敷にて領地経営の勉強をしていた。フェリペの近衛騎士団入団とともに、屋敷を辞して伯爵領に戻り、それと前後して結婚が決まった。
母親似の癒やし系美女だが、フワッとした表面に、父親の武闘派的側面を隠しているという噂あり。
現在ウォルシュ侯爵長男のウォルシュ男爵夫人で一子、長男ロマンの母。この結婚がアンリに重度の姉コンを自覚させた。怒ると怖い、と感じるのも、実はその裏返しらしい。
フェリペ・ド・リヴィエール 二十歳 男
アンリの長兄。母はシャルロット。王立学舎騎士課程の筆頭だった。剣の腕は同世代では圧倒的で、すでに父に並んでいるという噂あり。学業も優秀で他の学生からの信望も厚かったイケメンのパーフェクト兄。女子には冷たいとは一部学生の評。指揮官としての統率力も一流。卒業後近衛騎士団に任官され,現在は中隊長格。カルターナの伯爵家の屋敷にいる。家族としてのアンリのいちばんの相談相手になっている。ベアトリーチェの一件では、結婚をアンリに先を越される可能性を感じて少しあわてている。
イネス・ド・リヴィエール 十九歳 女
アンリの次姉。王立学舎騎士課程卒。剣では同学年の中で圧倒的な強さを見せた。学業が控えめで筆頭にはなれなかったが、本人はべつに興味はない。弟を実は溺愛しているが、表現が独特でだれもそれを理解していない。卒業後、伯爵領の騎士団に入隊。即中隊長となる。
剣は、センスのみで勝負する傾向があるが、腕は一流。ギエルダニア騎士養成学校との交流行事で第三皇子アウグストを襲撃から救い、その後彼から求婚され続けていた。「自分と剣で引き分けたら考える」という条件をアウグストに出し、それが実現したために求婚を受けることを決意した。
ジョルジュ・ド・リヴィエール 十七歳 男
アンリの次兄で母はシャルロット。武の面では控えめ。優れた頭脳を持つが、同時に豊かな魔力を持ち、五回生になる際に魔法課程に転科。その後魔法研究において優れた才能を発揮した。弟おもいの優しい兄で、非常に目立つ存在である上の三人の兄姉の弟であることの苦労を理解し、いまもひそかにアンリを思いやる。ひそかに兄弟いちの常識人。
卒業後は王宮魔法局に勤務。多少不規則な勤務形態のため、あまりアンリと顔を合わせることはないが、やはりベアトリーチェの件ではひそかにあわてているらしい。
タニア オーバー三百 魔族 女
マリエール付きのメイド。タニアは仮の名で、本名はノスフィリアリ。以前、マリエールに返しきれないほどの恩を受けたらしく、マリエールが生きている間は彼女を支え続けることを決意。それ以前は高位魔族にふさわしい多少ヤバ目の実績を残していた。冒険者としても、「死神」の二つ名を持つ。バルに言わせれば、将来の魔王候補の一人。
アンリの宿命と特性を知るもので、アンリの武、知及び魔の師匠。アンリの決意を支えていくつもりだが、それはアンリのためではなくマリエールへの恩返しの一環であるらしい。ちなみに、魔法教官のジルとは古い知り合いで、最近は魔法の修練は彼に任せている。
長期休暇にはいまもアンリにブートキャンプを課している。アンリの変わった女性を引き寄せる習性を心配しているが、あきらめつつあるという噂もある。
<アンリの仲間となっている人たち>
シルドラ オーバー二百 魔族 女
タニアの押しかけ眷属。万能だがとくに斥候・暗殺職に優れた才能を持つ。冒険者としても有名だが、それは実績だけではなく、頭に血が上るとあたりかまわず魔法を乱発する危ない存在として知られている部分もある。冒険者ランクはB。
リュミエラとの関係はきわめて良いが、ビットーリオは天敵のような存在。ただし、「天敵」と書いて「とも」と読む人もいるらしい。姉テルマという、ビットーリオをはるかに超えるレベルの天敵が出現し、日々の生活のストレスはたまっているらしい。すぐに旅に出たがるようになっている。
リュミエラ 二十三歳 女
もとアンドレッティ公爵家長女。ザ・パーフェクト。金髪ストレートの正当派美貌と完成されたプロポーションを持ち、頭脳明晰、運動能力抜群でだれに対しても優しく、学舎時代はカトリーヌのあこがれの先輩。実の父親と母の実家の陰謀で母を殺されてしまった、そして自らも愛玩奴隷として売り飛ばされるところをアンリが購入。復讐の手助けと引き替えに生涯の絶対の忠誠を誓う。冒険者ランクはB。
最近、アンリの姉コンの身代わりとなり始め、アンリが自分を意識して行動がぎこちなくなることを心配し、時々みずから進んで当初のステータスである愛玩奴隷としての役割も果たしている。
アンリの連れの中でもっとも常識を備えているが、最近は突発事態にも強くなってきている。アンリの副官的存在で情報収集に才能を見せつつある。リュミエラ・ノートにはどれだけの人々のどれだけの秘密が記されているか、誰も知らない。
ビットーリオ 二十八歳 男
ギエルダニアの冒険者だったが、アンリを独特の観点から気に入り、押しかけの仲間としてついてきた。もと一流の騎士だが、攻撃を受けることに喜びを感じるマゾ的な嗜好のためクビに。一流のタンクであり、シルドラをして「フェリペでも勝ちきるのは難しい」と言わせるほどだが、情報収集にもたける。ただしリュミエラの情報収集能力に衝撃を受けている。冒険者ランクはB。変態。
アンリの仲間の中で、キャリア的にも中堅になってきたこともあって、様々な打ち合わせで議論を活性化する役割を進んでつとめている。
ヨーゼフ 三十三歳 男
交流行事の際の学生の遠征への襲撃を組織したもとラグシャン女王国諜報部員。シルドラに無力化されてとらえられ、その後半ば押しかけでアンリたちに同行してきた。女王国への忠誠心はすでにない。現在冒険者ランクC。
情報収集、工作のスタッフとしてなかなかうまく機能している。盗賊騒動でとらえたかつての同僚のフレドをアシスタントとして使っている。
ローザ 二十七歳 女
ヨーゼフとともに襲撃を組織したもとラグシャン女王国女王近衛。ビットーリオに無力化されてとらえられ,ヨーゼフとともにアンリたちに同行。やはり女王国への忠誠心はゼロとなっている。現在冒険者ランクC。
ユーティリティープレイヤーとして機能している。その位置づけの足固めのため、最近は情報収集も経験を積まされている。立ち位置は地味だが、武器屋エランに言わせれば「騎士にむいてないのに近衛に入った」けっこうな実力者。
ローラ 十四歳 女
もとローリエ・シャバネル(男)。
シャバネル伯爵の長男(三女)。騎士養成学校在学中,文武両面で学内随一の実力者と誰もが認める存在だったが、とくに、五年前の襲撃事件で第一陣の食い止めと被害の拡大防止に功績大。そのときにアンリと出会い、アンリの初めての歴史介入に巻きこまれて英雄にされた。その人となりや生き方に興味を持つが、カルターナを訪れた際にアンリから自分に関わらないよう釘を刺されてしまった。
ギエルダニア騎士養成学校を二度飛び級して卒業し、近衛に入団したが、一年で病気のため退団。それは側室に生まれた長男に自然に家督を譲るためのシナリオだった。その後,アンリのことが気になり続けている自分に気づき、女冒険者としてアンリのもとを訪れ、押しかけの仲間となった。十四歳まで男として生きてきたこともあり、最高級クラスのボクッ娘
なぜか、完璧な騎士候補生だった養成学校時代より残念な側面が増えているが、騎士の使命から離れたいま、武器屋エランにも力を認められている。剣はタニアを初見で「まあまあ」と言わせるほどハイレベル。
エマニュエル 十三歳 男
アンリの学舎の同期で、カルターナの大商店の次男。成績は文武とも平凡だが、調薬士として才能が認められつつあった。
六回生の時に急に学舎を退学、アッピアのボルダンに向かおうとしたところをシルドラに拉致された。
実は壊れた輪廻の環の犠牲者。エマニュエルとして十一回、他の人間として十一回の人生を生きている。その環を断ち切るために歴史をこれまでと違った形で動かそうとしていたが、アンリが「観察者」との接触に協力することを条件に仲間に引き込んだ。
テルマ オーバー三百 魔族 女
シルドラの姉。タニア(ノスフィリアリ)の同世代で、魔法については彼女と世代最強を争う。物理の力はシルドラ基準ではさほどでもないらしい。バルに言わせれば、将来の魔王候補の一人。
ジュゼッペという、シルドラに似たところのある冒険者に付きしたがっていたが、盗賊の一件でシルドラと再会し、アンリに興味を抱いたこともあって客分として居ついている。師匠の敵であるゴルドノフ(魔族)を殺すきっかけを作ったアンリに好感情を抱いており、客分としての滞在は当面続く見込み。
ニケ 六十四歳 魔族(聖猫族) 女
伯爵領の森に居すわっていた大猫。人型になると猫耳少女になる。魔族としてはまだ子供。
森でアンリたちと遭遇し、パニックになって襲いかかったが、テルマの魔力に恐れをなして抵抗を放棄した。食事の世話とひきかえに、アンリたちに同行することを喜んで承知した。戦闘のさいは、人型では素手で殴り倒すパワーファイター。
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