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17-1 切り口への食いつき

とりあえず当面は禁欲展開になる……かな?

カルターナに戻ると、ほどなく教会関係は非常にわかりやすい形で事態が収束した。枢機卿がひとり、有力な大司教がひとり、謎の狂死を遂げたのだ。死にいたる過程はひどいものだったらしく、あまりの惨状に神を冒涜する何らかの行為の存在も疑われ、本格的な調査が行われているらしい。すでに聖騎士団に拘束された聖職者が複数名出ているとか。そのおかげで、より低位の関係者数名の死はあまり大きな関心を惹いていない。


 空席となった枢機卿の席には、フェルナンデス枢機卿総代に近い大司教が昇格した。順当に選べば筆頭であるエリーゼパパが昇格するところだったが、親子そろって枢機卿の職を占めることをよしとしなかったエリーゼパパは昇格を辞退した。一族の影響力が大きくなりすぎることを懸念したためだが、もちろんそれ「だけ」が理由ではない。辞退した結果として、代わって昇格する大司教の選定にはフェルナンデス派の意向が大きく反映されることとなったのである。エリーゼパパやグランパも、決して人柄だけで昇進してきたわけではないのだ。




 教会の騒動を見届けて女王国に向かうにあたって、ぼくは初めて、ベアトとエリーゼに自分のためにウソをついた。


 明日からぼくは女王国の王都ビルハイムに向かう。護衛には今回はシルドラを伴い、テルマさんに移動を担当してもらう。この異例の体制はローザとフレドをビルハイムに伴うためだ。ここまではウソはない。というか、行き先はもともと知らせていない。ウソとは、ベアトとエリーゼには今日出発すると言っていることだ。そしていま、ぼくは拠点の自室でぶっ倒れている。




 実家から戻って一週間、ぼくは約束どおりベアトとエリーゼのお願いをきき続けた。そしてスッカラカンになった。


 実家での数日間、ベアトとエリーゼはマリエールやシャルロット様のお相手をしつつ、ぼく抜きで親交を深め続けたようだ。強い絆で結ばれるにいたった二人は、ぼくとの時間の持ち方についても共通理解を作り上げたらしく、夕食が終わったあとあたりで違和感なくどちらかがぼくと二人きりになる。


 カルターナに戻った日の夜は、エリーゼがデザートをスキップしたのでベアトの部屋に直行、次の夜はベアトの部屋で三人でお茶を頂いたあとエリーゼと一緒においとまして彼女の部屋に向かった。その次の夜はエリーゼが聖騎士団の用事とかのために不在、四日目はベアトが実家でのパーティーに参加するために不在……、といった感じだ。ベアトとお風呂の中で、とかエリーゼと三階のラウンジで最後まで、とかやりたい放題になってしまった。そしてきわめつけが昨夜で、ちょっと油断していたぼくの部屋に二人で押しかけてきたのである。そして、二人とも朝までそこにいた。3Pアリとか、初耳である。ベアトがエリーゼの胸部装甲を蹂躙し、エリーゼがベアトの下半身に顔を埋め、二人でお互いを煽りながら貪り続ける姿は、しばらく夢に見そうだ。


 いまボロきれのように横たわっているぼくのそばではリュミエラが果物を用意してくれているが、ふだんなら彼女の香りに敏感に反応するぼくも、いまは半分くらいしか力が入っていない。それでも半分か、という突っ込みはナシに願いたい。


「それでは、わたしはこれで屋敷に戻りますね」


「ふたりには……その……」


 リュミエラはクスリと笑ってぼくの頬に手をあてる。半分が四分の三になる。


「無事にお発ちになったと言っておきますからご安心くださいな。道中、お気をつけて」


 リュミエラが軽く唇をぼくの唇に当てると、スッカラカンのはずが四分の三からフルになった。青少年の無節操な情動が憎い。リュミエラはぼくに負担がかからないようにその無節操を鎮め、きれいに掃除したあと、素早く身なりを整えて退出していく。彼女が扉を閉じると同時に、ぼくは意識を失った。




 テルマが軽々と四人をビルハイムの彼女の旧ねぐらに転移した一時いっときほど後、ぼくたち、おもにフレドが非常によくない汗を流しながらセリアさんと向き合っていた。ビルハイムの拠点にぼくとシルドラが着くと、ヨゼフは直ちにセリアさんを呼び寄せ、あまり顔をさらしたくないためにねぐらに待機していたフレドとローザをテルマさんがもう一度転移させてくるのを待ち構えていたのだ。メイド姿の女性の前で震えている大の男というのは、自分を思い出してつらい。


「で、フレドの答を聞かせてもらおうか?」


 セリアさんはヨゼフと同じ役割をフレドがビルハイムで果たす代わりに、長きにわたる行方不明に合法的に終止符を打つことを提案していた。予定どおりといえる。


「わ、わたしなどがご期待に添えるとはとても……」


「それを判断するのはきみではなくわたしだと思うのだが?」


「は、はい……わかりました。つとめさせていただきます!!」


 最初からフレドにはほかの答は存在していなかった。満足した趣でセリアさんは視線をローザに移す。ローザが肩をビクッと震わせた。


「ローザについてはシャーリー殿下に話はついているんでしたっけ?」


 ぼくにくつろいだ雰囲気でセリアさんが尋ねた。


「それも含めて、ちょっと二人で話せますか?」


 頷いたセリアさんとともに、ぼくは別室に移動した。




「ローザの件以外にも、いくつか相談したい案件があります」


「シャーリー殿下との逢い引きでしたら、お力になりますけど? ローザの話を取り次げば、殿下のほうから話を切り出してくるでしょうし」


「ああ、いや、それもあるんですが……」


「なんと、それ以外にも!?」


 セリアさんは大げさに仰け反って驚きを表現して見せた。


「セリアさんはぼくを何だと思ってるんですか!?」


「ええと、野獣? 実は、こうしてフォーゲル男爵と二人きりで密室にいるのが不安で……」


「『透明の悪鬼』がなに言ってるんですか!? ぼくだって命は惜しいです!」


 セリアさん自身はとても美しい人だが、あの話を聞いてなお軽々にその気になる人はいないだろう。ぼくはかまわず本題に移る。とりあえず女王国の王族のドルニエ訪問のほうから片づけることにする。


「……さすがに冗談で流すわけにはいきませんね、それは。フォーゲル男爵が何者か、興味が湧いてきましたよ」


「それはまたいずれ機会があれば、ということでお願いします」


「フォーゲル男爵はどこまで責任を?」


「最終的には外務卿のエデル伯爵に任せることになりますが、よけいな思惑が入りこまないよう、ギリギリまで裏で詰める必要があります。いまの時点でこの話は国王陛下と宰相のクエンティン侯爵しか知らないはずです。そちらの方では、シャーリー殿下とブリギット殿下はぼくがこの話をドルニエに持って帰ったことはご存じです」


「わたしにそれを話した、その信頼には全力で応えましょう。ただ、その詰める作業の片方の担当が十五歳の男爵ですか……。意外と窓口が難しいですね。シャーリー殿下やブリギット殿下との関係も考える必要があるでしょうし、少し時間をください。それだけですか?」


「もうひとつあります」


 ギエルダニアのミュラー辺境伯に女王家と近い伝手となる誰かを紹介したい旨をぼくが伝えると、セリアさんの眼光が一段階鋭くなった。当然といえば当然だ。


「それをフォーゲル男爵がわたしに話す意味がわかりませんね」


 背景をもう少し詳しく説明しなければこれ以上聞く気はない、と言外に言っているわけだ。ぼくはこの件がギエルダニアの皇位継承がらみであることを伝えた。


「ぼくはいきがかり上、一方の皇子を担いでいる有力なギエルダニア貴族と親しい関係にあります。その線で出てきた話です」


「そもそもそこあたりから謎でしょう。人の器が年齢とは関係ないことはわかっていますが、それでも年月が必要なことは間違いなく存在するんですよ? 貴族になったばかりの、十五歳の男爵が、他国の皇位継承に関係し、他国の貴族から、継承の帰趨を左右する役割を任される。ありえないと思いませんか? 信じろというほうが無理があると思いませんか?」


 セリアさんの表情には一切の緩みがない。良好な関係を築いてはきても、これはこれ、それはそれという感じで疑問をぶつけてくるセリアさんはさすがである。ここで話がこのまま流れるようなら、逆に今後の成りゆきに信頼がおけない。


「仰ることはわかりますが、これ以上はセリアさん個人にお話しするのは難しいですね。たとえば……省略やよけいな補足なくシャナ殿下に伝わる保証があるなら話は別ですが……」


 暗にひとつの方策を提案してみる。ぼくの言わんとすることを察したらしいセリアさんは肩をすくめて見せた。


「女王宮にフォーゲル男爵を引き込むのにシャナ殿下の部屋の天井裏を使わせていただこうとは思っていましたし、今晩殿下と話されますか?」


 あの時の侍女はセリアさんではなかったはずだが、天井裏への転移の情報はちゃんと押さえているのか。テルマさんかシルドラがいないと使えないことも把握しているだろう。


「シルドラが一緒、ということになりますが?」


「フォーゲル男爵が信用している方であれば問題ありませんよ。わたしも同席すると思いますし」


 信用……というのか? シルドラは他言したりはしないだろうが、それは単に彼女が興味がないからだろう。まあ、いいとしよう。


「それではお願いします」



お読みいただいた方へ。心からの感謝を!

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