ポンコツ騎士団長セレア
「しかし信じられないですね〜」
久しぶりの長閑な時間。アイラもまったりベッドに腰掛ける。
「なにがだ?」
アイラのセリフは主語のないバカの言葉だった。
「あの軍勢をひとりで全滅させた人が昔は負けっぱなしだったなんて信じられないですよ〜ほんとなんですか?」
「ほんとだよ。相手の動きは見切れるんだが、俺の剣は色つきの丸いシールドみたいなのに阻まれて当たらないんだ。あれなんなんだろうな。」
「なんですかそれ?私はそんなの見えたことないですよ。」
俺は歩けるまで時間がかかるし、アイラは俺についてくるらしいからやることがないしそのことについて話すことにした。
でも全く分からない。唸っているとアホ騎士が来た。
「こんにちは!王国騎士セレア、失礼いたします。」
今日は鎧じゃなく私服で見舞いらしい。鎧に隠れてたがかなり胸がでかい。まぁ興味無いがな。
「ロストさん…胸ばっかり見て卑猥な人ですねっ!」
アイラはふんっ!と不機嫌になるが無視した。
「むむむ胸…わたしで……よければ」
「いや、求めてない。それより聞きたいことがある。そのでかい乳はしまえ。」
胸をはだけさせ強調していたが俺には興味無い。爆発しそうなほど赤面するセレアに1通り説明をした。
「それは…もしかしたら、ホントにもしかしたら魔眼や神眼の類かと思います。でも人間だと異例です。」
「どうやって使うんだ?」
セレアは簡潔にわかりやすく説明してくれた。どうやら目に魔力を集めるらしい。
「こうか?」
言われた通りにすると、目が熱くなっていく。
「うわぁ…目が黒い…」
「え、まじで?グロい?」
「結構エグイです…」
セレアも少し引いていた。
「そ、その感じだと魔眼の一種ですね。恐らく上位魔眼かと思われます。ステータスには出ませんので鑑定士に見てもらうしか……」
「なら丸いシールドは?」
「それは恐らく魔障壁ですね。火、水、風、土、の他に闇、光、雷の属性持ちは同じく属性持ちの攻撃しか届きません。それぞれの属性の反撃に合います。ちなみにロスト様の属性は?」
「えーと…闇かな。」
闇は珍しい。じつは闇属性はこの前発現したばかりだ。それを説明すると、「後天的例は珍しいですね」って言われた。
つまりあの頃の俺はあいつらより劣ってなんてなくて、魔力のせいだったわけだ。
「ちなみに魔力値はどれくらいですか?」
「1500だ。」
これは多いように見えてかなり少ない。その証拠にセレアもアイラもえ……ってなってる。
普通は少ない方でも10000はある。そして闇魔法はそこまで強くない。闇属性を付与する他に身体強化などが主だ。
「じゃあ3000を身体能力だけで圧倒したんですか?」
アイラが引き気味に聞いてきた。
「あぁ、それについてはスキルの要素が強い。誰かさんのせいで宿じゃなくて病院で説明することになったがな」
セレアがしょんぼりして泣き目になる。こいつはホントに騎士なのか。
「俺のスキル、イカれた悪鬼。こいつは身体機能を120%引き出す。だが傷つけない為にあるリミッターを外すから筋肉や骨は痛む。だが俺はひと月前に痛覚を失ったから御あつらえ向きってやつだ。もう一つが、殺人予告。対象を1人に絞る代わりにステータスが極大向上する。これはあのときは使用していない。今のところは以上だ。」
「なんですかそのスキル……」
「信じ難いスキルですね…」
「あ?お前ら何震えてんだ?」
「そりゃ震えますよ!強すぎますよ!私はホントに弱いのかと思ってたじゃないですか!」
まぁ分からなくもないが実に愚かだ。
「そもそも盗賊ぶち殺したの見てたろ。バカか。」
「あんなの火事場の馬鹿力だと思いますよ!」
「それ以上を意図的に引き出すのが俺のスキルだって言ってんだろ?頭沸いてんのか?」
「うわーほんとムカつく!この白髪!」
一連の流れに入れずあうあうするポンコツ騎士セレア。
「だがまぁそろそろリハビリしようかな。」
「早すぎますよ!まだ一週間しかたってないんですよ!」
「しょうがねぇだろ。毎日のように街の奴らが見舞いに来やがるし物も届く。おまけにセレアも毎日くる。早く退院しねーといかんだろ。」
「確かに休めてないですよね…」
「えっ、あたし来ないほうがいいの?アイラちゃん、そうなの?」
「えっ?」
セレア。ポンコツだとは思ってたが騎士キャラ作ってたとは思わなかった。
「だって女で騎士団長なんだから口調は固くしないとナメられちゃうの!しかたないんだもん!」
「あ、そうだ。お前、ステータス見せろ」
「いいけど…私来ないほうがいいの?ねえ?」
セレアの質問には無視してステータスを見るが、俺の基本ステータスの5分の1程度だ。レベルは2。
「なるほど。」
「ねえ?それより私いらない子なの?ロストさん?」
とりあえず今日はこれからの予定と闇魔法習得をしよう。
「うるせぇ。ポンコツ騎士は剣でも振ってろ。」
「ふぇぇぇぇぇ!!」
そして俺のデコピンにより、意識を失ったセレアは次の日は1日寝込んでいた。