〜1章〜狂人の誕生
この作品はなかなかダークなので苦手な人は読まないことをお勧めします。
僕の名前はロトワ!今はまだ10歳て弱いけれど将来は騎士団に入団して聖騎士になるんだ!
「ロトワ〜!ご飯だから修行は休憩して食べましょ!」
お母さんに呼ばれて家に帰ると、父様、お姉さん、お母さん、それと幼なじみのスィーレが食卓を囲んでいる。
父様は立派な聖騎士で、今日もお務めが終わり帰宅していた。お姉さんとお母さんは美人で街でも有名で、スィーレは昔モンスターに両親を殺されてから家に住んでいる。
これが我が家の日常。そうあの日まではーーー
僕が15歳。僕はまだまだ弱くて誰にも勝てない。悔しくて毎日泣きながら剣を振っていた。
そんな僕にスィーレは優しく慰め、励ましてくれる。
「ロトワ。あなたは弱くなんてないわ。本当に強いってことは優しいってことなの。あなたは納得出来ないでしょうけれど、いずれ分かる。だから今日も頑張ってね。」
「……ありがとう。スィーレ。」
僕はスィーレが好きだ。強くなったら告白しようと決めていた。
いつものように修行していると疲れて寝てしまっていたらしい。起きるとき街から異常と危険を伝える警笛が鳴り響いていた。
息を切らしようやく街に着くと業火に包まれ、モンスターが蹂躙していた。人の死体が多々転がっていて、それをモンスターが食い荒らす。
僕は吐き気を我慢して、家に向かう。どうか…神様がいるのなら。お願いします。無事でいてくれ!
家の前には父様がモンスターと対峙していた。あの父様が苦戦するとは、相当強いモンスターのようだ。
「父様っ!今行きます!」
「来るな!逃げろ!ロトワ!!」
グシャッ……
僕に意識を逸らした父様はモンスターに頭をもがれた。
「あ……」
「あああああああああああ!」
殺してやるっ……!
剣を構え、飛びかかる。だがーー
モンスターが振り返った時の尻尾の直撃を受け吹き飛ぶ。やばい。気が遠く……
「いてて…………!スィーレ!」
モンスターは居なくなっており、家に入れる。
「スィーレ!……え……?」
僕は目を疑った。頭が回らない。
家の中は血で汚れ、お母さん、お姉さん、スィーレは人間に犯されていた。
お母さんとお姉さんは既に命はなく、部屋は事後特有の匂いが充満している。
「貴様ら!離れろ!僕の家族から離れろぉぉぉぉ!」
僕は一人、二人と薙ぎ倒し、スィーレに手を伸ばす。スィーレは今から、という所だったらしい。
ガゴォ!
頭に強い衝撃が走る。その原因を見ると、街で一番強い、ギランドが木剣を振り切っていた。
「てめえはスィーレが犯されるところをその目に焼き付けろ!ヒャハハハハ!」
力が入らない僕を二人で押さえつけ、目をそらさないようにされる。
…僕は…何も出来ずスィーレが犯されるのをただ見ていたんだ。
スィーレは痛がり、泣き叫ぶが男共は特に気にすることもなく行為をやめようとはしない。
全員が、輪姦し終わり、ある男は僕を見下し、ある男は愉快そうに去っていった。
「ロトワ…。私を見ないで聞いて…」
僕は元からスィーレ。見ていられなかった。
「ロトワ。あなたはまっすぐ生きて。私のことなんて忘れて、あなたは私のヒーローなのだから。さよなら…私の好きな人。」
僕はスィーレに目を移すがスィーレの姿はなく、代わりに彼女の指輪が置いてあった。
指輪を拾い窓の外を見ると、地面に鮮血を散らし息を引き取ったスィーレ。
「…………。」
僕は静かにみんなを抱えて外に出て、家族の墓を作った。
「……父様。お母さん。お姉さん……。」
「スィーレ。」
「うあああああああああああああああああ!!!」
地面を殴りつけても、何も感じない。もうみんなはどこにもいないんだ。
慟哭。僕は声が出なくなるまで泣き叫び、自分の弱さを嘆いた。
何も出なくなると、不思議と足が動いた。街の外へ。
死のうとは思わない。だが、モンスターも、人間も、神も…何も信じない。僕は……俺は俺だけを信じる。
歩き続ける途中、川を見つける。顔を洗い、水で喉を潤す。
そして、川に映る俺は以前の俺とは違っていた。髪は元々の黒と白髪が混ざり、灰色に。
目は希望を見つめる昔とは違い、絶望を食い漁り死んでいる、という表現が正しい。
だが、俺はだから?としか思えなかった。
目的もなく歩き続けると、人間とモンスターが交戦してる。何も考えられなかったこれまでの数日間とは違い、心が疼いた。あぁ。わかった。これはーーー
殺意だ。
人間、モンスター、どっちも殺す!
俺のレベルは1。そもそもレベルはステータスと違って簡単に上がるものじゃなく、本人の進化だ。レベルが上がればステータスは格段に向上する。
しかし何年修行していてもレベルは1。そして、ステータスも高くない。むしろこの数日間はただ歩き続け、水しか体に入れてない。ステータスはさらに落ちている。
だが、関係ない。
「……。」
まず人間から殺す。地を駆け、背後から首を跳ねる。
そしてモンスター。こいつはウルフマンの上位種、ウェアウルフ。正攻法じゃ勝てない。
かなりの速度で突っ込んでくるウェアウルフ。そして右腕で俺に襲いかかる。
なんとか転がり躱した。はずが、腕を割かれていた。
ウェアウルフのスキル。飛爪。
ウェアウルフはこのスキルで、俺を傷つけた。
だが、痛みはない。
油断するウェアウルフに飛びかかり、剣と手刀で目を潰す。
そして吠えるウェアウルフを縦に両断した。
「ははっ…」
俺は俺の中にある何かが壊れて笑う。
「アハハハハハハハハ!」
それは、正義。愛。そして……優しさ。
「ッ!……スィーレ…。」
「スィーレ。君は言ったな。強さとは優しさだって。…でも優しさだけじゃ生きれない。優しさだけじゃ何も守れやしない。だから…ごめん。俺はーーー」
「優しさを捨てる。」
「その代わりに。」
今度は守り抜く。俺は俺の中に、記憶に残る君を二度と殺させない。全てを捨てたとしても。約束するよ。