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01:俺の始まり

こんにちは…寒くなってきましたね

 天下のおひざ元の城下町、【王都ローグ】

道はすべてが石畳に舗装され、下水まで通っているところから文明の発展度合いが高いことが伺える。

労働階級の人々が働く人々が住んでいる東部にある安いには訳のある宿屋から主人公の物語は始まる。

宿屋の一番安い屋根裏で主人公は眠っている。

名前をエドガー、昔は将来有望といわれた冒険者だったが馬鹿をやって休業…今では【落ちぶれエドガー】と冒険者に揶揄されてギルドから姿を消していた。

エドガーは手に持ったクシャクシャの手紙を懐に入れなおすと革靴を履き直し、もうくたびれたマントを羽織って腰にベルトをして剣を指す。

見てくれは冒険者でも、いま王都に在籍する冒険者に比べればすごい見劣りするだろう。

そして、8年後の今日、彼はこの世界に戻ってこようとする。

彼の物語は王都ギルドの門をたたいたところから始まる。


―――――――

 俺が王都のギルドの門を叩くとそこは外よりもにぎやかしく、騒然としていた。

流浪の楽師みたいな奴が冒険者の要望に応えて陽気というよりは下品ともいえる内容な歌とバイオリンを弾きながら歌い、昼間から併設の酒場で陽気に酒を飲む奴もいる。

そして以来の張られた掲示板の前ではパーティを組んでいるやつだろう4,5人の若い男女が「利益が…」とか話し合っているように見える。

入り口近くの冒険者が俺の顔を見たら、その見てくれから鼻で笑ったようにしてすぐに近くの女性冒険者へと戻す。

俺はその姿に少し安心しながらギルドの受付を見る。

受付に顔なじみがいるかと探してみると、見知った顔の女性が一人いた。

長い髪を後ろ手に纏めて大きな瞳をキョロキョロと動かしまわす彼女は八年前と姿が変わらず、今の自分と比べて変わらない彼女にうらやましい気持ちも感じる。

そして彼女のところの列が消えるのを待って彼女の元へと歩みを進めていく。

彼女は一息ついて書類の処理を始めようとしたところで影が刺したのに客が来たと気づいて俺の顔を見る。


「初めまして、この王都の冒険者へとようこそ。私はここの受付を担当しているレミリアと申します。今日はどの依頼の受注、発行どちらの要望でお伺いになられました?」


当たり障りない定型文に「8年前だ覚えてはないか」とひとりごちり、苦笑いを浮かべて要望を伝える。


「いや、今日は冒険者カードの2級証の発行依頼と師匠からの郵便物をこちらに持ってきたんだ。」

「えっ!…2級証ですか?」


その瞬間彼女の大きな目が俺の顔を見ながら一層大きくなる。

俺の周りにいた人間も聞こえたのかその言葉に驚く……それもそのはず、冒険者の2級証とは上級冒険者でも指折りの実力者に与えられる位だ、王都のギルドで活躍したことない俺のような奴では「なんでこいつが?」なんて気持ちなのだろう。


「2級冒険者になるにはほかの2級冒険者以上の推薦状が3枚必要ですが…そのそちらの提示をよろしいでしょうか?」

「わかりました」


そういって懐にしまった封筒を彼女に渡すとその場で開けて推薦状の名前を見て目を見開く。

「しょ…少々お待ちください」という言葉とともに裏に回っていく彼女を見送りながら後ろの酒場に目を回す。

先ほどまでと違い、酒場にいた人々までこちらに視線を向けて先ほどまでのまるで道端の石のようには扱われなくなったことに少しの不安と優越感がわいてくる。

視線にどうしようか考えていると酒場の椅子に座った一人の冒険者が話しかけてくる。

短く刈り上げた白い髪と日に焼けて小麦色の肌…何よりも体にあるいくつもの傷が、その男を熟練者と物語る。

「おい…分かってんのか?」

たった一言のドスの聞いた言葉で俺をにらみつけると俺じゃなくてもすくみそうな気迫がある、すこしひきつった笑顔で「…勿論」と答えると打って変わって陽気な笑顔になる。

「おい!こいつが昇進祝いに今日の酒場はおごってくれるそうだ!お前らのみまくれー!」

その言葉を引き金に酒場が一層盛り上がる……ほっと胸をなでおろすと水を打った静けさが歓喜と歓声に変わる。

…別に義務でもないが冒険者はいいことがあると酒場の代金を立て替える風習がある、俺も若いころ、金が払えないときはこういうところで救われたことが何度もあったのであの言葉の意味がすぐに分かった。

そして、8年前と変わらない景色に「変わらないな」とつぶやいて郷愁を感じていると受付にレミリアが戻ってくる。

息を切らしていたのか深い深呼吸で整えるとこちらを見直して受付用の入り口へと向かう。


「お、お待たせしました!……それで、申し訳ありませんがギルドマスターがあなたに会いたいそうです。さすがにあの方々の推薦状は初めて見ましたので当然かもしれません。」

「わかりましたよ、俺も師匠からギルドマスターに渡しておくよう言われたものもありますから」


そういって彼女についていくように、ギルドの事務所の中に入っていくと彼女はふと自分の失態を思い出したように頭を押さえる。


「申し訳ありません…あまりの事態に名前を聞くのを忘れていました……申し訳ありませんがお名前を教えていただいてもいいでしょうか?」


そういって額を恥ずかしそうに撫でる癖を見て彼女が本当に変わってないと思い戻ってきたという実感が少し芽生えた。


「ああ、言わなかった俺も悪かったよ。俺の名前はエドガー、二つ名もちで【落ちぶれエドガー】って言います」


そういうとハトが豆鉄砲を食らったような顔をして口をパクパクさせる彼女に笑いたくなる。

そして俺を指さした手がわなわなと震えているのがわかる。


「うそ…エディ!?」

本当に驚いていたのか声が大きくてほかの職員が一斉に振り向く。

それに、少し恥ずかしそうにしている彼女を笑いながらおれはしてやったりという顔をして笑って見せる。


「そうさ、俺が幼馴染のエドガーだよ」


そういってレミリアの額を小突くと…少ししてから口をきゅっと結んで瞳に涙をため始める。

何も言わずに出て行った俺にたくさん言いたいことがあるんだろう…それが言葉になって出てこなくて泣きそうなのを我慢できない感じで本当に昔と変わらない彼女に幸せを感じる。


「……どこ」

「ん?」

「どこいってたのよ!馬鹿エディ!」


そういって振り出されたサウスポーは俺の右ほほを的確にとらえてそのまま錐もみを決めながら酒場へと吹き飛ばされる。

俺はその状態にに昔のへまを思い出しながら地面へと顔をこすりつけながら無理やり起こして頬を押さえながらレミリアのほうを振り向く。

彼女の表情は変わらずむしろ鼻息まで加わって必死にこらえているっていうのがこっちに伝わってくる。

その姿にやっと戻ってきたと実感して二カッと笑って「ただいま!」とレミリアに言うと

彼女はその言葉にこらえきれずついに泣き出した。


「知らない!」


そういってギルドから彼女が出ていくのを見ながらおれは一人置いてかれた状況にどうしようかと悩んでいた。


そんな情けなくも格好つけた気障っぽいこの始まりが俺の再出発の始まりだった。


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