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S・G『日の丸弁当』(シュール・ギャグ)

「もしもし、母さん?」

「ん? どうしたのよこんなに時間に」

「今昼休みなんだけどさ」

「ダメじゃない学校で電話なんか掛けちゃ、スマホ没収されちゃうわよ」

「だってさ……」

「だってじゃないの! 急用じゃない限り使っちゃいけないって母さん保護者会の時先生と約束したんだからね」

「先生には許可とってあるよ、急用なの!」

「あら、そうなの? なら仕方ないわね。で、何の用よ」

「母さん! 弁当に入ってた赤いオカズ……あれってなんなの?」

「ああ、あれ! 母さんすっかり忘れてたわ」

「忘れてたとかじゃなくて! なんなんだよ、硬くて食べられやしないじゃないか!」

「はははは、硬いに決まってるわよ」

「決まってるとかオカしいだろ! なんでそんなものいれるんだよ」

「だって、アンタ日の丸弁当はイヤだって散々非難してたじゃないの」

「当たり前だろ! 毎日毎日フタを開ければ日の丸なんだから、クラス中のみんなから馬鹿にされてるんだからな! 恥ずかしくて仕方ないんだぞ」

「良かったじゃない、今日から日の丸弁当じゃなくなったんだし」

「どこがだよ! 白く詰められたご飯の真ん中に謎の赤い塊が乗ってるだけって! アレどっからどう見ても日の丸弁当だからな」

「……でも、中央に乗せたの梅干しじゃなかったのよ」

「梅干しは重点じゃないから、おんなじことじゃないか!」

「どうしてよ。見た目は確かに日の丸かもしれないけど、これでも母さん努力したんだから」

「無駄な努力だなっ! 見た目が日の丸って時点で日の丸弁当確定だし……第一なんだよ、この硬ってーの……ぜんぜん噛めやしないから」

「だからそれはオカズじゃないっておほほほほ」

「笑ってんじゃねえよ」

「はっ。でも噛んだりしたら危ないわ、今すぐやめなさい」

「はっ?」

「危険だから」

「どういうことだよ」

「誤って押してしまったら危ないじゃないのよ」

「押すってなんだよ! 意味わかんねー。しかし硬ってー!」

「ボタンよ」

「は~?」

「だからボタンだって」

「この塊が?」

「そうよ」

「こんなデッカいボタンなんてあるわけないだろ」

「あるんだから仕方がないじゃない」

「どんな服だよ! こんなデッカいの付けるって……やっぱ無理だし」

「そのボタンじゃないわ」

「はっ? なんだぞりゃ、ますます意味分かんねえ! そもそもボタンを梅干しとチェンジするとかどういう神経してんだよ」

「失礼な子ね! 母さんがどれほどの苦労で手に入れたと思ってるのよ」

「知らねえよ! 無駄な努力だよ」

「酷い……お腹を痛めて産んだ子がまさかそんな暴言吐くなんて……信じられないわ」

「これのどこが暴言だよ!」

「母さんの努力を言いくるめようったって無理よ」

「はあ~、うるせえな! 見た目梅干しみたいな食えない塊乗せる努力とかしらねーし」

「許せないわ……きっとアンタは後悔するはずよ、母さんの努力の結晶をコケにするなんて」

「コッチのセリフだよ、変なもん弁当に詰めやがって!」

「だって赤いものっていったらソレしかなかったんだから仕方ないじゃないの」

「確信犯日の丸だな! 赤くないを希望だよ! ボタンとか云ってたけど本当はなんなのコレ?」

「え……ボタンよ」

「ウソつけ!」

「ボタンだってば……あれよ、核ミサイルの赤いボタン」

「はっ!」

「だから、ソレを押したら世界中に核ミサイルが落っこちてみんな死んじゃうボタンなの!」

「……なにそれ。なんでそんなもん俺の弁当箱に入ってんだよ」

「それは……母さんが入れたからよ」

「わかってるよ! なんでそんなもの母さんが持ってるんだよ! しかも核ミサイルのボタンで日の丸弁当とか頭オカシいだろが!」

「えっ……母さんそれが普通だと思ってたけど」

「病院行ってこい! 脳みそのほうだぞ」

「どうしてよ。梅干し切らしてたから核ミサイルのボタンで代用しただけじゃないの」

「発想からして異常者!」

「でもゴメンね。急いで作ったから『押すな』の貼り紙するの忘れてたのよ」

「警告が貼られた弁当ってどういう弁当だよ」

「押してないわよね」

「押すわけないだろが! みんな死んじまうだろ」

「そうよ、アンタ歴史上最大の犯罪者になっちゃうわよ」

「うるさいよ! 母さんこそ主犯だからな、コッチは巻き込まれただけだし」

「なに逃れようと必死になってんのよ、もう知ってしまった時点で主犯の役はアンタに移行してるから」

「そんなもの弁当に入れんなや!」

「まあ安心なさい。裁く側もなくなっちゃうわ」

「秩序自体をぶっ壊して罪悪感消すとか狂気の沙汰じゃねえか」

「でも押さないでよね、母さん死にたくないから」

「じゃあ入れなきゃ良かったんじゃねえのか」

「だって梅干し切らしてたから」

「核ミサイルなんかと天秤にかけるな! だめだこりゃ頭オカシいよ」

「酷いわ。こっちは親切で入れてあげただけなのに」

「なんちゅう親切だよ! 発想がカルト教団」

「忌々しい息子ね! アンタなんか核ミサイルで滅ぼされるといいわ!」

「上等じゃねえか、そっちも道連れだけどな」

「はあ? 母さん核シェルターで通話中だけど……地下30階の」

「抜け駆けもいいとこだな! さては息子滅ぼす算段だったろ」

「そういう訳じゃないけど一応念のため入ってたの」

「は~? ふざけんなよ」

「まあいいじゃない、押さなきゃいいのよ」

「おい田村、その梅干しの俺にくれよ」

「あっ、鬼丸! ダメだってそれ梅干しじゃないから」

「は~ん? 俺に逆らうとかいい度胸じゃねえかよ」

「本当にダメだって、それ押しちゃったらみんな死んじゃうから」

「なにキチガイみたいなこといってんだよ、よこせよ」

「ダメだ! 世界を敵に回すことはできない、だから梅干しみたいなこの赤いヤツは俺が守る」

「なにきれいごとみたいなセリフ言ってるんだよ、たかが梅干しくらいで」

「これは梅干しじゃない! もしそうだとしても単なる梅干しじゃない」

「ますますキチガイか!」

「キチガイなんてものじゃない、世界は滅びるのだから」

「お前頭大丈夫か? ヒーローじゃねえんだぞ」

「俺はヒーローじゃないよ、だけど世界が滅びるのを阻止することならできる!」

「は~? やっぱヒーロー気取ってんじゃねえか、頭来た、やってやろうじゃねえか」

「絶対に世界は守る! 鬼丸なんかに滅ぼさせはしない」

「うるせー! がぶっ」

「プツッ…………。途切れたわ…………、滅ぼんじゃったわね、世界」

ボク政治とか一切興味ないんで現実的ないざこざとは何一つ絡めたつもりないですよ。

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