S・S 『危機』(シュール・シリアスギャグ)
はいはい。3枚目は直ぐに上がりました。生焼けピッツァでなければ良いですが。
「カムチャツカ半島って十回言ってみ?」
「カムチャツカ半島×10・・・ふぅ~難しかった~」
「今ズルしたでしょ?もう十回、ズルはいかんよ」
「へえ~兵役だ~!キミは鬼軍曹ってとこだね?」
「コラコラ会話をミスリードしなさんな。ちゃんと言いなさい」
「はいはい・・・カムチャツカ半島カムチャツカ・・・カムチャツカ半島・・・はい、十回言ったよ」
「なんかタイムスリップした気がするのは何故?まあいいよ、じゃあ今日の講座はお仕舞い」
「ねえ?これってなんの授業?」
「そう結果を急ぎなさんなって。そのうちわかるから」
「てか高くない?月これで3万円だよ?」
「アンタは口の聞き方から教育しなきゃなんないらしいね?次の回は目上の人に対する言葉遣いの授業に決定ね?」
「なんでだよ!親指検定って訳わかんないけど簡単そうだから選んだんだけどさあ、これ一応会社の方針だから無理やり受けてるんだけどもう役に立たなそうだし次から他のに移りますわ」
「ダメだよ!挫折する気か?」
「これが挫折というのなら不本意だけれども挫折致しましょう、別にいいよ、この程度でヘコまない自信あるしさ」
「それが目上の人に対する態度か!」
「アンタね・・・先生って立場なのかもしれないけどね、この半年で一度も尊敬出来るエピソードなんてなかったし、俺のなかではアンタが目上だって意識ありませんから・・・」
「反抗的な野郎だ」
「何とでも言え!もう次回から来ねえし」
「ふっ」
「何だよ、何がおかしい?」
「いや、別に・・・いやね、君ってさあ、この講座が終わるたび毎回このクダリ繰り返してない?もうパターンとしては使い古されてるって話よ・・・多分、いや、絶対次回も来るでしょ、ノコノコと・・・」
「絶対来ないね。これで最後だから」
「いい~や、絶対来る」
「来ない!」
「来る・・・って、このパターンこそお決まりのパターンだし!」
「ちぇ、でも今回こそ最後だし。せいぜいお布団の中でうなされな!」
「誰が不眠症だ!」
「もう帰るからな。俺だって暇じゃないんだ」
「へぇ~。暇じゃない人がこの講座に皆勤賞ってのは皮肉なもんだね?」
「うるせえよ。てかアンタ今の十分自虐だからな」
「いいよいいよ、とっくにその覚悟は出来てるし」
「どの覚悟だよ、そんな覚悟なんかするんじゃねえったら、覚悟の無駄遣いなんかするな!」
「別にヒトがどんな覚悟使おうが自由だろうが。アンタに束縛される筋合いはないんだよ」
「ヒトをストーカーか恋人みたいに言ってんじゃねえ、キモイよアンタ・・・」
「ふん。いいじゃん」
「よかねーよ。アンタなんなわけ?深い関係でも気取ってんのかよ」
「別に・・・コッチは遊びだし」
「おええ。遊びでもゴメンだし」
「失礼な奴!遊ばれてんのにそんな口聞いてどうする?」
「遊ばれてんのはソッチのほうだろ?」
「誰が。一回鏡で自分の顔見てみたほうがいいよ、じっくり」
「はいはい鏡ね、うん、カッコイイ。男前のゾウさんなのです」
「おえええ、ナルシスト~」
「うぜえ、事実だし」
「てかアンタゾウさんのくせにどうして講座なんかに来てる?」
「根本的な問い・・・今更か!別にいいじゃんか、生きとし生けるものの権利じゃボケえ」
「ひゃー、恫喝する気?ケーサツ呼ぶよ」
「うるせ~呼べよケーサツ・・・日本のケーサツなんてパオーンじゃ」
「象が喋んなや!」
「うへ~~差別的~、アンタってホントに封鎖的な人間!」
「切れた・・・訴えるよアンタ」
「こっちのセリフじゃボケえ」
「もうキリが無い、ホントにケーサツ呼んで事を丸く収めるしかなさそうだ」
「それって決め台詞のつもりかい?ビビってないからね、コッチはそんな脅しには乗らないからさ」
「誰が脅しだ!もう110番は済ませてあるよ」
「え・・・」
「何だよ、ビビってんじゃねえか」
「うるせえ!マジでケーサツ呼んだんじゃないだろうな?」
「だからマジだって」
「テ・・・テメエ」
「え?馬鹿?そのくらいでビビってんの?」
「い、いや・・・」
「ビビってんだやっぱり」
「ビビってねえし」
「来るよ?」
「何がだよ!」
「だからもうすぐ来るよ?ケーサツ来るからね・・・もう大ピンチだよね~」
「い、いや。実を言うと」
「やっぱビビってんじゃん」
「そりゃそうだろが!だってコッチは指名手配犯だからね」
「嘘つけ~!指名手配犯がゾウさんって、そんな直ぐ見つかる犯人、そもそも指名手配にする必要もない」
「いや、だからこればっかりはマジなんだってば」
「・・・マジっぽいな」
「だからさっきから言ってるじゃねえかよ!」
「で、でも・・・」
「・・・」
「・・・マジなの?」
「だからマジだって、何回言わせる気だよ?」
「いや・・・ね。だって見たことないもんゾウさんの指名手配犯なんて」
「いやいや、アンタ新聞読まないでしょ?」
「うん、読まないよ」
「ていうかテレビのニュースすら観てないでしょ?」
「う、う~ん・・・スポーツニュースなら見てるけど」
「これだからな・・・俺ってバンバン流されてるよ、報道番組で」
「嘘・・・」
「そんな回りくどい嘘なんてつくかよ。最近の若いもんはこれだからイカン」
「いやアンタより年上だけどね?」
「だからか。俺色んな講座行ったけどこんなに危機感なく通い続けられた講座は初めてだったよ。だっていつも初回か次の回で勘づかれて通報されるから逃げる以外ない始末だし」
「ガチの指名手配犯じゃ?」
「だから逃げ足だけは早いんだって」
「案の定今回も通報された訳だしね?」
「いや、今回は事故も含まれるけどね?」
「アンタそろそろ逃げないとマズいんじゃない?来るよ、警察」
「何今度は心配してくれてる訳?アンタ何?不安定なんじゃないの、情緒、もしかして」
「いやいや、そうじゃないけどもさあ、別にさ、今回、アンタを指名手配犯として通報した訳じゃないしね?」
「知るか!」
「だから・・・今のうち、お逃げなさい?」
「命令すんな!」
「強情か!状況考えろよ」
「心配される筋合いなんてねえっつーの!第一コッチは凶悪犯罪をくぐり抜けてきた超凶悪な指名手配犯だっつーの!下手な情けはかけんな!」
「ヒトの情けをないがしろにするなんていいことないぞこの先」
「第一アンタが通報しなきゃ警察なんて来なかったっつーの!もういい、アンタが入れ!」
「はっ?」
「だから、俺の代わりにアンタが刑務所入れって!」
「なんでだよ、そんな法律はねーだろ」
「法律とか言ってんじゃねえぞ、コッチは既にそんなモン通用しない立場になってひさしいっつーの!」
「自虐か・・・」
「いや事実だし」
「もうそんな理不尽言われるくらいなら、やっぱ予定通りアンタが入れよ」
「なんで?本来の筋書きならば別に指名手配犯として逮捕される予定はなかった筈だよね?別に警察呼ぶからってこの場を丸く収めようとして呼んだだけの筈だよね?だったら別に俺が逮捕されて刑務所に入るなんて必要はなからないじゃんよ」
「いやいや、どっちにしろアンタは重罪を犯してる訳だから、入りなさいよ、予定通りに」
「いや、絶対入らないね、とぼけるから、とぼけ倒すから。言っとくけどアンタも必死で芝居で協力してもらわなきゃ絶対逃げきれないからね、これは絶対負けられない試合だよ」
「スポーツマンシップに反する奴の言っていい言葉か!びっくりするわ、最近の若もんは」
「パオーンだ!そんな若くねーし・・・それにぞうさんだし」
「いやゾウさんは関係ないでしょ、この期に及んで」
「もうアンタだってここまでくりゃ共犯者だからな、もう俺を逃さない限りアンタだって一緒に御用だぜ」
「馬鹿か!御用なんてアンタだけで十分だろ!」
「いや、絶対共犯者だ、むしろ主犯だ」
「なんの罪だよ!意味わかんないし。別に罪を犯したのアンタだけなんだからアンタが行けばいいだけでしょ?」
「そんな軽々と・・・アンタ豚箱の辛さ知らねえな?」
「知らんわ!コッチは前科持ちじゃねえんだよ、一緒にすんな!」
「想像してみろよ?ゾウさんが豚箱に入ってる図をよ。どんだけ惨めなものか」
「いやいや罪を償うのが犯罪者の務めだよ、一切の同情の余地はない」
「テメエ・・・やっぱ殺すぞ!」
「怖っ。警察さん、早く来て~~」
「うるせえ、わめくんじゃねえ、もうこうなったらアンタを殺してでも俺助かってやるからな」
「極悪人!」
「おうおう何とでも言え、俺は指名手配を受けるほどの極悪人さ。ゾウさんの顔なんてカモフラージュにすぎん」
「見栄張ってんじゃねえ!言っとくがそれはアンタの素顔だ」
「ゾウさんで何が悪い!」
「被害妄想もいいとこだ。そのマイナス思考の積み重なりが結局は生まれなくても良かった数多くの罪を生んでしまう皮肉な運命があったということだろうな・・・」
「ゾウさんは悪くない!」
「いや、アンタというゾウさんに限っては悪いよ」
「ゾウさんは警察よりも偉いんだ」
「なんちゅう理屈だ」
「むしろゾウさんこそ警察だ。もうこうなったら警察が駆けつけたらこっちの方こそ逮捕してやる」
「誰をだよ?」
「誰って・・・無論、警察を、じゃねえか!」
「あ~~!やっぱり極悪人の考える事は常人には理解不能だ」
「パオ~~ン!誰が極悪人だ、殺すぞテメエ」
「ひぇ~~・・・怖っ」
「もう我慢ならん。殺してやる!せめて口の聞き方くらい覚えたらどうだ?コッチは極悪人なんかじゃねえ」
「・・・?」
「極悪人じゃなくて、正確には極悪ぞうさんだ」
「そんなくらいで怒ってたのね。もう理解できないよ。好きにして。殺してちょうだいな?」
「パオ~~ン!パオ~~ン!」
「うっ・・・」
「ムシャムシャ・・・またつまらん罪を犯してしまった」」
またワカランものを書いてしまった…