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B・G『職務質問』(ベタ・ギャグ)

一日半遅れの一枚です。

お待たせして申し訳ございません。

深夜の道端で。


「アンタ、ちょっといいか?」


「・・・」


「不審だな?アンタ、ここで何やってる?」


「ん?人を待ってんだよ」


「待ってるったってこんなど深夜に、増々怪しいじゃないか!」


小汚い男だった。

すると奥の方から・・・


「はあっはあっ・・・お待たせしました。ん?この人は、だれ?」


「知らねえ、それよりブツは?」


「ブブ、ブツッ!」


「はいはい、ブツね?」


サッ。


「なんちゅうスピード!」


手慣れたスピードでもうひとりの男が小汚い男のほうへと何か棒のようなものを渡した。


「ブツって言ったな!堂々と・・・聞いて驚くな、実は、こういうものだ」


サッ。

二人に割って入る男は二人へと手帳を見せた。

手慣れたスピード、こちらも負けていない。

そう、彼はケーサツだった。


「ふ~ん・・・それより早く、お願いしますよ」


「ああ、そうだな」


「おいおい流してもらっちゃ困るよ、俺、ケーサツだよ?ケ・イ・サ・ツ」


「で?」


「何の用だよ」


「だ~か~ら~。アンタ、今この男に何を渡した?」


「え?アンタケーサツだからって聞いていいことと悪いことがあるだろ!」


「別に答えてもいいんじゃないか?」


「いや、ダメですダメです。だってプライベートですもん、バラされるとかありえないし」


「まあ答える必要もないよな」


「そうですよ~気にしちゃうじゃないですか~」


「いやいや、答えてよね!こっちは職務質問なんだから・・・あんたら深夜の路上で堂々とブツとか渡して、限りなくクロなんだよ!しかもケーサツ見てる前だから!」


「え?何がですか!」


「いいよ無視しろ、無視無視・・・」


「だからダメだってば!アンタらねー、はっきり言うけど麻薬の売買だろ!!」


「あははははは」


「何がオカシイ!」


「だってさあ、おまわりさん、僕はこの人にペンを渡しただけですよ」


「お前答えてんじゃん、良かったのかよ?」


「ああーー、思わず喋っちゃったじゃないか!卑怯だよ、まるで脅迫じゃないか!」


「今のは違うぞ多分」


「ペンって!それはそれで怪しいだろ。お前、ペンの中に麻薬忍ばせてるんじゃねえだろうな!」


「だはははは」


「だから何がおかしいんだ!」


「陰謀論かよ、まったくどういうアタマしてるんだか」


「違うってのか!」


「違うに決まってるじゃないか、渡したのはホントにペンだよ、ただのペンさ。今コンビニで買って来たんだから、ほらね?レシートだってちゃんとあるし」


「ちょっと見してみろ!」


「ねっ?時間もピッタリじゃん」


「・・・。ちょっと聞きたいことが増えたんだが」


「おいおい待ってくれよメーワクだよ!なんだよ、一応質問までは許可するよ」


「時間がピッタリだって言ったけどさ、レシートの時刻、もう一時間前のものになるぜ」


「あんたおまわりさんだろうが!そんなことも知らないで恥ずかしくないのかよ」


「何がだよ」


「いやいや、この近くのコンビニっつったら、一番近くてこっから3キロ先だよ?」


「それがどうしたんだ!」


「だから!こっから往復したら片道30分の計算としてやっぱり一時間くらいはかかるんだって言ってるの!」


「興奮すんなって、おまわりさんもお前が往復してることは知らないから・・・」


「あ、そうだった」


「あの・・・なんなわけ?アンタ、この男にペンを渡すためにわざわざ往復一時間も掛けてコンビニに行き来したってのか?」


「そうだけど?」


「とぼけてんじゃないよ、だから何のためにそんなことをする?往復一時間もあるいてたら相当なエネルギーを消費するんじゃないのか!」


「別にあんたにカロリーの心配をされる必要はないね!ったくケーサツってのはお節介甚だしいよ」


「まあまあ、お節介なのはこのおまわりさんだけかもしんないし、ケーサツの悪口はよそうじゃないか」


「俺の悪口ならばっちり聞いたけどね!」


「もういいよね?僕たち、全然怪しいわけではありませんから・・・」


「いや怪しいよ、めちゃくちゃ」


「う~ん、どうしてだろうな?」


「アンタが一番怪しいし!何っ?小汚い格好で、しかもこんなど深夜に」


「ど深夜うんぬんは関係ねえ!」


「いやいやあるけど!夜、しかもその時刻がどんどん深まっていけば、俺たちケーサツも犯罪のニオイを自ずと嗅がずにはいられなくなる」


ぷ~ん…。

それより小汚い男の匂いがしていた。


「野生のハイエナみたいだな・・・」


「何とでも言えよ!だけどな、俺たちはその匂いを嗅ぎ回ってなんぼの商売なんだよ。必要とあらばハイエナでもなんでもならあ」


「真剣にやってるんだな?いい心がけだぜ」


「そうだそうだ、ようやく理解したようだな」


「でも残念なことにハズレもいいトコだよね?」


「ああマッタク、真剣さがむしろ滑稽に思えてくるぜ」


「何なの?馬鹿にしてんじゃねえ!国家権力だぞコッチはよう」


「へえへえ・・・我らは自由な民」


「そうですよ、僕だって一般市民として横暴な権力に屈しませんからね」


「吹っ掛けて来てんのむしろアンタらだからね?もういいよ、身分を証明するものがあったらそれでいい、事務的に済ましてやるから」


「う~ん・・・僕は単なる学生だしなあ・・・」


「なら学生証はっ!!」


「・・・無くさないように引き出しに大事に保管してますから」


「そういうもんはいつも持っとけ!大事に仕方が間違ってんだよ。学生ならスクーターくらいは乗ってるだろ?免許証はないのか!」


「・・・。アンタ馬鹿ですか?そんなものあるなら往復一時間も掛けて歩いたりしないでしょうよ…」


「墓穴を掘りやがって!」


「ウルサイウルサイ!もう若モンの方はいいよ、アンタはどうなんだ?いかにも浮浪者ってナリだが、何か証明するもんはないのか!」


「トコトン失礼だな・・・」


サッ!

小汚い男は差し出した。


「自由な民じゃなかったのっ??ばっちり国の証明書差し出してんじゃねえかよ・・・」


免許証。


「悪いか?」


「いや、お陰ですんなり行きそうだ」


「感謝しろよ、ったく・・・」


「そうだそうだ!」


「この程度のことで感謝しなきゃいけない感謝ってあったの!!・・・まあいい、さっさと済ましちまうよ・・・」


ケーサツは薄暗いなかライトを当ててじっくり読む・・・・・・


「!」


ケーサツは小汚い男をじっと見詰めていく・・・上から下までを・・・・・・


「じろじろ見てんじゃねえ!ようやくなにか感じるもんがあったみたいだな」


「遅すぎるくらいだねっ!ケーサツのクセして非常識ったらないよね」


「・・・てか、アンタ、名前 みやび堺人さかひとってなてるけど・・・もしかして本人じゃないよね!」


「ああ、本人だよ!」


「ようやく気づいたか・・・」


「・・・まさか・・・。『裏返しだ!』でお馴染みの実力派俳優・・・」


「今まで気づかないなんてどんだけ無能なわけ?超有名人だよね?ケーサツ信じられないわ・・・」


「まあいいじゃないか、無能なのはこの人だけなのかもしれないし・・・ケーサツの悪口は良くないから・・・」


「俺の悪口だってケーサツの悪口になるからねっ!!・・・それにしても・・・アンタみたいな有名人が、どうしてこんな薄汚い格好してこんなところに立ってるわけ?」


「別にプライベートなんだから何をやったって関係ないだろ!」


「・・・しかし・・・アンタは社会的地位を築いた人なんだから、もう少し立場を考えないと・・・」


「別に俺だって最初から小汚い格好をしてるんじゃないからなっ!!」


「・・・どういうことだ、さっぱりわからんぞ」


「実を言うと、僕のせいなんだ。雅さんをお見かけして、大ファンだったから感激しちゃって、つい、声をかけてしまって・・・」


「そんなこと誰だってやるだろ」


「いや。ただタイミングの問題だね?僕、咄嗟にサインをお願いしたんだ。僕は路上の絵かきで、サイン色紙に似顔絵を書いたりしてんだよ、それで、サイン色紙とサインペンだけは大量に持っていて・・・」


「いやいやさっぱりわからんから。ならばむしろスムーズに行くだろうよ」


「このひとはタイミングの問題だって言ってたけど・・・まあそれは、俺の方の問題でもあるよね?」


「いいえっ、雅さんは全然悪くありませんよ!ケーサツの方、こういう事情ですよ。僕が雅さんにサインをおねだりしたタイミングが悪かったんだ」


「だからタイミングってどういう事だよ!」


「ええ。僕がサインをおねだりした瞬間、雅さんは長年頭の中に描き続けていたサインを、偶然思いつかれました」


「えっ?」


「そのサインってのは、実は世界一長いサインなのさ」


ケーサツは小汚くなった雅を更に不審な視線で見詰めてしまう・・・


「何?そのタイミング・・・」


「だから、書いても書いても終わんなくて・・・」


「途中でやめちまえよ!それで、どれくらい書き続けてんの??」


「・・・かれこれ二ヶ月くらいにはなるかな・・・」


「二ヶ月!!」


「一端やり始めたんだし、途中で辞めるのも失礼と思って」


「いやいやこんだけ待たせてる方が失礼だろうが!」


「いいの!こんなチャンス僕だけかもしれないし・・・世界一長いサインをたまたま思いついてくださるなんて・・・僕は、出来上がったサインを家宝として持っておきたいんだよ、だからずっと待つつもりだから!」


「お前ら馬鹿か!そんで、雅さん、2ヶ月もこんなところにいて大丈夫なわけ?」


「丁度オフシーズンだったから・・・」


「新婚だっただろ!奥さんは!」


「もう連絡は取ってある、仕事で海外に行くと言ってるからまだ問題はない」


「あとからでっかい『しっぺ返し』くらうだろうけどね??」


「でも光栄ですよ、堺人さん、僕何かに・・・」


「書き出したら止まらないから不思議だよ・・・」


「それでアンタがペンや色紙の運び役となってるのか?」


「そうだよ、だから僕もこの方も怪しいブツを取引してるわけじゃないからな!」


「ブツより怪しいのはアンタらの方だ!第一、こんな外れの道端で、不便じゃないのか!書くのが止まらないのは仕方がないとして、もう少し便利のいいところで書き続けた方がマシなんじゃないのか?」


「どこの世界に長距離歩きながらサイン書く芸能人がいるんだよ?」


「そうだそうだ!」


「知るかよ!二ヶ月間リアルでサイン書いてる方がよほど珍しいわ!ギネスへの挑戦じゃないんだぞ!」


「いいんだよ、これで。第一人ごみの多い場所でずっとこんなこと出来るわけないだろ!それにすぐに気づかれて大変なことになっちまうわ!」


「・・・お言葉だけど今のアンタには誰ひとり気づかないと思うぞ・・・」


「失礼な!どっからどう見ても雅さんじゃないか!」


「そりゃアンタの目が慣れすぎなんだって・・・ところでサイン、いつまで書き続けんだよ??」


「さて。ひとつ言えることは桁数に換算すればπより長いということ・・・」


「πなんて割り切れる数字じゃないんだよ!すなわち無限んだからな・・・」


サラサラサラサラ・・・堺人は俊敏な手つきで枚数を重ねていった・・・


「俺のサインは言うなれば永遠だ・・・永遠のバリエーションが降りてきて、永遠に止まることはないだろう・・・」


「狂ってる・・・」


「堺人さん、凄すぎます!!」


サラサラサラサラ・・・・・・


「宇宙が広がっているとするならば、俺のこのサインは宇宙と同等のものと言えるだろう・・・もしこのまま俺が死んでしまった時、宇宙はこのサインを超えていくに違いない。宇宙か、俺のサインか、これは宇宙的な壮大なスケールの一騎打ちとなるだろう」


「どう考えてもアンタが先だろ・・・」


「或いはπの割り切れる数が解明された場合ですよね?」


「だから割り切れないんだってば!それに、言っとくがこの場合πは関係ねえ!なぜならπは単なる例えで小汚く成り果てたみやび堺人さかいとがただ勝手に持ち出したに過ぎないんだからな!!」

さて、明けて今月もよろしくお願いいたします。

_Clozed

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