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B・G『一目惚れ殺人鬼』(ベタ・ギャグ)

さて、今月最後の一切れが、ギリギリ間に合いました。

では召し上がれ。

「ちょっと相談があるんだが、いいか?」


「どうした?」


「実はオレ・・・一目惚れしちゃったらしい」


「どげこーん!まさかとは思うけどお前その相手、小便器とかじゃないよな」


「ん?どういう意味だ」


「とぼけてんじゃないよ、お前が昔俺に相談しただろ?そんときの恋の相手とやらが突きつめてみたらまさかの小便器だったじゃねえか、忘れたとは言わせねえぞ!」


「ははは、あんときはまあ、若気の至りという奴さ・・・くすっ」


「そんな若気はねえ!」


「心配すんなって、今度はれっきとした人間の女だって」


「本当だな?」


「ほんとだよ、これが見るからに素晴らしい女性なんだ・・・」


恋する男は遠い目をしている。


「だいいち小便器ってどういう感覚してんだよお前は一体!そんで聞いてなかったがその一目惚れした小便器は洋式か?和式か?」


「和式だよ!」


「和式か~・・・和式かよ。小便器は百歩譲ったとして、それでもせめて最低洋式だろ」


「そうなのか?洋式の便器ってそんなにいいもんなのか?」


「良いとか悪いとかの問題じゃなく、単純に和式よりはマシだ!」


「う~ん・・・でも、やっぱりオレには和式子ちゃんだ、なんといっても古風な所が魅力なんだよ」


「知るか!そんでウォシュレットは付いてんのか?」


「う~ん・・・なかったな」


「めんどくせー便器だな!今どきウォシュレットくらいは常識だろうが」


「いいんだ、おれは流行りに流されないような、芯の強い女性が好みなんだから」


「なに言ってんだよ。流行りっていうか、ウォシュレットなんかもはや時代の流れ・・・常識ってもんだぜ。そういうこだわりを痩せ我慢っていうんだぞ」


「でもなあ・・・小便器だからなあ・・・」


「なんだ、何がいいたい?」


「だからさ。小便器って和式にしかないものだからさ、洋式というチョイスってないんだよ、そもそも・・・」


「はっ」


男は赤面している。


「それに・・・ウォシュレット機能みたいなもんが小便器に付いてたらそれこそクソじゃねえか。だってあれは付着した大便を流すものだからな・・・」


男の鼓膜のなかにコダマするものがあった・・・

『蛇足もイイトコじゃないか・・・蛇足もイイトコじゃないか・・・蛇足もイイトコじゃないか・・・・・・』


蛇の絵にはウォシュレットが付いている・・・


「ゲロゲロゲロリン・・・」


男は吐いている。恥ずかしさを通り越したのだ。


「テメッ・・・じゃあ一回なんで俺に乗っかった?」


「だっていきなり否定から入るのって性格わるいじゃん」


「状況にもよるわ!俺はいま、猛烈に火を吹きそうになっている」


ゴ~~~~~~・・・

炎・・・男の口からはゴジラのような炎が輝いている。


「まあまあ・・・過去の黒歴史はさて置くとしようや・・・それより、はやくオレの相談に乗ってくれよ」


「ちくしょう、恥ずかしくて逃げ出しそうだぜ」


男は一旦逃げ出した。

そして再び現れた。


「おう!早かったな、待ってたぞ」


「死んで一回生き直してきたわ」


「そうか、よかったなそりゃ」


「おかげですっかり忘れちまったぞ、俺の最新版黒歴史」


「オレとお前の黒歴史の戦いも一勝一敗ってとこだな」


「そうだな、おかげでいっぱいいっぱいって感じだよ」


「そんで悩みなんだけど」


「そうだったな」


「女性をオトすには一番何がいいと思う?」


「一番という特定されたもんはないと思うが・・・強いて言うなら流れが大事だな」


「流れ?」


「そうだよ。お前その彼女と会話できたのか?」


「いやそれが・・・思い切って声を掛けたんだけど彼女無口で・・・どうやらしゃべるのが苦手みたい」


「そうか、それはハードルが高いぞ。話したこともない男といきなりデートなんか行けるわけないしな」


「いきなりデートね・・・ふむふむ、参考になったわ、ありがとう」


「ちょっ待て!」


男は一目散に部屋をあとにした・・・


「ぜえ・・・ぜえ・・・」


「戻ってきたな、痛く早いじゃねえか」


「デート出来なかった」


「お前馬鹿だろ!俺はいきなりデートしたって無理だという話をしてたんだ」


「そうか・・・参考になったぞ」


「体で覚えるタイプみたいだな。押し引きは肝心だぞ。いったん押したんだから、次は引いてみるとかいいともうぞ」


「う~ん・・・それって具体的には?」


「そうだな、例えば他の何かに集中してみろ、そしていっとき彼女の事を忘れるんだよ」


「集中ね・・・参考になったぞ、やってみるわ」


一週間後・・・


「おう、久しぶりじゃねえか」


「ふう・・・オレ、頑張ったんじゃないかな」


「どうだ?集中できたか?」


「一週間、雨乞いをしてた」


「テメエのせいだったのか!街、めちゃくちゃだぞ」


「すまんな、恋は盲目なんでな」


「まあいい、今なら彼女にアプローチできるぞ」


「よし!」


「じゃあ、もう一度デートに誘え」


「わかった」


「ただし、誘い出すにはスポーツカーが必須だぞ」


「そうなのか?」


「それでイチコロさ」


次の日。


「おう、どうだった?」


「う~ん・・・車に乗ってはくれたんだが、その先がねえ」


「凄いじゃないか。それって進展だぞ」


「まあ強引に乗せた部分もあるがな」


「時に強引さも必要だ、それは成功だぜ」


「よかった~。そうだよな、いくら誘ってもだんまりを決め込むから、オレ、強引に車内に引きずり込んでみたんだ」


「拉致!」


「やっぱワイルドさはモテる秘訣だな」


「ワイルドというより、犯罪だ」


「でもねえ・・・乗せたはいいが、やっぱり無口のままで」


「そりゃそうだろ!」


「よほど照れてたのかさあ、真っ赤な顔して恥じらっているんだよ」


「青ざめたんじゃないのか?」


「いいや、真っ赤にしてたぜ、眩しいくらいに」


「お前ラッキーだったな、よほど押しに弱かったとみえる。というか逮捕されなかっただけラッキーだ、おまえ」


「結果脈アリみたいなもんだぜ、きっと」


「わからねえもんだな・・・オンナも、世の中も・・・」


「でもさあ、どこいっていいかわかんなくて」


「で?どこいった」


「う~ん・・・ぐるぐると」


「せっかくのチャンスを無駄にしてんじゃねえ!」


「先に聞いておくべきだったと今更ながら思っている」


「ちっとはテメエで考えろよ。食事とか映画とか、行く場所いくらでもあんだろが!何のためのスポーツカーだよ」


「食事ねえ、映画ねえメモメモ・・・ありがとうじゃあ行ってくるわ」


「逐一!・・・まああんなふうなら転じてうまくいく可能性もあ・・・」


「行ってきたぞ!」


「まだ独白の途中!」


「うまくいったかもしれん」


「いつの間に!テメエはウラシマ効果か」


「でもなあ・・・緊張してんのかなあ・・・」


「地の果てまでもかたくなだな」


「結局高級レストランでも彼女一口も手をつけないままだったよ」


「そんな奴いたんだ・・・」


「チキショウ、どうすればいいんだ?」


「ワルいが諦めろ、俺の助言ではかなわん」


「いいや、諦めん・・・じゃあ言ってくる」


「不屈の魂を見ているようだ」


次の日、ファミレス店内。


「う~ん・・・」


「で、どうだった?」


「一応一日デート三昧だったが」


「すげえな!」


「まあいろいろと・・・でもなあ、結局彼女、一言もしゃべってはくれんかった」


「もう会話は諦めろ、それがお前らのスタイルだ」


「そうか・・・最後はゲーセンでプリクラとってきた」


「お!待ってました、見せてくれよ」


「ほれ」


「・・・・・・」


「な?美人だろ?」


「テメエ、横にいるオンナ消火器じゃねえか!殺すぞテメエ!」


三日後・・・


消火器男が惨殺死体となって発見された・・・


ファミレス店員の証言


「大きな声で喋ってたんで、すぐにわかりました。聞こえてきたんです、間違いありません、あれは被害者と彼でした。彼は叫んでいました、とても大きな声で、『殺すぞ』と・・・」


警察、取調室・・・


「俺はやってねえ、アイツはクレイジーだ、確かに大声で『殺すぞ』とはいったし殺意もこみ上げるほどに腹が立ったよ、でもそれは殺す理由ではねえ、第一友人どおしのあれは単なる軽口だから」


次の日、男は釈放された。


一週間後・・・

犯人、逮捕。

犯人は消火器、痴情のモツレによる犯行・・・


後日・・・


「痴情のもつれとは言え、犯人の殺害方法は常軌を逸するものでした、よって死刑を求刑する」


死刑当日。


前代未聞の消火器という殺人鬼の絞首刑。

死刑台の前にはたくさんの見物人や、署員が集まっていた。


すた、すた、すた・・・

消火器が階段を登っていく・・・

突然!


ガコーン!


床が解放され、死刑囚は振り落とされた!

黒いレバーに太い縄が括りつけられていた、カーン、激しい音が響き渡っていた、それからの情景は、皆の目にスローモーションのように写されてならなかった・・・一瞬、ただ空中でバウンドする赤い鉄の容器がただ舞っているだけのように思われた・・・しかし、次のバウンドで消火器の安全ピンが撥ね、黒いレバーがかくんと閉じられた・・・白い薬剤の粉末が勢いよく飛び出した!それは縄の伸びきった一番低空から始まったが、ぐるぐるとノズルを回転させて、それは次第に勢いを増して行って消火器の重々しい鉄の容器へと力を移動させていく・・・そしてはじめは円錐をつくるように勢いづいて回っていたが、それもだんだんと位置を高めて、最後には垂直の高さまで到達して天井近くでぐるぐると白い粉末を巻き上げていった!


消火器は断末魔を上げていた。


ブシュアアアアアアアアアアアア!!!・・・


消火器は死んだ。

一同は瞠目している・・・


死刑台を目の前にするたくさんの見物人や、署員の皆がみな、コントのオチのような白い煙をからだ全体に積もらせているのだった。


「ごほっ・・・」

今月は一目惚れのピザがふた切れ・・・

味が似ていた?スミマセン、来月はバラエティに富んだ特製ピザをご期待ください。

それでは。

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