B・S 『ドリームランド』(ベタ・シリアスギャグ)
さて。4枚目3切れ目のトッピングは B・Sでございます。夢の国へと行ってらっしゃいませ・・・
「大人一枚」
パパーン!
とクラッカー。
「おめでとうございま~す!お客様は王国、記念すべき来場者数に選ばれました~」
「そ、そうなんすか?」
「は~い、お気持ちはいかがですか?」
「えっと・・・嬉しいです」
「は~い、具体的には~?」
「ボク、この王国のファンなんで、記念になれたことが記念になりました」
「は~い、記念になれたことが記念になれましたね~。それでは記念撮影に参りたいと思いま~す、3・・・2・・1、ハイ、ドリ~ムランド!」
パシャ!
「は~い、よく撮れました~」
「あ、ありがとうございます」
「は~い、それでは、記念プレゼントといたしまして、夢の国の魔法によって、お客様の願いをひとつだけ叶えてあげましょう・・・どうぞ?」
「え?いいんすか?じゃ、じゃあ、野いちご拾いのベリー姫と結婚したいです」
「お~っ、お客様ったら、通ごのみぃ~っ!でもでも~、ひとつだけ難関が~・・・オープン以来のこれまでの記念プレゼントで叶えられた、おなじ願いなら~、願いは叶いませ~ん」
「マジっすか?」
「ジャジャ~ン、マジなんす!」
「え~、じゃあ、無理っすね・・・ベリー姫可愛いもん」
「いえいえ~」
「えっ?」
「まだ諦めてはいけな~い・・・じゃあこれまでの願いをお姉さん、魔法で~調べちゃうぞ~・・・ジャン」
パパーン!
とクラッカー。
「お客様の願い~、はじめてで~す!」
「マジ?ラッキー!結婚できるの?」
「は~い」
「やったうああ」
「野いちご拾いのベリー姫はあ、ババアだけどいい?」
「え?」
「だからあ、70過ぎのババアだけどもいいのって」
「そうなんすか?」
「迷いが生じた~?」
「見た目10代だけど?」
「ぶっぶー!メイクメイク~、オンナは怖いよ~」
「騙されたああ」
「じゃあ別のにするぅ~?」
「ええと・・・ええと・・・」
「ほらほら~どうすんのかな~、決断の時せまる~」
「やっぱ結婚します!」
「ええ~それでいいの~?」
「いいです、男に二言はありません!」
「でもでも~、お姉さん忠告がありま~す」
「ババアでもいい・・・」
「そうじゃなくてえ、プロポーズに『やっぱ』とかって失礼じゃない?オンナに向かっていう言葉じゃないと思うんだけどぉ~」
「え、そんなこと言いました?」
「言ったよ~」
「ごめんなさい」
「それに~、『結婚します』じゃなくて『して下さい』じゃないかなあ?フツー・・・」
「そうですね、ボクは・・・ベリー姫と・・・結婚して下さい!!」
「いいよ♡」
「えっ、じゃあ・・・」
「いいねいいね~、オトコ気感じちゃう~」
「ありがとうございます」
「おめでとー!お姉さん、許しちゃいます!」
「じゃあ、いいんすね?」
「は~い、後で王国の教会で式を挙げてくださいね~」
「よっしゃあ!」
「じゃあ次の方あ~ど~ぞ~」
「・・・」
「ど~ぞ~」
「大人一枚」
パパーン!
とクラッカー。
「おめでとうございま~す!お客様は王国、記念すべき来場者数に選ばれました~」
「ちっ・・・」
「は~い、お気持ちはいかがですか?」
「長げ~んだよ」
「は~い、具体的には~?」
「だからイチイチ長げ~って!」
「・・・といいますと?」
「俺さあ、ここのファンなワケ」
「ありがとうございます~、この王国へ一度でも訪れた皆さんは、ぜ~ったいファンになっちゃいますからね~」
「『ます~』じゃねえよ、その語尾を伸ばす喋り方がますます効率ワリーんだって!」
「・・・といいますと?」
「質問ばっかしてんじゃねえ!」
「は~い、質問ばっかしてましたね~。それでは記念撮影に参りたいと思いま~す、3・・・2・・1、ハイ、ドリ~ムランド!」
パシャ!
「は~い、よく撮れました~」
「そう、サクサク進みやがれ!」
「は~い、それでは、記念プレゼントといたしまして、夢の国の魔法によって、お客様の願いをひとつだけ叶えてあげましょう・・・どうぞ?」
「はいはい、願い事ひとつね・・・その魔法とやらを使ってこのやりとりを終わらせてくれ!」
「え?図りかねますが?」
「『が?』じゃねえんだよ、察しろ、行間を読め!テメエがイチイチ長げえから言ってんだよ!」
「お客様、お言葉ですがもったいないんじゃないですか~?」
「はっ?」
「だ~か~ら~、せっかく使える魔法に、そ~んなありふれた願いを叶えるなんてもったいないじゃん!」
「テメエ、それこそ人の勝手じゃねえのかよ!」
「イエイエ、そんなのイケマセン、これは命令です」
「客に向かって命令してんじゃねえ!」
「だってだって~、魔法ですよ~、なあんでも叶っちゃうんだからあ」
「はいはい、魔法魔法・・・」
「そ~んな~!もしかして信じてないのお~?」
「信じるかっ!」
「だあって~。ここ、魔法の王国、ドリームランドだよ?」
「魔法なんて信じねえよ、信じねえけどコッチは信じた気になって楽しんでんだよ!」
「楽しんでくれてました~?お姉さん嬉しいです~、でもでも~魔法はホントなんですぅ~」
「知るか!」
「え~ん、お客様ったら、心が澄んでなあいんだからあ!」
「じゃあなんだ?心が澄んでる野郎は魔法を信じるってか?」
「は~い、そうですぅ~」
「心が澄んでる野郎は魔法を信じて、その結果欲望をあらわにするんだってな?」
「え~ん、魔法はいいことなんだからあ!」
「あのさ、ひとつ聞いていいかな?」
「は~い、お姉さんったら魔法で調べちゃうぞ~」
「魔法ばっか使うんじゃねえよ!チクショウ、まあいいや、調べてくれるんだよな?」
「は~い、お姉さんったら魔法が得意なんだから~」
「その得意な魔法とやらで教えてくれ、あのさあ」
「は~い、なになにぃ~?」
「記念すべき来場者数ってなんだ?」
「は~い、それはそれは~、来場者数のピッタリ記念ですぅ~」
「テメエな、さっきの客にも言ってただろ!」
「ええ~お客様ぁ~聞き耳立ててましたぁ~?」
「立ててねえよ!聞こえてきたんだよ」
「ええ~?どひゃああ」
「そもそもクラッカーで解るんだよ」
「ええ、なにがなにがあ?」
「パンパン鳴らしてんだろ、テメエよう!」
「ええ~?お姉さんが言ってただけかなあ?パパーン、パパーン・・・ほら」
「とぼけんじゃねえ、パンパン口ずさんでる奴なんていたらそりゃキチ○イだわ」
「ええ~ん、お客様がイジメルうう」
「うるせえ。俺はいったい何人目の来場者何だよ?」
「ええ~?そんなこと聞くのおお?」
「いいだろそのくらいよ」
「ブ~、ダメです~」
「なんで!」
「だってだって~、そんな現実的なこと~、ここはドリームランド。聞いちゃいけないんです~」
「そんな決まりはねえよ!だいいち来場者数って現実的じゃねえのかよ!」
「それはギリギリオッケーですですう~」
「『ですう~』じゃねえ!じゃあ、さっきの奴は?アイツ何番目だ?」
「お言葉ですが・・・」
「雲行き怪しいぞ!」
「プライバシーの侵害に当たりますぅ!」
「ど現実なワード繰り出してんじゃねえよ!」
「イケマセン言えません!」
「もうどうだっていいや!だけどよう、来場者数記念ってピタリ賞みたいなもんだろ!」
「う~ん・・・解んないや」
「一般的にはな!パンパンやってた時点で確信犯だ、テメエ行列の時から遠くから既に聞こえてたぜ、それをどう言い訳するんだ?」
「パパン・・・パパン」
「またやってんじゃねえよ!まあいい、百歩譲ってだなあ、俺か俺の前の若もんか。そのどっちかがキリのいい数字だったとするわなあ」
「ええと、ええと・・・」
「少しゆっくり喋ってあげようかあ?そんでだ。どっちかがピッタリだったとしよう、そうであればこそだ。確実に、もう一方はピッタリじゃねえんだ!わかるか?」
「ここ、ドリームランドですよ?」
「理由になってねえよ!来場者数くらいでイチイチ流れ止めんじゃねえぞ!」
「う~ん・・・困ったなあ・・・」
「困れ困れ!コッチはもっと困ってんだよ!」
「だってぇ~来場者数でイチイチお祝いしたいじゃ~ん」
「なんだそれ!」
「それにぃ~、魔法で願いまで叶えてくれるんだよお?」
「また魔法・・・。困ったら魔法を出す癖を直せ!」
「困らなくたって出してますぅ!」
「知るか!それより、知ってるか、テメエ・・・ネットでよう」
「ネット?」
「そうだよ、書き込みがあってな・・・噂になってんだよ!」
「なにがあ?」
「だからさ、ドリームランドが、近頃異常に行列がハケないらしいって悪評がハンパないんだってさ」
「う~ん・・・お姉さん聞いたことないよ~」
「うるせえ。それってテメエのせいだろ?」
「ええ~、まさか、ヒトのせいにするわけ~?」
「テメエのせいだ!俺さ、このドリームランドの地元民だからよう、愛着があるんだよ」
「愛着とか嬉し過ぎますうう」
「それで悪評の理由を確かめに来たらこのザマさ・・・」
「どのザマですかあ?」
「テメエが理由だったよ!イチイチ足止めしてんじゃねえ」
「それはモノの取りようですう」
「足止め以外のなにモンだ!言っとくけどここ受付じゃねえのか?」
「夢の王国の関所なんですう」
「うるせえ!テメエの勝手で客を足止めすんな!」
「でもお・・・魔法で願いが叶うならいいじゃないですかあ?」
「もういいよ、わかったよ、じゃあ魔法で叶えてくれよ」
「は~い、それでは、記念プレゼントといたしまして、夢の国の魔法によって、お客様の願いをひとつだけ叶えてあげましょう・・・どうぞ?」
「このシステムを終わらせろ!」
「ダメですう、願いごとはみんなのものだから、あなたひとりのエゴで終わらせるわけにはいけないんですう」
「・・・ハメられてる気分だ」
「ダメですダメですう・・・それよりちゃんとした願いを言ってくださいよお・・・」
「クソッ・・・解ったよ、もう疲れた。願い事を言えば入場出来んだな?」
「は~い、もちろんですぅ・・・」
「じゃあ、俺をパーターピンにしてくれ、俺は空を飛びてえんだ」
「お~っ、お客様ったら、パーターピンっていったら競争率高そうなのちょいすするんだからあ・・・!でもでも~、ひとつだけ難関が~・・・オープン以来のこれまでの記念プレゼントで叶えられた、おなじ願いなら~、願いは叶いませ~ん」
「なんだそれ!」
「じゃあこれまでの願いをお姉さん、魔法で~調べちゃうぞ~・・・ジャン」
「ブッブ~」
「腹立つなこれ」
「お客様の願い~、はじめてではないですぅ~!」
「へ~へ~・・・てか、逆に難しいぞこんだけの入場者数とカブラナイほうが!」
「でもでも魔法はそれがルールなんですう!」
「まるで禅問答じゃねえか?」
「はやくはやく~、新しい願い事を言って欲しいのお?」
「はいはい・・・解ったよ、じゃあな、これでどうだ?」
「ふんふん、何かな何かなあ?」
「俺をパイナップル王子の執事にしてくれ」
「は~い。じゃあこれまでの願いをお姉さん、魔法で~もういちど調べちゃうぞ~・・・ジャン」
「ブッブ~」
「何でだよ!パイナップル王子とか一番クソだぞ!」
「魔法は使えませ~ん!」
「ちっ」
「それじゃあ、もういちど。魔法をお願いしてよね~」
「はいはい・・・魔法ね魔法・・・ならさ、これならバッチリだろ」
「何かな何かなあ?」
「俺をかぼちゃの馬車にでもしてくれよ・・・?」
「じゃあこれまでの願いをお姉さん、またまた魔法で~調べちゃうぞ~・・・ジャン」
パパーン!
とクラッカー。
「おめでと~!お客様の願い~、はじめてで~す!」
「はあ・・・やっと終わったぜ」
ボワン・・・
白い煙と共にオトコはかぼちゃの馬車へと変身していた。
オトコは後悔していた・・・
なぜならオトコが魔法によって変身したのは、『かぼちゃ』ではなく『馬車ウマ』の方だったから・・・
オトコが変身したのが『かぼちゃ』の方であったなら、いずれ腐ってドロドロに溶けて死ぬことが出来たかもしれない。
しかし皮肉にもオトコが変身したのは丈夫な『馬車ウマ』だった。
馬車ウマは丈夫なうえに大事に大事に育てられていったという。
オトコはそれからというもの、臭い藁や生の人参を食わされ続けてとかく長生きした・・・
夢の王国は夢があり過ぎて困ったもんでございます。