B・G『キミはエンゼル』(ベタ・ギャグ)
さて、今月最後のトッピングです。
B・Gを召し上がれ!
キミはエンゼル
背伸びして・・・すこし大人びた衣装でハネ踊るキミ
揺れる黒髪
キミは巻き毛に恥じらって
その美しい金色の髪の毛を隠しているというの?
縞のカットソー
埋もれて・・・隠された優雅にひろげられるはず
天使のハネは
キミの笑顔に翻弄されて
イタズラなハートが踊り狂って咲き乱れるの・・・
※※※※※※
ねえカサゴって知ってる?
カッサ~ゴ~・・・カッサ~ゴ~・・・・・・
ああ・・・まただ・・・
このウタがアタマから離れない・・・
お?
少女が跳ねながら駆けている・・・
コンコンコン・・・ノックする音。
ガチャリ、開けたドア、そうだ、そこで主婦が現れる。
主婦はアレを切らしている。
「ちょうど良かったわ!切らしていたところなの」
差し出す少女。
差し出されたのはカラフルなカゴだった。
主婦はそれを部屋に運び入れ、温めた鍋に投入する・・・
?
なぜだ、なぜ俺はそれを知っている・・・
何もかもが受けいれられる、そんな感じで・・・
そうしてひとつ先の未来を、サキの情景を、俺がリードしながら進めていく・・・
まるで、一度観た映画のように・・・・・・
少女は一軒一軒を訪問し、玄関先にそのカラフルなカゴを吊るし回っているのだった・・・
そして、訪問先に必ず、カワイイ豚のキャラクターが載っているステッカーを玄関のドアに貼り付けるのだ。
グラグラと煮え立つ鍋。
乾燥して硬かったカゴは、茹でられて柔らかくなっていた。
オレンジやグリーンやイエローで編まれたその虫かごは、実はパスタで編まれたもの・・・
主婦はちょうど切らしていた。
その、野菜の成分で着色された虫かごを。ちょうど待っていた。
そして・・・少女は計ったようにあらわれたんだ・・・
なぜか、俺はそれを隈なく知っている・・・・・・
お?
ピンポーン!
・・・来た来た、待ち疲れたぞ・・・
ガチャリ。
「あの・・・」
??
少女だ、ヤケにカワイイ娘だ。今時女性も少なくはない業界だとは聞いていたが、それにしたって予想を遥かに裏切るほどの・・・
黄色いハットを被っている。
デニムのツナギ、カラフルなカゴを抱えている・・・
「豚のステッカーはあるのかい?」
何故・・・俺はそんなことを尋ねた?何故、そんなことを知っている・・・?
「るんるん・・・ジャ~ン、あるよ!」
よいしょ、よいしょ、うわ~ん・・・よし、ペタ。
なぜシールを貼るだけなのにそんなに手間取っている・・・?
!
「何だ!このシールは!」
「あれ?」
リアルな豚!
凶暴で赤く吊り上がった、眼!
これはただの養豚ではない・・・野生化した豚だ!
殺気立ってるのは眼だけではない、牙、口!
血を滴らせている・・・
遠近法でぼやけてはいるが・・・見える!
遠くには首を断たれた憐れな羊の屍体が転がっている!
そうだ、コイツが食っちまったんだ!
残虐だ、どうしてこんなステッカーを作る必要があったのか!!
まあいい。はやく施工してもらわねば・・・
「行きましょ?」
「行くって、どこへ?」
「お外が待っているよ。はやく~・・・」
「なんだって?」
何を言っているんだ、それよりはやく排水口の詰まりを直してくれないと・・・
「ルンルンルン~」
「ちょっと待ちなさい、君~・・・」
俺は家を出た。少女を追って・・・
「きゃは、きゃはは・・・」
「君、どこへいくんだい?」
「少女は俺の言うことに耳を傾けず歩いていくばかり・・・」
「誰だ!」
「わたくし、あなたの心の声担当、新庄 誥です」
「安直な名前だな!作者は誰だ?」
「はあ、作者ですか・・・調べますので少々お待ちいただけますか?」
「いいよ、そんな面倒なことやらなくて・・・」
「そうは言ってみたものの、じわじわと気になり始めた、そして夜眠れなくなるくらいに・・・俺はこの現象をカフェイン現象と名付け、夕方以降極力控える事を心にきめた」
「・・・心情を告げるなんて!いちいち面倒クセーヤツだ、ほっといてくれよ!」
「自分に向き合うということは大変ですねえ。それより!少女が・・・あんな遠くまで」
「ああ!」
「俺は急いで追いかけた」
「ウルサイ、しつこいんだよ。コッチはお前を相手してる余裕なんてないからな!はっはっ・・・あ~いかん、運動不足だな・・・」
「いえ、初めましてですよ・・・男はそう言った・・・申し遅れました、わたくし新庄 誥の別人格ビョーシャと申します」
「ますますややこしいことになってるぞ!作者はいったい誰なんだ!!」
「お調べいたしましょうか?」
「ああ!調べてくれ!オカシクなりそうだ・・・」
「少々お待ちを・・・俺はやっとの思いで少女に追いついていた、はあっはあっ、激しく息を切らせている」
「おい!」
「少女は俺の呼びかけに頓着することもなかった」
「きゃっきゃっ・・・」
「サンダルを脱いだ素足の彼女が走り出す・・・」
「ここ沼だぞ!!」
「湿った空気・・・」
「おい!だいじょうぶかお前!」
「少女の足が少しずつ飲まれていく・・・」
「あ~、た、たすけて~・・・」
「おい!這いつくばってでも踏ん張ってろ!」
「俺は沼へと走った」
「よいしょ、よいしょ・・・ああ!ひとりじゃ無理だ。お前も手伝え!」
「俺はビョーシャにSOSを送る・・・じゃあわたくしが左手を・・・よいしょ、よいしょ」
「よいしょ、よいしょ・・・」
「ねえ、なにやってんの?」
「うわあ!」
俺は少女の両手を掴んでいた!助かったというのか・・・?
「汗いっぱい掻いて急にうなされてびっくりしちゃった、それにぜえぜえ言ってるし」
「・・・?助かったのか?」
「なに?」
「沼が・・・」
「沼?ここビーチだよ」
ザザーン・・・
少女が裸足で波と戯れている・・・
「おかしいな。新庄 誥の別人格がビョーシャで、俺とそいつで君の手を引っ張り上げて・・・」
「そんなひといないよ。ウチとアンタとふたりっきり、それにずっと手を繋いでウチがひっぱってったんだから・・・アンタそれで疲れちゃったんだとおもうよ」
「えっ、そんなはずは・・・」
俺はクラクラしている・・・
「さ、錯綜!」
「ねえ、虫採ろうよ」
「そうだった、虫だよな虫」
「便所コオロギかカメムシっ!どっちもダイスキなのっ!」
「キッタネ~チョイス!」
「あ~あ・・・便所コオロギしかいなかったな・・・」
「それ、ゴキブリ!」
虫かごのなかにはカサカサうようよとゴキブリが群れていた。
「気分悪くなってきた・・・」
「じゃあいい、逃がすよ・・・」
少女は悲しそうだ、悪いことをしたかな・・・
「ねえねえ、アンタさあ、ウチの子孫なんでしょ・・・助けに来たん?」
「え?」
グルグルと目の前が回転する・・・なんだ、何を言っているこの少女は・・・
「少女は嘘をついている・・・え?」
無意識のうちに喋った?
まるで夢遊病者!
俺、どうなっちまったんだ、一体?
「堅い話はよそうね。ハイ!」
少女は俺に手渡した。
「くれんのか?」
「いいよ、あげる」
「・・・」
「400円です」
「あげるんじゃ!販売員っ?」
「安くしといたから」
「・・・結構するよね、そんでなんで瓶入りメンマなのっ?」
「あれか、瓶入りだったらストレリチアのほうがいいってパターンか?」
「ストレリチアってなんだよ!瓶入りだったらなんでも一緒だよ、大差ないよ!」
「じゃあ、これは?」
渡された瓶、俺はラベルを見た。
「瓶入りレトロ・・・なんだこれ?空の瓶じゃん!」
「大昔の大量生産品だって。当時の空気がそのまま入ってるらしいよ」
「究極のぼったくり商品だな!」
「吸ってみればいいじゃん・・・」
「え~~。」
「いいから、はやく~」
「・・・。しょうがない、」
パカ・・・
なんだこのニオイ・・・
懐かしさを通り越して、時代を越した気分に陥っていく・・・
「!!!」
「ウチね、こう見えてももう25歳なの」
「え?」
「誰がオバハンや!」
ダンダダンダンダダンッ!
「カッサ~ゴ~・・・カッサ~ゴ~・・・」
サンバのリズムで踊りだす彼女・・・
「うああ、やめてくれ・・・その曲は一体何なんだあ・・・!!」
ダンダダンダンダダンッ!
「カッサ~・・・」
「君は一体・・・誰?」
「わっかんないかな~・・・あ~あ、やっぱ売れないか~カサゴソング」
「何それっ?」
「バイトしてんだ。売れない歌手よ」
「君!そ、そうだ・・・君は確かハウスクリーニング業者の・・・」
「はっ?人違いじゃ・・・ウチはただのカゴ売りよ!」
「カゴ売りってそもそもポピュラーじゃないよねっ!」
「ううん、しがないカゴ売り。とてもありふれた職業よ」
「嘘つけ!」
「それにしたっておかしなことばかり・・・ここだってちょっと前は沼だったんだから」
「え?沼で海水浴!」
「現実が錯綜してるの」
「その言い訳って卑怯だよねっ!」
「グスン。最後のメッセージを、伝えて・・・」
「何だよ急に!不吉過ぎるよ」
「ねえ、ひとつ確認したいんだけど?」
「?」
「アンタの記憶って・・・いつからあるの?」
キラリッ・・・彼女から光るものが見えた・・・
記憶をたどる・・・・・・
「記憶記憶記憶・・・洗濯機が壊れてしまったただの一般市民・・・脱水ができなくなった・・・排水口・・・排水口が詰まって・・・・・・」
「無いのね!それ以前の記憶が無いのよね!!?」
「うううあああああああああ」
排水口に飲まれゆく・・・無限の・・・引力に・・・飲み込まれて・・・・・・
スキュッ!
鮮・・・血・・・・・・
「あちゃ~」
「ゆめぜっとはインクの瓶をこぼして、せっかくの原稿を台無しにしていた」
「黙れ、ビョーシャ!ややこしいぞ」
「真っ赤に染まっている・・・ゆめぜっとは半紙に血液で小説を書いている」
「ノートパソコンでだよ!第一半紙に血液ならどうやってなろうにアップするんだよ?」
「俺は言葉に詰まっていた」
「新庄 誥まで出てきてんじゃねえ!第一何だよ、オチがつかないからってどうして作者が出てこなきゃなんねえ!」
「いや、書いてたらホラー展開になってきて、どうせなら夏のホラーに応募してみようかなと思ってね、だからこれは別バージョンで書き直したヤツだから」
「まさか、確信犯じゃないだろうな~!もういいよ、俺はこの世界の神だ、テキトーなオチをつけて終わらせても誰も怒らせはしないよ、覚悟しな!」
「サスガは神!自分都合で振り回すつもりだな」
「うるせ~よ!」
さて、今月は閉店でございます。
来月も楽しみに・・・
_CLOZED