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一一話、第二次青葉事件

 グアム島沖で陽炎との戦闘から帰ってきた巡洋艦青葉は、約二週間ほどで横須賀基地へ投錨をした。


 巡洋艦青葉甲板

「久し振りに潮風当たる気分が台無しだな。」

 武は、甲板に出て港を見るやそう吐き捨てた。

「武?」

 千早も、武の態度を見て港を見る。

「…あ~、なるほどね~。」

 千早は武の悪い態度の意味が分かった。

「世界政府の連中だ。今回の陽炎撃沈を受けて来たんだろが…」

「あまり意味ないと思うけどな~。」

 武と千早は、手摺にもたれていた。

「真田、西園寺。」

 そこへ不意に原田先任伍長が飛び出してくる。

 武と千早は、原田に敬礼をする。

「兵員室へ行って待機だ。」

「了解しました。」

「了解です。」

 そして、原田を追うようにして艦内に戻る武と千早。


 第20兵員室前

「おう、石田二水!」

「はい、何でしょうか?」

 武に呼び止められる石田。

「もしもの為に…これ預ける。」

 武は、石田に立方体の高さが低い大きめの鞄を渡す。

「お、重いですね。何が入っているんですか?」

「開けてみりゃ分かるぞ。」

 武は、石田の質問に答えずに兵員室へと戻る。

「…真田一曹って、案外親切じゃないんですね…」

 石田は、自分の兵員室へ入る。

 第21兵員室

「何だろう?」

 石田は、自分のベットに入って武から預けられたものを確認する。

「…」

〝ガチャン!〟

 だが、中身を見るや瞬時に閉じる。

「あの人、危険だ…」

 石田の偽れざる一言だった。


 青葉艦橋

「おうおう。早速やってきたか。」

 大滝は、艦橋の窓から世界政府の調査団を高見の見物をしていた。

「予想はしてました。ですが、もう港で待ち構えていたとは…」

 和田は呆れるように溜め息を吐く。

「情報が流れていた…か。武器庫の状態はどうだ?」

「護身用に所持している何人か以外は、全て保管されています。」

 和田の生真面目は、ここにも活きる。

「そうか。さて、世界政府の調査団来るまで寝ようかな~?」

 大滝が大きい欠伸をする。

「艦長。今回ばかりは、冗談抜きで駄目ですよ。」

 和田、ここはビシッと指摘する。

「冗談じゃよ、冗談。」

 大滝は、よっこらせと艦長イスから立ち上がる。

「俺は艦長室の方向に向かう。あとはよろしくな。」

「はっ!」

 和田は、大滝に敬礼する。


 青葉ラッタル前

「副長の和田です。」

「調査団団長、勝浦(かつうら)です。」

 挨拶そこそこにして、和田が早速青葉へと案内する。


 青葉ヘリ着発甲板

 ここで、調査団が持って来た荷物をクレーンに吊るして青葉に移す。

「何だこりゃ?妙にガシャガシャ言うぜ?」

 荷物を受け取った一水が、持ち上げる時にガシャガシャという音を聞いた。

「前回は、こんなんなかったが…」

 一緒に作業していた一水も、ガシャガシャという音に若干の寒気を感じた。

「青葉事件のか…こりゃ裏有りそうだな。」

「そうだな。」

 二人は、さっさと荷物を調査団へ届けて原田の所へと報告をする。

 原田も、調査団から護身用拳銃の取り外しを要求したのだ。だが、この時は、調査団の護身用拳銃と警棒を青葉の武器庫に預けた。

「…よし、艦長に指示を仰ぐ。お前らは持ち場に残れ。」

「了解しました。」

「了解しました。」

  原田は、とりあえず二人の一水を持ち場に返した。


 数分後、艦長室前

「さてと、副長は艦長室へ行ったと言ったが…」

 原田は、二人の一水の証言を報告しに艦長室へと出向く。

「ん?」

 だが、ドアの向こう側で不審な物音が聞こえた。

〝オイ、これダミーだぞ!どうなってるんだ!?〟

 声を抑えているが、明らかに御立腹だ。

〝知らん!だが、これが罠だと言うことも有り得る…〟

〝じゃあ!〟

 原田は、そこで気付いた。

「…失礼しました~。」

 …さっさと、CICに居る橋本少佐の所へと行く。勿論、無線を使って簡単な報告もしておく。

「こちら、原田CIC。」

〝お~原田先任伍長か。〟

 だが、何と無線に出たのは大滝だった。

「え!?艦長!?」

 勿論、原田はこのことに驚く。

「どうしてCICに?」

〝いや~CICの冷房が効いてて居座っちゃった。〟

「…」

 原田、あまりの理由に呆れを通り越して沈黙する。

〝まあ、冗談はともかくして実は勘でまた来るんじゃないかって予想してた。〟

「そうなんでありますか…。実際、艦長室前で聞き耳たててたら、調査団が艦長室漁ってましたよ。」

〝そうか。よし、艦内戦闘開s〟

「え!?」

 原田は、大滝の艦内戦闘に驚く。

〝既に、真田一曹らが準備OKだ。〟

 と、大滝が言って原田が呆れた言葉を発しようとしたその時…

〝パパン!〟

「うおっ!?」

 原田は、銃声にびっくりして曲がり角へと逃げ込む。今先まで居た原田の足元に、銃痕が残っていた。

「こちら原田!撃たれました!外傷はありません!!」

〝よし!艦内戦闘開始!〟

「はい!って、私拳銃すら持ってないんですが…」

 そう。原田は、調査団からの半ば強引な指示で拳銃を武器庫へ返していたのだ。

〝まあ、そろそろ武器庫も開くだろうから武器庫へ行ってくれ。それまでは、真田一曹らに任せよう。以上。〟

「は、はい。」

 原田は、とりあえず武器庫へと向かう。


 一方、武達は…

「何か知らんが、千早は留守番の筈じゃないのか?」

「後衛ぐらい出来るわよ。」

 …何故か千早が居ると、不安に思うのは言わないでおこう。

「そうだな。…ん?」

 武は、曲がり角手前で確認をした時、千早に向けて待てというハンド合図を送る。

「何を…」

「敵だ。」

 武は、ベレッタM92FSのセーフティーを外す。

「え?マジ?」

 千早も、9mm拳銃を取り出してセーフティーを解除する。

「まあ、とりあえず…うおっ!?」

〝パパパパンッ!!〟

 武が考えるより先に、調査団もといテロリストが発砲してきた。

「マジかよ!」

〝パンッ!パンッ!〟

 武も負けじと撃ち返す。すると、敵に一発当たって倒れこんだ。

「おし、次やるぞ。」

 武が様子を見ながら、次の敵を見定める。

「先輩!加勢しますよ!!」

 今度は、反対側から山本と石田がやって来た。

「おう!石田、サブマシンガン撃ってる奴の頭弾いちゃって。」

「(うわ~最初から酷なこと要求するな、この人…)」

 石田、武の危険度を改めて上げる。

「千早と山本二水は、俺と一緒に石田の援護をする!」

 武は、千早と山本に指示を出した。

「うん!」

「了解しました!」

「カウント始めるぞ!3!2!1!援護開始!!」

〝パン!パパンッ!パパパンッ!〟

 武・千早・山本の援護射撃が始まる。

〝バスッ!……バスッ!バスッ!〟

 石田は、敵の隙を見て武の指示通りにサブマシンガンをぶっ放すテロリストの〝頭〟を弾く。

「うん。地獄絵図に一歩近付いたな。石田も鬼だな?」

「真田一曹が鬼だと思います。」

「こりゃどうも。」

 石田の返しに、武はそれ以上のことは言わなかった。

「さて、そろそろ他に制圧されてもおかしくは…。」

 武が様子を見に近づく。やや斜め後ろに千早も着いてくる。

「千早、お前は下がって…」

「先輩!危ない!!」

 武が山本の声に気付くと同時に千早を庇うように押し倒す。

〝パン!パン!〟

「うっ!」

 武が苦しんだ。

〝バスッ!〟

 だが、石田がテロリストを素早く弾く。

「ん…あ、やっちまったな。」

 武は、痛み出す右腕を見ると銃弾によって少し抉られていた。

「武…?」

 千早は、武に押し倒されて何が何だか分からなかった。

「ん?大丈夫だ。」

 武は立ち上がった。


 十数分後、テロリスト一名捕虜にして壊滅。

 被害は、武が敵の銃弾を二回ほど掠ったのと艦長室が荒らされていたことだ。

 どうやら、イージスシステムの情報奪取を目的としたらしい。

 尚、団長は縛りつけられて身動きが取れない状態で発見された。団長は、本当の世界政府の職員だった。

 今回の事件は、迅速に事を終えた。〝日本海軍の精鋭は二度目の失敗を許さない〟といったところか。

 そして、世界政府の信用がまた一つ消え行く。

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