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付与術師の異世界ライフ  作者: 畑の神様
ウォードラス編
68/93

魔剣の真価

「――――――がはッ!!」



 強烈な精神負荷により、地面に倒れこむ彰。


 あまりに強力な負荷と全身の脱力感を前に、思わずその意識を手放してしまいたくなるのを何とかこらえたると、彰は何が起こったのかを思考する。




(な、なんでだ……? なんで俺は今この精神ダメージを受けた? 死角から攻撃をくらったのか? それとも何らかの魔法をかけられたのか?

 ……いや、違う。そんなはずはない。俺は今攻撃はくらっていないはず……いや違う、くらった、確かにくらった!! 俺が"瞬間雷化"で抜け出したあの一撃を俺は確かにくらっている!!

 だが何でだ? 一瞬とはいえ"雷化"していた俺には物理攻撃の一切は効かないはず……)



「ハハハ、まるで理解できないとでも言うような顔だね? 君の疑問を当ててあげようか?

 『なぜ、物理攻撃の効かない筈の俺に斬撃が効いたのか?』だろう?」

「なっ!?」

「はは、今度は『何故わかるのか?』かな?

 わかりやすいね君は!!」

「くっ!!」



 二度連続で内心を言い当てられてしまった彰は歯噛みするも、何度考えてもやはりその原因に至ることができない。



「はぁ~やれやれしょうがない。君にヒントを上げよう。

 私はこの剣のことをなんて言ったかな?」

「剣、だと……? 何を言ってる……? いや、待てよ……まさか……」

「そう、その通り。私はこういったはずだよ『我が魔剣の斬撃が―――』とね?

 この剣の銘は《魔剣ダインスレイヴ》私がダンジョンに潜っていた時に手に入れた一品さ

 そもそも、君に物理透過する雷の魔法があるのは最初から分かっていたよ。

 なんと言っても君のここまでの試合をずっと見ていたからね。

 そして、君は試合中その状態になったときにこうも言っていたね? 『一切の物理攻撃(・・・・)は通用しないんだわ』っと、だがしかし、それがこの魔剣のように魔力を纏った代物だとしたら?

 常識では考えにくい代物だとしたら?

 その答えが今の君だよ。まあ正直少し賭けではあったけどね」

「―――――――ッ!」



(こいつ……俺の情報をそこまでおさえてるなんて、なんてやつだよ……でも、俺もこのまま負けるわけにはいかないッ!!)



 

「――――かぁぁぁああああぁぁあ!!」



 そう唸り声を上げながら眠りたいという自身の意識に逆らって立ち上がると、彰は構えをとった。



「ふふふ、君もうフラフラじゃないか? それでもやるんだね。

 まあそうじゃないとつまらないんだけど」

「言ってろ、いいよ見してやるよ、俺のとっておき」



(……仕方がない、正直あれを使うのはこのタイミングじゃまだリスキーだが、やらなきゃどの道こりゃやられる。

 いいか、自覚しろ、あいつは強い。

 これまで闘ったのとは別格だ。

 だから……出し惜しみしてるほど、余裕なんてないんだ!!)



「特性付与―――――"雷化"」



 瞬間、彰の全身が雷電へと変化していく。


 あっという間に彰の全身は雷そのものへと変化しきり、闘技場には雷の化身が顕現していた。



「行くぞ? こっからはほんとのほんとに―――手加減なしだ」

「そうかい? ならば私はこう答えよう。

『望むところだ』っとね?」

「へっ上等!!」



 直後、彰は駆ける。否、それは最早駆ける(・・・)などという生易しい速度ではない。


 人間の限界など遥か後方に置きざってしまうかの如きその速度は転移と言ってしまった方がしっくりくるであろう。


 人外の速度を持ってして刹那の間にイーヴァルディの背後に回り込んだ彰の攻撃。


 その規格外のその攻撃をしかし、イーヴァルディは自身の長大な魔剣を神速の如き速さで操り、対応して見せる。



「―――くっ!」



(やっぱりこの速度でも対応してきやがるか、だがッ!!)



 イーヴァルディの斬撃が自身の"雷化"による物理透過を意に介さないことはすでに先の一撃で彼の言葉だけでなく彰はその身を持って知っている。


 故に、常時であれば物理透過に任せ、自身は拳による一撃に意識を集中させるところを、今回彰は右拳を限界まで内側に捻り、振り下ろされる剣の側面に添えたそれを一気に解放させることにより最小限の動きで剣を払いつつそのままその拳を攻撃へと転化させる。


 イーヴィディル戦でも使用したその技術をもって、イーヴァルディが上段から放ってくる斬撃への対処とした。


 交差する両者の剣と拳。


 それは本来同格に打ち合うことなどできるはずもないものだ。


 拳が剣に勝つ、本来であれば希望すら存在しえない筈のそれを、しかしそれを一度成している彰であればやれるのではないかという期待感がその光景を見ている観衆の心に生まれる。


 直後、魔剣と雷拳による攻撃を放った両者はお互い大きく後方へと飛ばされていた。


 両者は大きく飛ばされながらも即座に体勢を立て直すと、再び油断なく視線を合わせる。


 

「ふぅ~全く、拳で剣を払うなんて、遠目では見ていたけどやはりそれと自分が受けるのとでは衝撃が違うものだね……危うくやられてしまうところだったよ」

「ちっよく言うよ、あんた直撃コースに完全に入ってた俺の雷拳を完全に逸らされたはずの魔剣の斬撃方向を横に無理やり動かすことで俺の横っ腹をぶん殴って直撃避けるとか、どういう体の構造してんだ?

 しかも今回は"雷化"した俺に物理的に衝撃を与えるおまけつきと来た、全くとんでもない奴だよあんた」

「流石、良く見えているね。

 さっきよりも多く魔力を込めたんだ、そのくらい出来て当然さ。

 だが、まだまだ試合はこれからだろう?」


 

 人を食ったような笑みを浮かべるイーヴィディル。


 それに対し彰は応対するかのように同じ笑みを浮かべて言葉を返す。



「当たり前だ、このヤロー!!」



 そこから二人は再び神速の戦いに突入する。


 雷速となって攻撃を繰り出し続ける彰。


 その攻撃をイーヴァルディは時には避け、時には逸らし、時には反撃を対処する。


 幾度となく繰り出される両者の魔剣と雷拳。


 それはどちらの一撃もまともに当たれば確実に破壊を巻き起こす威力。


 破壊と破壊、その二つが両者の間でどちらへと行きつくこともなく、現れては相殺し、消滅する。


 彰が魔剣による破壊を避ければ、その破壊は彼の薄皮一枚の所を掠めていき、しかし同時にその余波だけでも決して少なくはない量の彼の精神を削っていく。


 そして、対するイーヴァルディが彰の雷拳を逸らしにかかれば、何とか逸らしきれても、雷撃は確実に彼の精神を少なからず削っていく。


 そんなギリギリの削り合いを続ける両者の内、先に限界が訪れたのは雷神の方だった。



「くっ……」



 あまりの疲労感に一度距離を取り膝をつく彰。


 しかしてその直後、雷神はただの人へと回帰する。


 気がつけばそこに居たのは雷の化身ではなく、ただの生身の人間であった。



「なっ……もう限界、だと……?」



(おかしい、幾らなんでも早すぎるぞ!? "雷化"が尋常ではない量の体力を消費するのはわかってるつもりだ。

 でも、それを踏まえたとしてもこんな"雷化"してから数分と経たないうちに限界が来るはずがない!!

 だとすれば原因はやはり……)



 あの魔剣にある。それ以外の可能性が無いとは言えない。


 なにしろここは異世界。彰の中の常識などあってないような物であり、それが確実に通用するなどあり得るはずもないのだ。


 しかし、それでも彰にはあの魔剣の能力がただ魔力を宿した攻撃を繰り出すのみだとは到底思えなかったのである。


 だとすればあの魔剣の能力とはいったい何なのか?


 それを解明するために数少ない思考回路をフル稼働させる。


 思い出せ、何か、何かここまであの魔剣の攻撃に違和感はなかったか?


 あの剣の攻撃を受けるたびに起こった事は無かったのか?


――――いや、あった、確かにあった。


 しかし、それが本当に彼の魔剣の能力であるとすれば、その能力は自分にとって最悪。


 彼の魔剣は自身にとっては蛇にとってのマングース、百獣の王にとっての人類に等しい。


 そして、それは彰が絶体絶命の窮地に立たされたということを意味する!



「お前の剣の能力……まさかそいつは……!?」

「どうやらやっと気づいたようだね。

 でも遅いな。君はそこに至るまでが致命的に遅すぎた」

「ま、まだだっ! 俺はまだっ――――」

「――――いや、君はもう詰んだんだよ。

 私の予想が正しければ君のこの魔剣との相性は最悪。

 察するに私の魔剣で斬られたことで術が解けたというのであれば、君の魔法は体力(・・)が発動に大きく影響するのだろう?

 そして、今の君にはすでに魔法を発動することができる体力は残されていない。

 例え残っていたとしてもまた削るだけさ。

 私の≪魔剣ダインスレイヴ≫の固有能力(ユニークアビリティ)、――――≪根源喰らい(オリジン・イーター)≫でね」


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