パートナー
引き続きノエル回でございます!どうぞ
「ところでノエルはどんな装備が欲しいんだ?」
「……動きやすいもの…武器は見てから決める」
そんな会話をしながら歩いているとすぐに武具屋に到着した。
「いらっしゃい、今日は…って昨日の兄ちゃんじゃねーか、二日連続なんてどうしたんだい?」
何故か武具屋の店主も彰のことを覚えていた。彰は何かしたかと考えてみるがここでは本当に何もした記憶はなかった。ただ普通に買い物をしただけである。
「なんで俺のこと覚えてるんですか?」
「いやな、結構高い装備をさらっと買って行ったからよく覚えてるんだよ」
「え、あれって高いんですか…武器は基本あれくらいするもんだとばっかり…」
「ん~剣はともかく防具は結構高い方だと思うぞ?そうか、知らなかったのか、悪いことしたな兄ちゃん」
「いえ、大丈夫です。ここでけちって大けがするよりいいんで…」
彰はこの時初めて自分の金銭感覚が狂い始めていることに気づいたのだった。ここで装備を買ったらこれからは節約しようと意識を改める。
「そうか…で、今日はどうすんだ兄ちゃん?」
「この子の装備が欲しいんです。値段は俺のと同じくらいでもかまわないんで」
「おお、この子のね…で、どんな装備がいいんだい?お嬢ちゃん」
「……防具は動きやすいの…武器は決めてない」
「う~ん、決めてないか…ならボウガンなんてどうだい?」
「……ボウガン…?」
「そうボウガンだ、比較的女、子供でも使いやすいし昨日の装備だと近接戦闘はこっちの兄ちゃんがしてくれるんだろ?なら一人は遠距離が使えるといいと思うんだが…どうだ?」
「……見てみたい」
「わかった。じゃあ今持ってくるよ、待ってな」
そう言って奥に行く店主。少しすると店主が戻って来た。
その手にはノエルでも頑張れば片手で持てる位の大きさのボウガンと彰と似たような皮の防具の茶色版を持っていた。
「防具は兄ちゃんと同じタイプの奴だな、でこっちがボウガンだ。値段は兄ちゃんのと同じくらいなんだが…」
「大丈夫ですよ、気にしないで下さい。それで、どうだ?ノエル」
「……少し待って」
ノエルは店主の持ってきたボウガンを持ってみたり構えて見たりした後、なんか満足した感じの顔をする。
「……これでいい」
(ノエルがいいって言うならこれでいいか、付与術との相性も良さそうだしな)
「店主これ今持ってきたものとこれ用の矢を大量にくれ、後近接用の短剣もひとつ頼む」
「ハイよ、全部で金貨6だが前と同じで付属品付きで5枚でいいぜ、いっぱい買ってくれてるからな」
「さんきゅ、店主」
彰は金貨を払い、買った装備などをノエルにつけさせた後、武具屋を出た。
その後、彰は文字が読めるというノエルにこの世界の文字を教えてもらうため雑貨屋によって適当な本を買った。
活版印刷がまだないらしく、手書きで本を書いているせいなのか少し値段が高かったが、これも必要経費と割り切った。
そうして宿に戻って来た彰達だったのだが…ここであることに気づいた。ベッドが一つしかないのだ。
彰は急いで女将さんに言いに行き、何とかベッドの二つある部屋に移してもらった。
彰達は夕飯をおいしくいただいたあと、いざ寝ようとしたのだが…
「おい、ノエル、なぜお前はせっかくベッドを2つにしたのにこっちのベッドに来るんだ?」
「……?」
「なんで何言ってるかわからないって顔してんの!?」
何故かノエルが彰のベッドの方に来るのだ。これではベッドが2つある部屋に移動して来た意味がない。
そう思って激しく反論する彰に淡々と言い返すノエル。
「……私…アキラの奴隷…夜の相手は…奴隷の責務」
そう言うとノエルは着ていた服を脱いで抱きついてきた。
「な!?…ちょ、ノエル!?」
今の彰は寝る前で防具を外している。
よって抱きついているノエルから漂ってくる女の子独特の甘い香りが鼻腔をくすぐり、密着している肌からはほんのりと温かい人肌の感触と柔らかさが彰にへとダイレクトに伝わってくる。
ノエルの胸は大きくはないがそれでも抱きつかれ、密着されていればその発展途上の感触が嫌でもわかってしまう。まぁ彰も嫌なわけではないのだが…。
とにかく、上目づかいで彰を見てくるノエルの姿はとても扇情的で彰はこのままではどうにかなってしまいそうだった。
しかし、彰はそこで彼女の体が震えていることに気づいた。慌ててノエルを引き離して服を着させる。
それでもその際見えてしまい、頭に焼き付いてしまった胸のイメージを頭を振って振り払うとノエルの方を向いた。
「ノエル、何でこんなことをしたんだ?」
「……私は…アキラの奴隷だから…」
「でももうノエルに首輪は無いんだ、嫌なのにそんなことをする必要はないはずだ」
「……だって…捨てて欲しくなかったから…」
と暗い顔で俯くノエル。どうやらあれだけ言っても信じられなかったらしい。
彰は今度こそ自分の気持ちを伝えようとノエルの目を見て言った。
「ノエル、お前は自分のことを俺の奴隷だと言っているが俺はそう思ったことはない」
「……え…そんな…」
「最後まで聞け、俺はノエルのことは大切なパートナーだと思ってる」
「………パートナー?」
「そうだ、お互いのダメなところをそれぞれの長所でカバーしあって、時には怒ったり、時には一緒に笑ったりできる、そんなパートナーになりたいんだ。
そんなノエルのことを見捨てるなんてことは絶対にない!これでも信じてもらえないか?」
顔を下げて考え込むノエル。彰は信じてもらえるかだんだん心配になってきていたがノエルはやがて満足そうな顔をすると答えた。
「……パートナー、いい響き…」
「なら…」
「……わかった…信じる」
「そうか、ありがとな」
彰が自分を信じてくれたことにお礼を言うとノエルは今日一番の笑顔で笑った。
「……やっぱり…アキラは優しい…私を買ったのが…アキラで良かった」
この夜、彰はノエルと本当の意味で分かりあえた気がした。
だが、この後一人で寝ると奴隷時代を思い出して怖いというノエルの強い主張により、結局二人は一つのベッドで寝ることになり、彰は一人ドキドキして眠れぬ夜を過ごしたのだった。
いかがでしたでしょうか?
無口キャラって表現が少し難しいですね……
読んでいただきありがとうございました。




