奴隷
だんだんお気に入り登録数などが増えてきてうれしい限りです。
それでは本日分どうぞ!
翌日、彰は女将さんがドアをノックする音で起こされた。
彰はさっと身支度を整え、一階で朝食をとると外に出る。
彰は本来なら今日から早速依頼を受けてお金を稼ぐつもりだったのだが、先日の予想外の収入で当分はお金の心配がいらなくなったこともあり、今日は装備などを整えるついでに軽く王都を見て回ることにしたのだ。
「さて、とりあえず適当に歩き回ってみるかな」
そう決めると彰は王都の町を歩き始める。
少し歩くと武具を扱っている店を見つけた。彰は今日の主な目的は装備を整えることだったのでまずはそこに入ってみることにする。
中には外からうっすら見えた通り、様々な防具や武器が並んでいた。すると、
「いらっしゃい、今日はどんなもんをお求めで?」
と、厳ついおじさんが彰に話しかけてきた。恐らくここの店主だろうと予想する彰。
「軽くて動きやすい防具一式と短剣をいくつか、それに扱いやすい剣を探してるんですが…」
「そうか、ボウズに合いそうなもんっていうと…ちょっと待ってな」
しばらくすると店主が何かをたくさん抱えて戻って来た。
「これなんかいいと思うが…どうだ?」
店主が持ってきたのは黒い革でできた防具一式、ナイフを十本、そして持ち手の黒い西洋剣だった。
彰はそれらを軽く振ったりして、感覚を確認する。
「うん、悪くないかな?店主、これ全部でいくら?」
「そうだな…それの合計ならナイフが1本銀貨1枚、剣は金貨2枚、防具も金貨2枚ってとこだから本来なら全部で金貨5枚だ。
でもこれを全部買ってくれんなら4に負けて付属品もサービスしてやる。どうだ?」
「わかった。それで買うよ」
彰は袋から金貨を4枚取り出して店主に渡す。
「ハイよ確かに、今ベルトとかいろいろ持って来てやるから待ってな」
少しすると店主がいろいろ持ってきてくれたので、彰が買ったものなどを全て装備してみると黒い作務衣のせいかなんか忍者みたいになってしまった。
しかしこれはこれで動きやすくて気に入った彰は上機嫌で店を後にした。
それからもその恰好で街を見て回る彰。
次に目に留まったのは雑貨屋だった。
一人で冒険する上で恐ろしいのは毒などである。
まぁそれも付与術をうまく使えば何とかなるのかもしれないが彰としてはそれに対応したアイテムがあるなら持っておくに越したことはなかった。
彰は中に入ると普通に生活するのに必要な物、靴などをいくつかと予定通り毒消しのポーション、それから傷薬も購入しておいた。
また王都散策に戻る彰。
その後も彰は露店がたくさん出ている場所では珍しい物の数々に目を輝かせていた。
中でもゴブリンの串焼きはゲテモノを覚悟して買ったにもかかわらず、その想像を絶するおいしさに感動し、涙を流したほどだ。
そして日も落ち始め、そろそろ帰ろうかと思っていたころに彰はある店を見つけた。
それは少し古ぼけた感じの店で、人の出入りは少なかった。
「変な店だな?一体何を売ってるんだ?」
彰はそのお店に何故か興味をひかれ、何かに導かれるかのようにそのお店に向かった。
中は思ったよりも広かった。そしてそこには何故か檻があり、何人かの人々がその檻の中を熱心に見つめていた。
「檻の中に何か……ッ!?これは…」
檻の中にいたのは手には手錠がかけられ、服は穴を空けただけのボロ布を着ただけの者達だった。
その者達の中には普通の人もいれば頭から動物の耳が生えているものや肌が鱗で覆われているものなど様々な者達がいた。
「奴隷ってやつか…」
そう、彰が入った店は奴隷商館だったのだ。
彰は奴隷が存在する可能性を考えていなかったわけではなかったが実際に存在しているのを見るのはやはりいい気分ではなかった。
「おや?お若いお客様だ。本日はどういった奴隷をお求めで?」
そこにブクブクと豚のように太った店主が顔をニヤニヤと歪ませながらやって来た。
彰はその姿に嫌悪感を隠せず、すぐにそこを出て行こうとする。
「おやおや、もう帰られるのですか…またのお越しをお待ちしております」
(二度と来るかよ…)
そう思いながら奴隷商館を出て行こうとドアに手を掛ける彰、しかしその手を、
―――――コホッコホッ!
という誰かの咳の音が止めた。
音のする方を彰がよく見ると檻の角に寒いのだろうか?小さく縮こまっている黒くて長い髪の女の子がいた。その頭からは猫耳のようなものが生えている。
その子が心配になった彰は店主にそれを教える。
「おい店主、あの子病気なんじゃないか?」
しかし、それを聞いた店主は顔色一つ変えずに、
「そうですね、処女の女なのでもったいないですが処分しますかね…」
と、答えた。彰は一瞬その言葉の意味が理解できなかった。
「………は?お前、何言ってんだよ…お前の、その…商品なんだろ?管理するのはお前の責任じゃないのか?」
「そうは言われましても…病気を治すには治癒魔導士の力が必要ですが高いですしね…あれは処分が妥当でしょう」
彰はこの男の言っていること一つ一つが理解できなかった。否、したくなかったのだ。
平然と目の前の病気にかかっている少女を見て、そんなことを言える人間がいるということを信じたくなかったのである。
彰が店主とそんな問答を繰り広げる間もその咳は止まらない、いや、むしろ酷くなっていた。そして……
「おい、店主、あの子はいくらだ…」
彰は気がつくとそう口にしていた。
「えっあれをお買上げなさるんですか?あれなら病気持ちなので金貨10枚のとこを5枚でいいですよ」
彰は袋から5枚の金貨を取り出すと店主の方に投げすてた。それを慌てて受け取る店主。
「これでいいだろ?早くあの子を檻からだせ」
「まったく乱暴なお方だ。今出しますよ」
店主は言って鍵を取り出すと檻を開けて少女連れて出てきた。その少女は彰よりも少し小さかった。
手錠を外す店主。しかしその少女の首には変な首輪が付いていた。
「おい店主、その首輪はなんだ?」
「知らないんですかい?これは奴隷がつける首輪で主人に逆らうと電流が流れるよう魔法が掛けられてるんですよ。
さぁこの首輪に血をつけて下さい。それで終わりです。」
彰は店主との話を早く終わらせ、少女を一刻も早く手当したかったのでやむおえず首輪に血をつけた。
「はい、これでリンクしました。これでこいつはあなたのものですよ。どうぞお連れ帰り下さい」
彰は少女を連れてすぐに奴隷商館を出ると、彼女をお姫様抱っこした。
少女の体は羽のように軽かった。
「ゴホゴホッ!……………誰?」
「待ってろ、今暖かいとこに連れてってやるからな」
「…………?」
少女はそれを理解できないような目で見つめる。
彰はそれに構わず”高速化”を掛けて宿まで走った。
急いで中に入る彰。少女の意識はすでにない。
「女将さん!俺の部屋一人追加しておいてくれッ!代金は先払いの分から引いてくれて構わないからッ!」
彰は女将さんに一方的にそれだけ言うと自分の部屋へと向い、中に入ると少女をベッドに寝かせ、付与術を掛ける。
(特性付与―――”免疫力強化”)
すると少しづつ少女の顔色がよくなってきた。それを見て安心する彰。
彰は水を入れた桶や、布などを持ってくるとそのままその少女の看病を始めるのだった。
ええっと、毎日更新の方なのですが…一旦止め…ません!
奇跡的にまだストックがある、というか増やしてるのでまだもう少し大丈夫そうです。
というわけでストックの続く限り毎日更新させていただこうと思います。
それではこれからも付与術師の異世界ライフをよろしくお願いします。
良かったら感想などをいただけると作者は嬉しいです。




