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疑い

「おお~スゲーなこりゃ!!」



 彰は初めて見る王都の風景に感動していた。



「なんか、中世のヨーロッパにタイムスリップしたみたいだ」



 王都の中はまるで中世ヨーロッパのような感じの街並みだった。


 大通りでは木製の屋台が食べ物などを売っている。


 また、武器や防具、そしてRPG風に言うとポーションのようなものも売ってる店があるのはのは異世界ならではだろう。


 彰は初めて来た王都に感動し、周りをキョロキョロしながら、対して子供達は再び見ることができた懐かしい街並みに感動しながらも門番に言われたとおり大通りを道なりに進んでいき、王都騎士団の詰所へと向かった。


 そして子供達の協力もあって何とか彰達は詰所を見つけることができた。


 詰所は門番の言っていた通りいかにもな感じのとても大きな建物だった。


 彰達は早速中に入り、受付へと向かう。



「いらっしゃいませ、本日は王都騎士団に何かご用でしょうか?」

「はい、助けた子供達をここまで連れてきたら、最初にここに向かってこの書類を渡せと言われたんですけど…」

「それはそれは!!少々お待ちください」



 受付の女の人は書類を受け取ると奥に引っ込んで行った。


 そしてしばらくすると奥からいかにも騎士という感じの甲冑を着て、無精髭を生やしたダンディなおじさんと金髪イケメンと赤いロングヘアーの女の人を連れてきた。



「君か、行方不明の子供達を助けて、連れて来てくれた少年というのは?」

「はい、そうですけど…あなたは?」

「あぁ自己紹介が遅れたね。

この王都騎士団の隊長を任されているジャックだ。こちらは部下のロイとエレナだ。

「よろしく」

「よろしくね」



 彰は突然出てきたこの騎士達に戸惑いながらも挨拶を返す。



「えっと、俺の名前は鬼道 彰です。こちらこそよろしくお願いします。」

「そうか、ではアキラ君今回のこと、本当にありがとう」



 そう答えるとジャックは自分が隊長なのにも関わらずしっかりと頭を下げてきた。


 彰はそれに戸惑いつつもその丁寧な対応からこの人もいい人そうだと少し安心する。



「ッ!?隊長!!何もそこまで…」



 と金髪イケメンが隊長を軽く諌める。女の人は戸惑っておろおろしている。



「そうです頭を上げてください、別に大したことしてませんから」



 彰もイケメンに同調するように言う。 


 それもそうだ彰の感覚ではタール村の子達を助けたついでのようなものだったのだ。


 それをここまで大きく感謝されると逆に罪悪感を覚えてしまう。



「そうか、でも本当にありがとうアキラ君。

 実はアキラ君が連れて来てくれた子供達はこの辺でもかなり力をつけ始めていた盗賊団―――ハーメルンに攫われたとみられていた子供達でね。

 たくさんの捜索願いが上がっていたのでハーメルン討伐隊を編成して倒しに向かおうとしていたのだよ。

 それをアキラ君が連れて来てくれたからね、こちらとしては救出する手間が減ってありがたい限りなのさ」

「そうだったんですか…それはよかったです」

「ところで、アキラ君はこの子達をどこで見つけたんだい?」

「えっと、普通に捕まってたのを助けたんですが…」



 彰のその発言に驚く三人。


 一人で盗賊団から子供を助けるのは普通とは言わないのだが、彰はそれをわかっていない。


 当然それに疑いを持ったジャックが質問を重ねる。



「えっ?捕まってたって盗賊団にかい?」

「はい、そうですけど…」

「森で迷っていたんじゃなくて?」

「はい」

「アキラ君はどうやって子供達を助けたんだい?」

「えっ、普通にボコしたんですけど…」

「ボコしたってそれは一人で?」

「はい」



 彰がそう答えると横で見ていたロイが口を挟んできた。



「ハハハ、アキラ君は冗談がうまいね!!一人で盗賊団を壊滅させられるわけないじゃないか、まして君みたいな子が一人で!!」




 と言って彰をバカにするかのように笑うロイ。


 しかし、その会話を聞いていたのか周りの人もあからさまではないが笑っている。


 その反応に少しカチンとくる彰。


 そしておろおろする女の人。



「………?(おかしいな俺今冗談を言ったつもりないんだが…)」



 彰は自分がおかしなことを言った自覚がないため首を傾げた。


 その様子に疑っているジャックも彰が本当のことを言っているのではないのかと思い始める。



「まさか、今のは本当なのかい?」

「はい、子供達に聞けばわかると思いますけど…」

「えっと、その倒した盗賊団はどうしたのかな?」

「とりあえずアジトにしてた洞窟の入り口を塞いで閉じ込めましたが何まずかったですか?」

「いや、別にまずくはないんだが…」

「あとそいつらの一人を捕えて聞き出した話からだとたぶん倒したのそのハーメルンって盗賊団だと思いますよ?」

「………………………」



 彰のその答えに思案顔で黙り込んでしまうジャック。



「なぁボク、冗談はその辺にして本当のことを話した方が身のためだぞ?どうせ森で迷子を見つけただけなんだろうが!」

「ね、ねえアキラ君、ほ、本当のことを話してくれないかな?お、おねがい」


 そう怒鳴るロイとまだ若干おろおろしながら諭すエレナ。


 しかし彰としては嘘は言ってないので困ってしまう、というかイラッとしてしまう



(めんどくさいことになったな……どうしようか?)



 そして訪れる沈黙、訂正ロイはずっと怒鳴っている。


 どうやら自分達でも手をこまねいていたハーメルンをあっさり倒したと言い張る彰が癇に障ったらしい。


 そしてしばらくそうしていたかと思うとジャックは突然顔を上げてとんでもない提案をしてきた。



「すまないがアキラ君、僕と模擬戦をしてもらえないか?」

「えっ!?何でそうなんの?」

「「隊長!?」」



 驚きのために敬語が崩れ、思わず少し素の口調が出てしまう彰。


 ロイとエレナも驚いていた。



「さっきの話が本当か確かめたいんだ。

 子供達から話も聞くがアキラ君の強さを見せてもらう方が手っ取り早いんでね」

「そう言うことなら……その方が俺好みですし」



(それに試してみたい技もあるしな…)



 そうジャックに告げると好戦的な視線をジャックに向ける彰。


 ジャックはその視線を受けるとその顔に笑みを浮かべた。



「そうか、ありがとう。こんな疑うようなことをしてすまない。

 しかし、さっきのが嘘だったらしっかり戦力をそろえて倒しにいかないとまた被害者が出てしまいかねないのでね。

 すまないがわかってもらいたい。」

「大丈夫です。気にしないで下さい」

「そうか、それじゃ奥の訓練場に行こうか、私についてきてくれ」



 訓練場に行こうとする彰とジャック。


 しかしロイがそれを邪魔する。



「隊長がそんなことをする必要はありません!!どうせこいつが嘘ついてるに決まっています!!」



 とロイは強情に主張する。



「ロイ、隊長命令だ。そこをどきなさい」

「しかし隊長―――」



 ロイとジャックが言い争っている間におろおろとこっちに来るエレナ。



「ねえねえ、ほ、本当にこの辺にしといた方がいいよ?隊長すっごく強いんだから。怪我しちゃうよ?」



(この人はあそこで怒鳴っている奴と違って本当に心配してくれているみたいだな……)



「そうなんですか?でも本当に嘘ついてないんです、すいません。それに―――あの人が強いなら是非やりあってみたいですしね」

「へっ?」



 その彰の返答を聞いて戸惑うエレナ。


 それと同時にしぶしぶ道を開けるロイ。


 どうやらやっと説得が終わったらしい。


 まぁもっとも、まだロイはぶつぶつと不満をつぶやいているのだが…



 それはともかくこうして彰はジャックと決闘することになったのだった。



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