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付与術師の異世界ライフ  作者: 畑の神様
タール村編
14/93

反撃

(よかったアキラお兄ちゃん無事だ……)

(さすがアキラ兄ちゃんだぜッ!)



 無傷の彰を見て安心するエマ達。



「なぜだ…なぜあれをくらって奴は無傷なんだ!!」



 盗賊の頭は目の前で起こった現象が理解できなくて叫ぶ。


 しかし彰が雷電そのものになったのだから雷撃が効かないのはわかるとしてもなぜ火の球や爆発の炎まで防ぐことができたのか……。

 それは彰の体を構成する電流に秘密がある。

 炎に含まれる電子、イオン、煤煙すすの電場に干渉して電気を使ってバーナーから炎を“押しのける”という技術が存在するのをご存じだろうか。

 彰はこれと同じように自身の強力な電気により周囲の炎に含まれる電子、イオン、煤煙すすの電場に干渉、自分の周囲から炎そのものを“押しのけ”たのだ。

 もちろん、彰もそんな原理を完全に理解していたわけではない。

 ただ感覚的にできると判断し、完全に本人のセンスのみでそれをやってのけたのだ。

 彰は確かに救いようがない程のバカではあるが戦闘に関するセンスは一級品なのである。



 「うあぁぁぁー!魔法を止めるな!放て放て!」



 理解の出来ないことを見せられ、錯乱した指揮官は魔法が使える者に魔法をどんどん打ち込むように指示する。

 しかしそれを彰は避けようともせず電撃はそのまま地面に流し、炎は全て電場への干渉で全て受け流した。



(アキラお兄ちゃん……)

(すげぇ……)



 と尊敬のまなざしを向けるエマ達。



「おいおい、これで終わりか?もの足りねぇーな?」



 と余裕を見せる彰。しかし実際は…



(やばい、かなり持ってかれるとは思ってたがこりゃ想像以上だ。

 しかもなんだこれ、変化してるだけでかなり体力を持ってかれる!

 このままだと1分もつかもたないかってとこか……こりゃ早めに決めないとまずいな…)


 と焦っていた。それもそのはず、今まで彰が使っていた付与術は元から持ってるものを強化したりしていただけ、≪透明化≫にしてもただ光の方向を変えていただけだった。


 しかしこの物質変化の付与術は違う。自分自身を完全に違う物質に変えている(・・・・・・・・・・)のだ。


 それはあり得ないことを無理やり引き起こしているということになる。

 今までより多く体力が持っていかれるのも当たり前だ。

 しかし、そんなことが盗賊達にわかるはずもない。

 よって焦っているのは彰だけではない。



「うるせぇ!まだ数ではこっちが勝ってるってるんだ!やるぞてめぇら、かかれっ!!」



 焦りを隠せない頭のその叫びと共にもう一度向かって来る盗賊達。


 そして一番最初に近づいた男が何故か逃げない彰をその剣で袈裟懸けに切り裂いた。



―――――しかし、それは悪手だ。倒れたのは彰ではなく切り裂いたはずの男の方だった。



「残念だったな。≪雷化≫した俺には物理攻撃は効かねぇーんだよ」



 そう、今の彰は電気そのものなのだ。


 電気は物質ではない、よってそもそも切られるという概念が存在しないのだ。

 

 それどころか電気そのものを“鉄”でできている剣で切り裂こうとすればどうなるか?つまり男は彰に感電し、気絶したのだ。



「さて、今度はこっちからいくぞ?」



 彰はそう告げると今度は自分が攻勢に出る。



―――――瞬間、閃光が走った。



 そして指揮官が気づいたときには隣に居た部下が気絶していた。



「………は?」



(一体何が起こった?何故こいつは気絶している?

 あいつはいったい何をした?)



 しかし指揮官がそう考えている間にも盗賊達は一人、また一人と感電し、倒れていく。

 だが彰がやっていることと言えばただ高速で移動しながら盗賊達を一人一人に触れているだけだ。

 しかしそれが電気になり、稲妻と同じ速度で動くことの出来る今の彰がすれば最強の攻撃となる。



「う、嘘だろ…百人超はいたんだぞっ!? それが…たった、たった一人に……」



 ほどなくして盗賊達は全員感電し、気絶させられていた。

 そしてやはりというべきだろうか?

 自分自身を雷にするなどという荒業は長くは維持できず、戦闘が終わるとすぐに”雷化”は自然に解けてしまった。



「ハァ…ハァ…こりゃ、体力が、全快でも、3分が限界か……っと」



 彰はそのまま倒れそうになる体を必死に起こす。

 まだ脱出したわけではないのだ。盗賊の残党がいないとも限らない。

 彰は子供達を連れて、急いで洞窟から脱出する必要があった。

 なので彰は気を抜くと倒れそうになる体に鞭をうって立ち上がり、子供達を迎えに行こうとする。

 そこで戦いが終わったのらしいのを確認し、彰の所へと近づいていくエマ達。



「アキラお兄ちゃ~ん!!」



 そう言いながら彰に抱きつくエマ。



「うわっおまえら!?待ってろって言ったろ?」

「ニッシッシ、アキラ兄ちゃんが心配だったんだよ」

「お前もかクリス…」

「何言ってるのクリス君!心配してたのはクリス君達じゃん!!」

「それは自分の状況を見てから言えよな」

「えっ?……あ…」



 そこで自分が思いっきり抱きついていたことに気づき顔を真っ赤にしながら離れるエマ。



「ハハ、とりあえず帰ろう、タール村に」



 彰はエマの頭を撫でながら笑ってそう告げた。

 そしてそのすぐあと、彰は助けた子供達全員を連れて洞窟の外に出た。


 念のために洞窟の入り口は彰達が出た後に入り口の天井を彰が”怪力化”で殴って崩落させ、塞いでおく。

 あとのことはタール村の人たちの判断に任せようと、彰はその場を後にした。




◆◆◆◆




 彰達が村に到着すると村の人達が全員でそれぞれくわなどを手に子供達を助けに行こうとしていた。

 どうやらアリスはちゃんと村の人達にこの危機を伝えてくれたらしい。

 彰は皆を連れて村に入ろうとするが……


「みな、準備はいいか!!」

『おお~!!』

「アリスちゃんによるとアキラ君は一人で皆の救出に向かってしまったらしい。

 私達も準備に時間がかかってしまった…

 恐らく今頃は一人の手には負えなくなっているだろう。もしかするとアキラ君も捕まっているかもしれん。

 だが、村の者が一段となって戦えば―――――」


「ハハハ……」



 と村長が皆を全力で鼓舞している姿を見てなんとなく入りにくくなってしまう彰。

 しかしその状況を打破したのはタール村の子供達だった。

 彼らは村に到着するや否や、各々の親の元へと駆けていってしまう。



「―――よし、ならば子供達を助けに――『パパぁ~、ママぁ~!!』って、えっ!?」 



 村長の気合の入った号令を遮り、困惑する村長たちをよそに子供達は皆それぞれの親に飛びついた。

 そして子供達は次々に自分で見た救出の時やここまでの道中でクリスとエマから聞いた彰の武勇伝を次々自分の親に語り始める。

 そんな子供達の話を呆然と聞いていたみんなだったが、だんだんと自分たちの子供が無事助かったのだということを理解し始めたのか皆自分の子供を抱いてうれし涙を流していた。



「えっ!?ここに子供達が居るということは……」

「ええーと、どうも、鬼道 彰、ただいま戻りました……」

「アキラ君!!」



 村長の疑問に答えるように暗闇から姿を現す彰。

 その彰を見てタール村の人達は例外なく驚きの表情をする。



「えぇ~とアキラ君、君がここにいて、子供達がここにいるということは…」

「はい、とりあえず壊滅させてきました。エリックさん」



 しれっとそう答える彰にまだ信じられないというような顔をしている一同。

 そんなタール村の皆の聞きたいことを代弁するかのように村長は質問を重ねる。



「それは、一人でかい?」

「まぁ……そうですね」

「因みに賊は?」

「洞窟に閉じ込めておきました。処遇は任せます」 

「後ろの子供達は?」

「一緒に捕まっていたので、つい……で、に……」



 そこまで答えると彰は電池が切れたかのように倒れてしまった。



「アキラっ!!」

「アキラ君っ!!」

「大丈夫かっ!?」



 薄れゆく意識の中彰が最後に見えたのは自分の方に心配そうに駆け寄ってくる村の皆の顔だった。




―――――こうしてタール村を騒がせた子供達の誘拐事件は幕を閉じたのである。




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