暇に戻った少年の思考。
入院中って、暇だよね。
検査入院は特にそう。
自分的にはしんどいところが無い状態で、病室でじっとしているのは苦痛すら伴う気がする。
まだ、入院して三日目か……。
あと何日こうしてないといけないんだったかな?
昼食を食べ終わると、また暇になってそんなことを考えはじめた。
ベッドの上で転がってみたり、窓の外を見てみたり。色々やってみても、すぐに飽きる。知り尽くした間取りに、知り尽くした景色だもんね。退屈して当然だよ。
「暇だな……」
口から出るものといえば、この言葉か欠伸くらいだ。
言っていても仕方がないのはわかっているけど、睡眠も充分すぎるし、することもないし、話し相手もいない。暇だ暇だ暇だ。
こんなことなら、課題なんか早めに終わらせるんじゃなかった。
残しておけば今やることができたのに。
数学辺りを全部残しておくんだった。
かなり時間が掛かった課題だった。
僕は数学があまり得意ではない。
…………この際なんでもいいから、とにかくやることが欲しい。
さっき食べた昼食は、すごく味が薄かった。
病院食らしいと言えばらしいけど、塩鮭なのに塩味がしないのはどうなんだろう。
いや、厳密に言えば塩味はしていたが、限りなく薄いものだった。
病院食に慣れていた頃は、これが普通だと思っていたのが信じられない。まずくはないけど。
濃い党な彼は無言になるだろうね。文句は言わなさそうだけど。
最近仲違いしてしまった、天然茶髪の持ち主である友人を思い浮かべて、そんなことを思った。
学校で昼食として食べる弁当――というか、彼はサンドイッチを買って持ってきていたけど、そのサンドイッチにかなりの量の塩を掛けていて、驚いたのを覚えている。
涼しい顔をして彼が掛けた塩は、サンドイッチを差し置いて塩が味を支配しそうな程の量だった。
常にソースやマヨネーズなどの類の物をあんなに掛けるのだとしたら、彼が太らずに寧ろ痩せていられるのが不思議で仕方ない。
特にマヨネーズが好きなわけでも、ソースが好きなわけでもなく、ただ味が濃い物が好きなだけらしい。
それでいて甘いものは食べられないと言うから、人の嗜好は一概には言えないものだと思う。多種多様、三者三様、十人十色だ。
自分と揉めた人間のことを考えるのは、多少なりとも不快感を煽るものだ。
しかし今は、この退屈の中で考えることがあるのに感謝すらすれど、不快感を抱くことはなかった。
あれほど腹を立てていたのにも関わらず、叶に対しての怒りはさっぱりと成りを潜めていた。
やはり叶のあの行動には、何か理由があったのではないかと思えて仕方がないのだ。
しかし、どんな理由であったにせよ、僕は叶に一度傷付けられた。だから、怒りが殆んど消えたとはいえ、無条件に許してやる気にはなれない。
でも、このまま疎遠になるのは嫌だ。
きちんと話して、仲直りするのが一番だろう。
「……告白するのは、それからだね」
こんなもやもやしたままじゃ、お姉さんにも失礼だよ。
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