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向日葵―命の花―  作者: 藍川 透
入院まで、あと1日
28/47

幸せは。

「悠ちゃん、悠ちゃん」


 肩を揺さぶられ、名前を呼ばれて、僕は目を開けた。


「おはよう」


 目の前には、口元に優しい微笑みを湛えてそう言ったおばあちゃん。


「うん……おはよう」


 身体を起こして、気付いた。

 自分が机に突っ伏して寝ていたことに。

 無理な体制で寝ていた為に、肩が痛い。背中も、全身がバキバキだ。

 少し視線をずらすと、ほぼ完成したあの絵。

 どうやら、絵を描きながら寝てしまったようだ。取り敢えず、絵が汚れていないことに一安心。


「夜御飯食べ終わってからすぐに二階うえに行って、遅くまで何かしてると思ったら……」


 おばあちゃんも絵を見る。


「綺麗な絵ねぇ。この女の子も美人さん」


「ありがとう」 


 お姉さんを真ん中に描いた。少し前に一緒に撮った写真を見ながら描いたのだけれど、やはり人の特徴を掴んで描くのは少し難しかった。


「朝御飯できてるよ。先に食べてしまいなさい」


 食べ終わったら、検査入院の用意もしないとねぇ……。

 と言って、おばあちゃんは一階したに降りて行った。


 結局昨日も殆んど一日中絵を描いていたし、一昨日も帰ってきてからずっと絵を描いていた。どちらも、かなり夜中まで描いてたし。昨日なんかそのまま寝てるしね。


 これだけ集中して絵を描いたのは、いつ以来だろう。


 放ったらかしにしていた間を日数にいれなければ、今までで一番早く仕上がりそうだ。あとは色を付けるだけ。


 出来上がったら……そうだな、この絵を見せて、気持ちを伝えるつもり。


 きっと、勝ち負けじゃないんだ。

 どんなに勝ち目がなくても、これだけは必死で伝えるしかないんだ。

 結果が出るまで諦めちゃダメなんだ。


 最後の、一秒まで。


 理屈じゃない。気持ちの問題だから。心が叫ぶから。


 長くないなら、他の人より短い時間で濃い人生を送れば良い。

 

 今こそ、それを実行する時じゃないか。


 砕けても良い。伝えたっていう事実が大事なんだ。

 

 最期のとき、良い人生だったって笑えるように、こんなやついたなって、思い出してもらえるように。


 そして、何より――――やり残したことがあるのは、嫌だから。


 もし、この想いが実ったら。


 その時はきっと、約束するよ。


 君を幸せにしてみせるって。


 神様に祈ったりはしないよ。



 だって、幸せは自分の手で掴み取るもの、でしょ?

 


 


 


 

 終わりが見えた!!


 

 お読みいただき、ありがとうございました。

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