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向日葵―命の花―  作者: 藍川 透
閑話(検査入院まであと3日)
25/47

昔話。

でぃすいずべりーろんぐすとーりー、おーけー?(笑) 

 

 声の方を勢いよく見ると、


「そんなに怖い顔で睨まないでよ」


 のんびりと微笑まれた。


荒城(あらき)先輩……」


 俺は、その人の名前を呼んだ。


「久し振りだね、二人とも。元気そうじゃない」


 この人が、俺の前の男バスのキャプテンだ。

 でも……。


「なんでここにいるんですか」


「まぁ、いいから。二人とも、ちょっと落ち着いて周りを見てごらん。みんなびっくりしてるよ?」


 言われるままに辺りを見回すと、視線が痛いほどに突き刺さってきた。途中から、周りのことをすっかり忘れていた。


「わかったかな? ここじゃなんだし、どっか入ろうか。俺も話を聞こうじゃない」


 微笑みをそのままに、先輩はそう提案してきた。


「どうせ、これからの部の方針についてでしょ? 俺は中立の立場でちゃんとジャッジするからさ。あそこの喫茶店でどう?」


「先輩……っ、いいですよそんなの!! 俺とこいつでなんとか……」


「なるわけないよねぇ。そのうち二人とも、また熱くなっちゃうに決まってる」


 遮られてしまった。

 しかも、正論なだけあって言い返せない。


「けど……っ」


「いいって。どうせ暇なんだから。でも、どうしてもって言うなら……そうだな、お代は叶が持ってくれるってことで」


 俺、好きなんだよねぇ。あそこのケーキ。


 そう続けながら、先輩は俺と笹原の手首を掴む。


「ちょっと!! つか金は……!!」


「ほーら、行くよ。笹原さんも」


 

 なかなか力が強く、あっという間に喫茶店に引きずり込まれてしまった。

 先輩は、店の一番奥の席に案内も待たずに、勝手に陣取る。


 仕事がなくなって、突っ立っているウエイトレスが可哀想だった。


 優しそうにみえて、実際はかなり強引かつ強かな人だ。


「早く座りなよ。え? 注文? じゃあ、このチョコレートケーキにするよ。飲み物は……なんでもいいよ。おすすめみたいなのある? ケーキに合いそうなので。うん、よろしくね」


 勝手に陣取った上、早く座れときた。


 仕方なく座ると、ショックから立ち直ったウエイトレスが注文を取りにきていた。


 というか先輩、絶対メニューの一番上にあったやつ選んだよな。この、とか言ってたし。

 

「お客様方は如何なさいますか?」


 ウエイトレスは俺達にも注文を聞いてくる。


「……じゃあ、アイスコーヒーで」


「私は、苺のショートケーキと紅茶で」


 こいつ、茶葉はどうするんだ? 


「茶葉のご希望はございますか?」


 やっぱり聞かれるか。

 さぁ、どう答える?


「紅茶はあんまり詳しくないから、なんでもいいです」


 ……だよな。

 こいつが茶に詳しいところなんて、想像できない。


「さて、本題に入ろうか。二人とも、そろそろ頭が冷えたんじゃない? って、あれ?」


 話を切り出した先輩が微妙な表情で、俺と笹原を交互に見る。


「どうしたんですか?」


「ちょっと待って。この配置、おかしいでしょ」


 俺たちが座ったテーブルは、長方形の四辺のうち、長い二辺に二人ずつ座るようになっている、よくある四人掛けだ。

 そのテーブルに、三人が座った。

 短い辺を使うなど、変わった使い方をしない限り、必然的に片方に二人、もう片方に一人が座ることになる。

 先輩はその配置について指摘しているようだった。


「なにが、ですか?」


 俺は気付かない振りをして聞き返した。

 

 わざとやってるんだよ。

 そこは指摘せずに華麗な技でもってスルーしてくれ。 


「なんで笹原さんと叶が並んで座って、俺が一人? 二人が向かい合って、どっちかの隣に俺がいるのが正しいでしょ、この場合。二人が話し合うんだから。これじゃあ俺が問い詰められるみたいじゃない」 


「それは……」


「席替え席替え。叶、こっちおいで」


 先輩は、にこやかに自分の隣の椅子を叩く。


「……げ」


 この先輩の隣に座って良いことが起こった試しがない。


「聞こえてるよ? 何が、げ、なのかな?」


 ……地獄耳め。


「笹原、先輩の隣に」


 押し付けて逃げを図った。笹原には何もしないだろう。


「ダメだよ。叶? お、い、で」


 短く区切って、にこっと微笑みかけられる。

 ……ここまで笑顔が恐ろしいと感じたのは、生まれて初めてだ。


「……はい」


 もう、従う以外に道は残されていなかった。


「……さて、本題に入ろうか。まず、両者の言い分から」


「……もう、いいです。なんかどうでも良くなりました。俺がそこまで口出すこともなかったかなって」


 座席配置の一件を挟み、馬鹿馬鹿しくなってきた。


「それに、落ち着いてみたら年上甲斐なかったし」


「そ。笹原さんは?」


 先輩は頷き、笹原に振った。


「……私も、偉そうなこと言っちゃって。叶先輩が言ってくれたこと、間違ってないし……むしろ正しいですから」


「よし、偉いね。これで仲直りだ」


 先輩に頭を軽く数回叩かれる。


「随分冷静に判断できるようになったじゃない」


 小さく囁かれた。まるで俺が部長をやっていた時の事を知っているかのように。


「先輩、あの……まさかとは思うんですけど、俺が部長やってた時の事知ってるんですか?」


 もう、笹原にバレても構わないか。

 そう思った上で、先輩に訊ねた。


「うん。あれはまだ始めの頃かな……。部長のことについて、何度か部員が泣き付いてきたから、こっそり見に行ったことがあったんだ。叶は夢中で気付いてなかったけどね」


 先輩は、そう前置きしてから話し始めた。




 お付き合いいただき、ありがとうございました!!


 先輩の昔話はもう少しだけ続きます。

 

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