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向日葵―命の花―  作者: 藍川 透
閑話(検査入院まであと3日)
24/47

方針。

「先、輩?」


 笹原の少し心配そうな声で、我に返る。


「え? ごめん、なんか言ったか?」


 正直に聞いていなかった旨を伝えると、


「いえ、私はあれから何も言ってないですけど……。なんか、先輩が切なそうに見えたから、どうしたのかなーって思って」


 そんな返事があった。


 なんだ、こいつ。馬鹿そうに見えてよく観察してるな。


「いや、お前が部長で男バスの二の舞になるんじゃねぇかなって未来予想したら、ちょっと切なくなってきて」


 無理矢理、冗談に仕立て上げた。


「そんなこと考えてたんですか!? 心配して損しましたっ!」


 全力で顔を背ける笹原。


「そう怒るなって。後輩を心配する先輩の気持ちくらい察しろよー」


 笹原の顔を覗き込むと、頬を掴まれた。


「もう怒りました!! 先輩なんて知りませんから!!」


 頬を掴んだまま、引っ張られる。


「痛い、痛いって!! つねるなっ」


 思わず大きな声が出てしまい、少し焦る。


 さきほど、商店街に差し掛かった辺りから、どちらかが叫ぶ度に通行人から生温い視線を浴びせられるようになっていた。

 

 バカップルの痴話喧嘩を見るような目で見るんじゃねぇ!!

 

「許して欲しいですか?」


 頬から手を離した笹原は、膨れっ面でこっちを向いた。


「あぁ」


 頷くと、


「敬語で謝ってください」


と、言われた。


「笹原さん、ごめんなさい。許してください」


 恥の欠片も見せずに言い切ってやった。


「面白くない。なんか棒読みだし」


 苛っと来た。


 それに――ちょっと待て。そう言えば、なんでこいつに偉そうに言われてんだ、俺は。

 ちょっとからかったくらいで、すぐ機嫌悪くしやがって。

 人が下手したてに出てるからって調子に乗ってんのか……?


「……しろ」


「え?」


「いい加減にしろ!!」


 笹原の肩が跳ねた。


 ダメだ、とは思った。

 

 せめて、もう少し優しく言ってやろうか――そんな考えもないわけではなかった。


 でも、こいつの為だ。


 もし、ここで俺が甘く指摘したとしても、こいつの性格じゃ本気にしない。笑って受け流そうとするに違いない。

 

 俺ならまだ良い。


 だが、これから先、取り返しの付かない相手を怒らせるようなことがあったら、今まで怒られなかったのにじゃ済まない。


 だから、人目も憚らずに怒鳴った。


「なんで……?」


 笹原は大層驚いている。


「先輩と友達の境目くらいはっきりさせろ!!」


「どういう……」


 笹原の瞳に涙が溢れた。


「泣けばなんとかなると思うな。自分の立場を弁えろって言ってんだよ!!」


「そんなこと……今まで何も言わなかったのに!!」


「後輩は見てるぞ。特に、入部してから日が浅くて、右も左もわからねぇ一年はな。お前がそんなんだと、部全体が上下関係もわからねぇ、礼儀も知らねぇ、どうしようもない集団になるんだ。取り返しの付かない失敗やらかしてからじゃ遅ぇんだ。それからいくら頭下げても間に合わねぇんだよ!!」


 本当に、よく見ている。これは、俺自身、身に染みて実感したことだった。


「私は……!! 上下関係のある部になんてしたくありません!! みんな平等に、楽しくやりたいんです……っ」


 やっぱりわかってない。

 綺麗事ばかり並べたところで、上手くまとめることはできない。

 


「楽しくやるのと、適当なのは違うだろ? 楽しければなんでもいいのか? お前は女バスを無法地帯にでもするつもりか」    


「違……っ」


「はい、ストーップ!」


 横から、俺と笹原の肩に手を置かれ、制止を掛けられた。


 お互い譲らないタイプだと、こうなります。



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