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笑う亡霊 - Hacker’s Justice  作者: nekorovin2501


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第1話: 影の覚醒

雨が叩きつけるネオン街の夜。2045年の東京、渋谷の地下街は、AI制御の広告ホログラムが乱れ飛ぶ混沌とした世界だった。高層ビル群の隙間を縫うように、自動運転のドローンが飛び交い、街路灯の光が濡れたアスファルトに反射して、歪んだ鏡のように現実を映し出していた。ここは、表向きは繁栄の象徴だが、裏側では企業と政府の腐敗が渦巻くディストピア。人間の体を機械に置き換える「義体化」が普及し、富める者は永遠の命を手に入れ、貧しき者は機械の奴隷となる社会。

影野零は、そんな街の闇に溶け込むように生きていた。30歳の彼は、かつては普通のプログラマーだった。だが、5年前の事故――いや、陰謀――で家族を失い、体をサイボーグ化された。頭部に埋め込まれたニューラル・インターフェースが、彼を超人的なハッカーに変えた。視界に浮かぶデジタルコードの海を泳ぎ、システムの隙間を突く。彼のハンドルネームは「ゴースト」。幽霊のように痕跡を残さず、企業のサーバーを徘徊する。

零は、渋谷の廃墟となった地下バー「シェルター」に潜んでいた。壁は剥がれたコンクリートで、ネオンライトがちらつくだけの薄暗い空間。カウンターに座る零の目は、義体の赤い光を帯びて輝いていた。手に持つのは、改造されたタブレット。画面には、巨大企業「ネクサス・コーポレーション」の内部データが流れていた。

「ふん、またか……」零は独り言を呟いた。ネクサスは、表向きはロボット義体のパイオニア企業だ。だが、零のハッキングで明らかになったのは、人間の意識をAIにアップロードする「ソウル・トランスファー」計画。富裕層が肉体を捨て、デジタル永生を手に入れる技術。問題は、それの実験台が貧民街の住民たちだったこと。強制的に義体化され、意識を抜き取られる。零の家族も、その犠牲者だった。

突然、バー内の古いモニターが緊急ニュースを映し出した。「渋谷中心部で巨大レイバー型ロボットが暴走! 死傷者多数!」画面には、10メートル級の作業用ロボットがビルを破壊する映像。パトレイバーと呼ばれる重機型メカで、本来は建設現場で使われるものだ。だが、今は赤く光る目で暴れ回っている。公安の特殊部隊が投入され、銃撃戦が始まっていた。

零の義体が警戒信号を発した。ニューラル・リンクでニュースの裏側をスキャンすると、暴走ロボットの制御コードにネクサスの痕跡。「テストか……奴らの新兵器の実験だな」零は唇を歪めた。笑うような、だが冷たい表情。かつての笑い男のように、彼はシステムの不正を暴くために動く。だが、社会は彼をテロリストと呼ぶだろう。

バーから出た零は、雨の中を歩き始めた。コートのポケットから小型ドローン「エコー」を取り出す。手のひらサイズのメカで、AIが搭載されている。エコーは零の相棒だ。球体状のボディが浮かび上がり、青いLEDが点滅。「ボス、また無茶する気か? 公安の連中が嗅ぎつけたら、終わりだぜ」エコーの声は、合成音だがユーモアたっぷり。零はそれが気に入っていた。人間味を失った自分に、唯一の会話相手。

「黙れ、エコー。お前は偵察だけしろ」零は命令した。エコーは渋々飛び立ち、暴走現場に向かった。零自身は、街の監視カメラ網をハッキング。視界にカメラの映像がオーバーレイされた。現場はカオス。レイバーが腕を振り回し、車を潰す。公安の捜査官たちが、対メカライフルで応戦している。リーダー格の男、鉄壁と呼ばれるエリート捜査官が指揮を執っていた。「全隊、包囲網を張れ! これはテロだ!」鉄壁の声が、零のリンクで聞こえた。

零は屋上から現場を見下ろした。義体の脚部ブースターで、ビルを飛び移る。雨が顔を叩くが、痛みはない。機械の体は、そんなものを感じない。「ゴースト・モード、起動」零は呟き、自身の存在をデジタル的に消去。監視システムから彼の姿が消えた。まるで幽霊。

エコーから映像が届く。レイバーの内部コードを解析。「ボス、こいつネクサスの遠隔制御だ。ハッキング痕跡あり。奴らの実験で、意図的に暴走させてる」零は頷いた。ネクサスは、この暴走を口実に、新型セキュリティ法を推進しようとしている。ロボット犯罪を増やし、市民の監視を強化。富裕層の支配を固める算段だ。

零は現場に近づき、隠れた位置からハッキングを開始。ニューラル・インターフェースが熱を帯び、視界がコードの渦に変わる。レイバーのファイアウォールに侵入。壁は厚いが、零のスキルはそれを突破。「笑え、機械の亡霊」零は心の中で呟いた。彼のシグネチャー――笑う仮面のウイルスが、システムに注入される。レイバーの動きが止まり、目が青く変わる。零のコントロール下に。

だが、予想外の反撃。レイバーのAIが逆ハックを仕掛けてきた。「警告: 侵入者検知。カウンター・アタック」零の義体に電流が走る。頭痛のような幻覚。過去の記憶がフラッシュバックした。家族の死、義体化の手術。ネクサスのラボで、意識を抜き取られそうになった瞬間。「くそ……」零は歯を食いしばった。

公安の鉄壁が気づいた。「ロボットの動きが変わった! ハッカーの介入だ!」鉄壁の部隊が零の位置を囲む。レーザーサイトが零の胸に集中。「テロリスト、ゴースト! 投降しろ!」鉄壁の声は冷徹。だが、零は知っていた。鉄壁はネクサスの手先。内部資料で確認済み。

エコーが援護に飛ぶ。「ボス、逃げろ! 俺が陽動する」ドローンが爆音を立て、煙幕を展開。零はブースターで跳躍、ビルを駆け上る。レイバーを遠隔操作し、公安の車両をブロック。街はパニック。ニュースヘリが上空を飛び、零の仮面ウイルスが画面に映る。笑う顔のアイコンが、全国に広がった。「これは警告だ。ネクサスの闇を暴く」零のメッセージが、放送を乗っ取る。

逃走中、零はサイバースペースに潜った。仮想空間は、ネオン輝く無限のグリッド。ネクサスのサーバーに深く侵入。そこにあったのは、ソウル・トランスファーの詳細データ。人間の魂をロボットに移植し、AIとして操る技術。零の家族も、それの実験体だった。「許さん……」零の義体が震えた。感情? 機械の体に、そんなものが残っているのか。

だが、サーバーの奥で待ち構えていたのは、強力なAIガーディアン。赤い影のような存在。「侵入者、排除」AIの声が響く。零はハッキングバトルに突入。コードの剣を交え、仮想空間で激闘。AIの攻撃が零の精神を削る。トラウマが再現され、家族の叫び声が聞こえる。「お前はもう人間じゃない。機械の亡霊だ」AIが嘲笑う。

零は反撃。笑う仮面ウイルスをフル展開。AIのコアを崩壊させる。「笑え、機械。お前こそ、魂のない殻だ」勝利の瞬間、サーバーからデータをダウンロード。証拠を手に入れた。

現実に戻った零は、雨の路地で息を整えた。エコーが戻る。「ボス、無事か? 公安の追跡は振り切ったぜ」零は頷き、データを暗号化。「これでネクサスの一部を暴ける。だが、まだ始まりだ」彼は知っていた。社会は彼を悪者にするだろう。テロリストの烙印を押す。だが、それが彼の正義。影から闇を斬る。

ニュースでは、暴走事件が「ハッカー・テロ」として報じられていた。零の仮面が全国に知れ渡る。「笑う亡霊」の誕生だ。鉄壁は画面越しに誓う。「ゴースト、お前を捕まえる」零は笑った。本物の笑い。機械の体に、熱いものが蘇る。

この夜、零の戦いが始まった。企業と政府の腐敗を暴く、孤独なハッカーの物語。だが、彼は一人じゃない。エコーがいる。そして、いつか味方が現れるはずだ。

(つづく)

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