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卑怯な旦那様へ

作者: すじお
掲載日:2026/02/08

拝啓



あなたは、本当に不思議な方です。


外のどこにいようと私を捕まえられる程度のGPS魔法をお持ちのくせに、たった一度の食事に来なかったという理由だけで、私有責の婚約破棄を吹っかけてくるのですから。


そんなに便利な魔法をお持ちなら、なぜその一度の食事が「致命的な過失」になるのか、どうしても理解できません。

先日だって、私は馬車で移動していたというのに、わざわざ隣に乗り付けて、窓の外からちらりと私を見ましたよね。

……見えているのに、来ない。

来させないのに、来なかったと責める。


ああ、なるほど。

あなたは私を有責にしたくてたまらないのですね。

だから、こうしてお手紙――いえ、独白を差し上げることにしました。


あなたが、食事の一ヶ月も前から愛人宅に移動なさっていたことは、存じ上げております。

もしその方が「愛人」という名前の本妻で、西の都に住んでいらっしゃるのなら、最初からそう言ってくださればよかったのに。


婚約前から関係が途切れていない方がいらっしゃるのなら、どう見てもそちらの有責です。

私自身、既婚者の男性には一切興味がありませんし、

お子さんまでいらっしゃるとなれば――この婚約そのものに、意味があったのでしょうか?


私が一番嫌いなものは、嘘をつく人です。

けれど、私が食事に行けなかったのは、嘘をつくためではありません。


食事の前日までに、あなたとは違う男の人に襲われたからです。

あなたと、あなたの愛人様が送りつけた刺客だと考えるのが、最も自然でしょう。


そんな状態で、万が一にも托卵などとなれば、

私はあなたと結ばれることはなくなり、

それどころか私の不貞として、どれほどの金額を請求されることになるのか――考えるだけで、身の毛がよだちました。


だから私は行けなかった。

行きたくても、行けなかったのです。



それを示すためにもその日は、ドレスを着たまま、化粧も落とさず、

あなたが私の部屋へ「契りの言葉」を持って来てくださるのを、

お腹の中の赤ちゃんと一緒に待っていました。


……ですが。

翌日、あなたはまるで「計画失敗だ」とでも言いたげにため息をつき、

眠っている私の口元に、中絶させる薬を飲ませましたね。


あなた様の愛人の子供は育てるのに、

私の子供には価値がない――そういうことなのでしょう。


その瞬間、すべてが冷めました。

あなたへの想いも、期待も、未来も。


裏切り、という言葉では足りません。


部屋の中で、あなたが誓いを述べる機会は、何度もありました。

けれどあなたは、ただ一度もそうしなかった。

ただ非人道的に体を求めただけ。


私は、あなた様の所有物ではありません。

結婚届が出されていれば、法の上ではそうなったでしょう。

ですが、これだけの期間待たされ、傷つけられ、それでも届は出されなかった。


――それは、あなた様の有責による契約違反です。


あなた様以外の男性を部屋に呼び寄せ、

眠った私を襲わせたことは、明確な犯罪です。

その件にあなた様の愛人が関わっていることも含め、別件で請求いたします。


こちらに落ち度がない以上、あなた様が私に請求できるものは、何一つありません。


私は、約束を守らない人が大嫌いです。

私からの愛は搾取され、

あなたからの愛はない――

それでも結婚という形ならば致し方なし、と思い始めた矢先でした。


騎士団のお仕事もありますものね。

訓練や遠征で、半年に一度会えれば十分だと思っていました。

子供さえ授かれれば、多少のことには目を瞑るつもりでした。


でも、最初からこの関係性では無理があると、

周りの方々も口を揃えて言っているようです。


あなたに恋慕する、気性のおかしい女性が私に刺客を差し向けていた時、あなた様は守ってくれるどころか、一緒に楽しんでいましたよね。

半年後に白馬の王子様のように助けるつもりだった?

……全く、説得力がありません。


近所の平民や準貴族の方々のほうが、

よほど親身に相談に乗ってくださいました。


この半年で、はっきりわかりました。

あなた様は、私が妻になったとしても、決して守ってはくれない。


あなた様は、

「貴族であれば、女性を暴行しても許される」

そういう価値観をお持ちのようです。


私は、自分の旦那様がそんな趣向の方であってほしくなかった。

戦時中でもない女性に刃を向ける男性は、

等しく下劣な品性をお持ちだと、私は思っています。


最初から結婚する気がなかったのなら、

あなたのお父上に、そう最初から言えばよかったではありませんか。

いったい、何を渋っていたのです?


離婚についてですが。

もし次の女性を見つけたというのなら、

明日までに私へ十億円を支払い、傷つけられた私の尊厳に対する公式な謝罪を発表してください。


そして、愛人をあなたが持ちたいからと言って私にも男性をあてがおうとしましたね。私はあなたと違って愛人を持つ必要はないのですが。


私に似せて作られた猥画についても、

あなた様の指示であったことを明記し、謝罪を。


それができない限り、離婚には応じません。

離婚もしませんし、あなたにお会いすることもありません。


私は今後、まともな縁談を望めないでしょう。

ですから、あなた様と別れるメリットの方がないのです。


他の女性と一緒になるために、

突然「身ぎれい」になることをお望みでしたら――

残念ですが、私は一切、応じません。



卑怯な旦那様へ。

これは復讐ではありません。


ただの、当然の結果です。


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