38.推しとのグッズ開封儀式
「グッズ届いたぁーっ!!」
私は玄関で大声をあげる。
大事に胸に抱えてリビングに戻る。
「夕莉、うるさい」
奏がテーブルの上で眉をしかめている。
しかし、今日の私はそんなこと気にしない。
なぜなら……
「次のライブの先行グッズ届いたの!!」
奏は表情を緩ませて立ち上がる。
「ああ、この前買ってたやつ?」
「そうっ!」
私はるんるんと鼻歌混じりに箱を開封する。
その側で奏は呆れたように見ていた。
中からグッズを取り出す。
まずは、パンフレット。
Tシャツにマフラータオル、アクリルスタンドにランダムアクリルキーホルダー……。
一旦、テーブルに並べる。
奏の居場所がなくなっていき、端の方に追い詰められる。
「居場所ねぇんだけど?」
「端っこいて」
私は軽く言って、グッズを手に取る。
パンフレットはあとでゆっくり見るとして、まずはランダムグッズ開封でしょ。
全8種類。
うち、奏は2種類。
購入した分は10個。
私は銀の袋をひとつずつ開けていく。
まずは、朔、次も朔。陽、朔、陽、そして、凪。
「……」
手が止まる。
「……出ねぇな」
パーカーのポケットに手を突っ込んで、奏がキーホルダーを見下ろす。
私は無言で奏を見る。
そしてまた、袋を開ける。
七個目の袋から出てきたのは……
「奏だっ」
思わず声が出た。
今回のツアーのメインビジュアルの衣装。
装飾の付いた黒のロングジャケットを着こなす奏。
「ぎゃーーっっ、何コレ!?かっこよ……」
悲鳴が零れる。
横にいる奏が指で耳を塞いでいるのが見えた。
「うるさ……」
そんな呟きが聞こえてくる。
でも、私はそんな事お構いなしに、アクキーを抱きしめる。
「とりあえず一つだけでも、出て良かったぁ」
丁寧に銀袋の上に戻し、次を開ける。
次の袋は、また朔。そして、凪。
「……朔、出すぎじゃね?」
奏が覗き込む。
「そんなもんよ」
私は冷静に返す。
しかし、内心はどっきどきだ。
最後の一個……。
奏、来いっ!
そう念じながら開ける。
中には……。
「やった!!」
最後にも奏が出る。
こちらは、今回のツアーTシャツ着た奏。
「コレも、いいぃーっ!」
アクキーを掲げて拝む。
そして次はアクリルスタンドを開ける。
組み立てて、その前にアクキーを並べる。
アクリルスタンドはアクキーと同じ、ツアーのメインビジュアルの衣装でポーズ違い。
「衣装、いいねぇ」
にまにましながら、見つめる。
「なぁ?」
奏が声をかける。
「ん?」
私の目はアクリルスタンドを見ながら、返事だけを返す。
「俺、ここにいるんだけど?」
少し拗ねた奏の声。
「そうだね」
私の返事に、奏の声は更に拗ねる。
「こっち見ろよ」
「え?」
私は奏を見る。
唇を尖らせて拗ねる奏が目に入る。
「そんなにアクスタのがいいのか?」
少しだけ、胸がきゅっとなる。
「奏……拗ねてるの?」
私は人差し指で奏の肩をちょん、と押す。
「そんなんじゃねえけど」
素直じゃない奏。
わかりやすい。
「だって、これ見てよ!カッコいいじゃん!」
「……俺じゃん」
「そりゃあね。どっちも奏」
「じゃあ、俺でいいじゃん」
ふふっと私は笑った。
「やっぱ、拗ねてる」
そう言うと、奏は少しだけ耳を赤くして顔を逸らす。
「違う」
私は思わず、にやっとした。
拗ねる奏が、可愛い。
「……何にやにやしてんの?」
奏が真顔で聞いてくる。
「いや、別に」
ヤバいヤバい。
「もちろん、奏もカッコいいよ?」
奏は少し驚いたように息を呑む。
それから唇の端を少し持ち上げた。
「でもっ、今回のツアービジュアル、最高っ!!」
私は抑えきれずに、また叫ぶ。
奏はまた耳塞いでる。
でも、さっきよりは笑顔。
「ちゃんと俺も大事に扱ってくれよ?」
にやっと笑って呟く。
「もちろん!3万円だからね」
「……値段じゃねぇよ」
奏は呆れたように両手をあげた。
私はテーブルに手をついて奏を見つめながら答える。
「わかってるって。ちゃんと、大事」
奏の顔が、少しだけ赤くなってた。




