28.推しのライブ参戦は反対?
私はこの日を待ちわびていた。
いや、来てほしいような、来てほしくないような……複雑な気持ちだ。
そう、今日はNOCTIS十周年イヤーを締めくくる、ドーム2DAYSの当落発表日なのだ!
時間ぴったり。
私はメールを開く。
タイトル『抽選結果のお知らせ』の文字に心が跳ね上がる。
震える手でタップする。
開く瞬間、思わず目を閉じてしまう。
心で悲鳴を上げながら、恐る恐る目を開く。
うっすらと映る文字は……。
――当選
「やったーーーーっっっ!!」
その瞬間、私はスマホを放り投げて喜んでしまった。
「あっぶなっ」
後ろから声が聞こえる。
どうやら、放り投げたスマホが奏のいる私のベッドの上に落ちたらしい。
「あ、ごめん」
謝りながら、私はスマホを拾う。
「で?」
奏は私を見上げる。
私はテンション高く奏に報告する。
「次のライブ当選したんだっ」
るんるん気分の私を奏は真顔で見ている。
「へぇ……」
奏は少し考えるような素振りを見せた。
その顔を見て、私は嫌な予感がした。
「そのライブ、楽しみじゃん」
にっこり笑う奏。
「へ?」
間抜けな声をあげる私。
時間が止まったかのような瞬間。
「十周年のファイナルだよな?そのライブ」
ニコニコな奏。
「楽しみだな、って言った」
私の思考は、三十秒くらいは停止していたかも知れない。
ハッとして奏に詰め寄る。
「ま、まさか……」
「え?俺も行く」
しれっと言う奏に私は開いた口が塞がらない。
「な、なんでーっ!?」
「え、むしろなんで置いてこうと思ってんの?」
「いやいや、無理無理」
「だから、なんで?」
奏は不機嫌そうに私を見る。
「なんでって……」
ちらっと想像してみる……。
ノクティアだらけの会場。
その中で、動く奏のフィギュア。
あの奏が大人しくしてるわけが、ない。
……バレたら……
そう考えて、ゾッとする。
思わず、両手で腕を抑える。
「怖すぎる……」
ふぅーっと溜め息をつく奏。
「考えすぎ」
いやいや、あなたが考えなさすぎでしょ!?
「大丈夫だって!」
軽く奏は言う。
それでも、私はもちろん、うんとは言えない。
「それに、葵さんも一緒なんだよ?泊まりだよ?」
思いとどまらせる為にそう言ったのに、奏は楽しそうに笑う。
「朔推し葵さん、また観察できるの、楽しみじゃん」
……そう言うことじゃない。
私はがっくりと肩を落とす。
「な?いいだろ?」
小首を傾げて同意を求める奏に、私は少しだけ揺れたけど。
「だ、ダメなものはダメ!」
かろうじて否定する。
つまらなそうに奏は口を尖らせる。
「……また勝手についてくかな……」
ぼそっと言った奏の言葉に、私はさらなる恐怖を覚えた。
「それだけは、やめてっ」
「じゃ、検討してな?」
にやっと笑う奏に、私は絶句する。
こんなの、脅迫じゃないかーっ!!
でも、勝手についてこられるのも……。
悩んだ末に私はしぶしぶではあるが。
「け、検討します……」
それだけを返した。
あくまで、検討だ。
……でも、結局押し切られそうな予感は、している。
「期待してる」
そんな返答を返す奏を私は、少しだけ恨めしい目で見ていた。




