27.推しの人気投票鑑賞会―オマケ―
「楽しかった?」
笑顔の奏が話しかけてくる。
「……楽しかった……」
私は先ほどの動画の余韻に浸りながら、答える。
「俺も、楽しかった」
「えっ?」
「……夕莉を見てるのが」
ニヤッと笑う奏。
「あと、『葵さん』?」
次は、ははっと軽快に笑う。
「なかなか拗らせた朔ファンだな」
私は右手で顔を抑える。
「……そうね、奏ファンにはいない推し方よね」
苦笑いで返す。
「朔ならどんなファンでも、大事にすんだろ」
そうだね、と相槌を打つ。
一瞬、しんとなる。
「ねぇ、奏」
呼ぶと奏は私の方を見上げた。
「なに?」
少しだけ迷って、思い切って聞いてみる。
「……奏は、一位嬉しくないの?」
奏は一瞬、口をきゅっと結んで止まった。
それからすぐに、口角をあげる。
「……感謝は、してる」
曖昧な答えだった。
「そっか……」
私はそれだけ返す。
それ以上は聞けない雰囲気だった。
沈みそうな空気をなんとかしたくて、私は話題を変える。
「奏、最後のコメント、カッコよかったよ」
すると奏は、少しだけ不機嫌そうに顔を逸らして、
「あれは……俺じゃ、ない」
と言った。
隠そうとしても、照れてるんだとわかった。
「ふふっ、でも、いつも私を煽ってる奏と同じ顔してたよ」
横を向いた奏を覗き込むようにして、私は追撃する。
いつもやられてばかりの私の、ささやかな仕返しだ。
奏は、灰色の瞳だけをチラッとこちらに向けた。
何も言えない奏が、ちょっと可愛い。
すると奏は、スッとテーブルの上に立ち上がり、煽るような目で私を見た。
やばっ、スイッチ入っちゃった……?
私はちょっとだけ後悔するが、すでに遅い。
先ほどの動画と同じような笑みを浮かべ。
「『奏の存在に一目惚れした』だっけ?」
フッと唇の端で笑う。
「ずいぶん、喜んでたじゃん?」
灰色の目が細められ、私を射抜く。
胸が、跳ねる。
「……覚悟出来てるよな?」
そして……ノックアウト……。
に、にやけが止まらないっ。
呼吸が苦しいっ。
「……奏」
「ん?」
「やっぱり動画と同じ顔してるよ……」
私は近くのクッションを手に取り、顔を埋める。
ははっと笑う奏。
「そりゃ、どっちも俺だからな」
……結局、私はまた奏に遊ばれただけなのかも知れない……。
そう思いながらも、胸の高鳴りは、なかなか収まらなかった。




