24.推しの人気投票鑑賞会①― 一緒に飯行きたい部門/ギャップがすごい部門 ―
私と葵さんは、息をのんでTV画面を見つめていた。
今日は『NOCTIS – Night Archive』、公式動画チャンネル更新日。
今回は、人気投票の発表日だ。
不定期に行われる人気投票は、ファンの間でも好評で、結果発表のメンバーのトークは毎回、大爆笑&悶えながら見ている。
必ず葵さんと見ているので、今回も葵さんと一緒。
場所は……私の部屋だ。
さすがに今回は、ひやひやしながらだけど、奏には隠れててもらったし、逆に断った方が不自然だったため、いつも通りにすることにした。
「ああ、ドキドキするぅー」
葵さんが胸の前で手をあわせながら、天井を見上げる。
「今回こそっ、朔が総合一位になりますようにっ」
祈るように叫ぶ。
「いやっ、今回も奏が一位だよっ」
それを遮るように、私は返す。
「……夢くらい見させてよ……」
葵さんの目が死んだように私を見る。
私は苦笑いで返す。
カウントダウンが始まり、音楽が鳴り始める。
「きゃー、始まるっ」
葵さんと二人、悲鳴をあげて待つ。
メンバーが画面上に現れ、四人揃ってお辞儀をする。
「こんにちは。NOCTISです」
そんなセリフから始まる。
そして、朔が一歩前に出る。
それだけで、葵さんは笑顔になって画面にくぎ付けだ。
「今日は、ノクティアの皆さんに投票してもらった『NOCTIS人気投票』の発表を行います」
うんうんと頷く、私たち。
「早速発表、行ってみようっ!!」
陽の元気な声で発表が始まる。
まずは、『一緒にご飯行きたい部門』のコメントから発表。
奏へのコメントからスタート。
朔がコメントを淡々と読み上げる。
読み上げられるコメントに私は笑顔になりながら、頷く。
『奏はお高いステーキとか、奢ってくれる気がする』
最後のそのコメントに、私は思わず吹き出して、そして、フィギュアの奏のことを思い出していた。
あの奏も結構贅沢だもんね。
……ソファとか。
ふふっと笑うと、葵さんがこっちを見た。
「奏は無言で払ってくれそうだよねぇ」
「そうだね、なんかさ、ぶっきらぼうな顔で『もう払った』とか言いそう」
顔を合わせて笑い合う。
その時、奏が隠れている棚の方からカタッと物音がして、私の心臓はばくばく鳴った。
え!?
そう思って目線だけを泳がせると、物陰から不機嫌そうな顔を覗かせる奏が見えた。
葵さんにはみえないように、私は慌てて手を振る。
か・く・れ・て。
口パクで伝えると、奏はまたすっと隠れた。
発表は次の凪に移っている。
葵さんは爆笑してお腹を抱えている。
「凪、ご飯たべるの?って、何、めっちゃウケる」
「あー、でも、わかる気がする。凪って天使みたいだよね」
葵さんは大きく頷く。
『俺だって人間だよ?』
画面の中の凪。
「人間、らしいよ」
「ウソウソ、人間じゃないってー」
そんなことを言いながら、笑い合う。
その後、安定の陽、そして朔。
「朔ーっ!!」
朔が画面に映ると、葵さんはTVに向かって両手を差し出す。
ハート振りまいてる(笑)
『朔の胃薬飲むとこが見たい』
このコメントに葵さんは、悶えている。
……え、なんで?
「やっぱり朔は苦労人だわー」
そこ、悶えるとこなの?
私には、朔ファンの気持ちが理解出来ない……。
「……そこ?」
思わず突っ込むと、葵さんは鬼の形相でこちらを見る。
「そこっ!」
それから怒涛のように、語りだす。
「朔の苦労がっ、NOCTISをささえてんだよっ!?」
「天然の凪とかっ、やらかし満載の陽とかっ、自由気ままな奏とかっ」
「朔がまとめてるから、回ってんの!!」
葵さんの勢いに私はたじたじになる。
「わかってるよ〜」
でも、ボソッと反撃。
「……でも、リーダー、奏だけどね」
「名ばかりね」
即、返り討ち。
あ、これ、何も言えないわ。
奏の名ばかりリーダーは有名だもんね。
画面上では、順位が発表される。
一位、陽。
二位、朔。
三位、凪。
四位……奏。
奏、四位かぁ……。
「一位はやっぱ、陽だね」
葵さんが零す。
「うん、そこは毎回安定だね」
「朔は二位かぁ」
「うん……奏、四位だった……」
しゅんとする私の頭をよしよしとなでて、葵さんはフォローをいれる。
「ま、これはまだ『ご飯行きたいランキング』だから」
発表は、次の『ギャップがすごい部門』へ。
コメントは再び奏から。
次々と読み上げられるコメントに私はまた、うんうんと頷く。
『ぶっきらぼうなのに、ステージ上だと煽りスキルMAX』
そのコメントに私は悲鳴をあげそうになった。
……カラオケ行ったときの、奏を思い出してしまった……。
し、心臓が跳ね上がるっ。
私は葵さんの腕を掴み、必死で呼吸した。
「夕莉?どした?」
「いやっ、奏の煽り思い出しちゃった……」
にやにやする葵さんが私を見下ろす。
「……奏の煽りはヤバいからね」
同情されてる気がするのは、気の所為ではないはず……。
『それが、奏でしょ?』
画面から聞こえる、凪の声。
私と葵さんの声がシンクロする。
「「ごもっともです」」
その時、また、棚の方から少しだけ物音がする。
今回は、奏の姿は見えなかった。
『次、凪』
朔の声。
「凪はねぇ…」
しみじみとした葵さんの言葉。
『NOCTISの天音凪』と言えば、伝説だ。
ノクティア以外にも知られている、伝説級の天然だ。
『俺どこが天然?』
そういうとこ。
本気でわかってないときの凪の顔は、ファンにすら恐怖を与える(時がある)。
「それでいて、お酒強すぎでしょ?」
「怖い怖いっ」
それから、葵さんは勿体ぶったように。
「そして……」
私も息をのむ。
「あれ、だよね?」
「そう……」
「「凪ちゃん、って呼ばれたときの、あの冷たい目!!」」
またしてもシンクロする。
「普段のあの穏やかさからは想像もできないよねっ」
「凪のギャップはすごいよね」
そして進む。
次は陽。
「陽もなぁ……」
葵さんが言う。
「普段のあの陽キャからは想像出来ないよね」
「そうね、ドラム叩いてる時はカッコいいね」
でも、画面の中のコメントはなんか散々だ。
「陽、かわいそう」
ふふっと葵さんは笑う。
「最後は朔ねっ!」
最後は朔。
『苦労人』
『胃薬』
『世話焼き』
あの、真面目な見た目からは想像出来ない言葉。
それでも、葵さんは満足しているようだ。
「朔のギャップいいわぁー」
そして、トドメ。
『朔はNOCTISのお母さん』
私たちは二人して吹き出す。
「凪、最強〜っ!」
「でも、わかるーっ!」
手を叩いて喜ぶ葵さん。
画面の中で、朔は淡々結果を発表する。
『一位、凪。二位、陽、三位、朔、四位奏』
「えぇ?奏、また最下位?」
私は落胆の声をあげた。
「まぁ……凪には誰も勝てないでしょう……」
葵さんはしみじみと言った。
「でもっ、奏のギャップもすごいって!」
葵さんはばんっと背中を叩く。
「奏の本番はこれからっ!!」
「うん……」
画面の中は一旦休憩に入った。
私たちも、ひとまず、休憩となる。
再開はまもなく。




