22.推しの解説付き番組・続
番組は進んでいく。
最近の話。
十周年記念イヤーの企画。
ライブに向けての、意気込み。
奏は真剣な表情で画面をみていた。
そして一言。
「よく続いたよなぁ」
独り言のように。
私は無言で奏を見ていた。
私からすれば、当たり前に見えてたバンド活動も、本人達からすれば必死の十年だったんだろうなぁ。
「頑張ってくれて、ありがとう」
私は思わずそう言っていた。
奏は、びっくりした表情でこちらを見た。
それから、ふっと視線を落として。
「……頑張って、っていうか、必死だっただけ」
少し自信なさそうに。
それは、私が見たことのない奏の表情だった。
何とも言えない、切なさがこみ上げる。
奏はまた画面を注視する。
画面の中で、奏が喋ってる。
「これさ、なんか俺、偉そうなこと言ってるけど、全部朔の台本なんだ」
「え"っ」
奏の衝撃の告白に、私は絶句した。
「……それ、私聞いていいヤツ?」
ははっと奏は笑った。
「だって夕莉、俺の不利になるようなことは、広めないだろ?」
にっと笑った奏に、私は翻弄される。
いや、そりゃあ、言わないけど。
というか、言えるかっ。
「奏って、ホント、ずるいよね」
そう言うと、奏はおかしそうに笑う。
「いや、ホントにズルいのはさ、凪みたいなヤツの事だよ」
凪の天然は、ファンでも有名。
MCもだし、インタビューや会報の凪のコーナー、TVでの発言もしかり。
でも、ズルい?
どういうことだろ?
「凪がズルいって?」
意味深に笑った奏は指を一本たてて、口元に持っていく。
「それは、秘密」
それから、画面を指差す。
ちょうど、凪が喋っている。
インタビュー中だ。
『俺は皆が喜んでくれるから、頑張れてます』
にこっと満面の笑みで答える凪は、本当にきらきらして輝いて見える。
この笑顔に、悶え死ぬファンはどれだけいるだろう……。
「な、ズルいだろ?この顔」
いたずらっぽく、奏は凪を指差す。
私は、ぼーっとして凪の笑顔を見ていた。
でも。
「私は奏の笑顔の方が好きだよ」
そう言うと、奏は目を丸くして私を見返した。
それから、息を飲み込むようにして。
「……夕莉もなかなか、ズルいな?」
そう言った。
その顔がまた、可愛くて。
私は内心、転げ回る勢いだった。
もう少しだけ、番組は続く。




