表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しのフィギュアが尊すぎて、推し活できません!  作者: 夜月黎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/45

18.推しと読むファンクラブ会報

3ヶ月に一回の、私の楽しみ。

黒い封筒に入れられた、「Noctia(ノクティア)」会報。

高級感のある漆黒に、「NOCTIS」ロゴの金の箔押し。


仕事から帰ってきてポストを開けた時、これが入ってるとテンション爆上がり。

その日の疲れなんて一気に吹き飛んじゃう。


私はうきうきしながら、部屋に入った。


「たっだいま〜」


声も弾む。

いつものように、窓辺から奏の声が返る。


「おかえり」


振り返った奏は不思議そうな顔で見ている。


「今日はずいぶん、ご機嫌だな」


「もちろん!」


私は意気揚々と黒い封筒を掲げた。

それを見た奏はふっと笑った。


「それ、Noctia会報?」


「そうっ!」


あまりにも私が浮かれていたからだろうか。

心なしか、奏が呆れたように息を吐いた。


「そんな楽しみ?」


「もちろん!」


立て続けの私の被せ気味の即答に、奏は苦笑していた。



着替えを済ませ、温かい珈琲を入れてから座る。

ハサミで端を真っ直ぐに切り、そっと冊子を取り出す。


現れた表紙は前回の十周年記念ライブの写真だ。

奏が中心に立って、後ろに陽、奏の右に凪、左に朔が写ってる。


それだけで、顔がニヤける。

また、思い出しちゃう。ライブの日のこと。


テーブルの上の冊子の横に置いた椅子に座り、奏はそれを見下ろしていた。


足を組んで(ちょっと偉そうに)座り、背もたれに体を預けている。


「……飽きない?」


「飽・き・な・い!!」


またしても即答すると、奏はやれやれとでも言うように首を横に振った。


もうっ、奏には私(達)の気持ちなんて、わかんないでしょうよ!


なんでも知りたい。

この時、この瞬間、奏が何を思っていたか。

何を感じていたか。


本人達には……わからないんだなぁ。

しみじみと思う。


私はページをめくる。

1ページ目からライブのレポ。

文字を辿っていくと、あの日の感情が蘇ってくる。

幕が上がるまでの、緊張。

客電が落ちて、メンバーが出てきた時の、興奮。

世界が一気に開放された感覚。


時々思い出し笑いしながら会報を読む私を、奏はしばらく黙って見ていた。


ライブレポの部分を

読み終えた私は、大きく息を吐いて、珈琲を飲む。


「はぁ……」


その時、奏が感心したように声をあげた。


「ファンって……そんなに熱心に会報読んでくれてんだな?」


その顔は、真面目だ。


「そうだよっ!NOCTISを支えに生きてる人、多いんだから!!」


「ふぅーん」


何かを考えるように奏は会報を見ている。


私は奏に構わず、次のページをめくることにした。


レポの後は、十周年に対するメンバー座談会。


『打ち上げで陽はいつも通りに大騒ぎして、真っ先に潰れてた』


凪の発言に私は思わず笑った。


「陽らしいね」


そう言うと奏は困ったように笑っていた。


「あいつ、うるせーんだよ」


想像出来る。

でもね、私達ファンは知ってるよ。

陽いなかったら、NOCTISはここまで続かなかったって。


奏のその言葉だって、ホントは大切に思ってるから出る言葉だって、信じてる。


「こんなこと言ってるけど、凪だっていつも通りに淡々と飲み続けて、朔に止められてたぞ」


それも想像出来る。

凪ってあんな天使のような顔してるのに、お酒強いんだよね。


「奏は?」


「ん?」


「奏は潰れなかったの?」


奏はちょっと不機嫌そうに顔をそむけた。


「俺がつぶれるかよ」


私はまた思わず笑った。

潰れはしなかったけど、たくさん飲んで朔に止められたのかな?


それも、想像出来るなぁ。


「笑うな」


奏が噛みつく。


「ごめんごめん」


私は軽く謝って、またページをめくる。


メンバーページ。

ノクティアからの投稿ページ。

次回ライブ告知。


どれも毎回、隅から隅まで余すことなく目を通す。


幸せな気持ちに満たされて、私は最後のページを閉じた。


「はぁーっ幸せっ」


思わず漏れた言葉に、奏が苦笑する。


「俺も……面白かった」


そう言って、にやっとしてつけ足す。


「……夕莉が」


途端に私は恥ずかしくなってしまった。


推しに推しのファンクラブ会報読むとこ見られるって、どんな状況?


なんか、つい慣れてきてしまってるけど……おかしくない?



溜め息をつきながら、私は会報を棚にしまい込んだ。

奏は黙ってそれをじっと見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ