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推しのフィギュアが尊すぎて、推し活できません!  作者: 夜月黎


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13.拗ねた推しとの約束

枕元でアラームがなる。

アラーム音ももちろん、NOCTISの曲。


「ゔーん……?」


もう、朝。

のっそりと起き上がって、辺りを見渡す。


なんかいつもとちょっと違う感じを受ける。


「……?」


ベッドの枕元。

奏がまだ寝ていた。


珍しい……。


いつもは奏の方が早く起きてて、私の方が起こされる方だ。


昨日、疲れたのかな?


ちょっと口元だけで笑う。

昨日のことを、思い出してしまう。


奏に乗せられて行ったカラオケ。

奏のいろんな顔を見れた。

奏の……歌声が聞けた。


あ、ニヤニヤしちゃう。


ぱんっと軽く頬を叩いて落ち着かせる。


そう言えば、前、雑誌のインタビューで言ってた。


「ライブの次の日は死んだように寝てる」


って。

そんなカンジなのかな。


私はそーっとベッドから降りて、仕事に行く支度を始める。

もちろん、奏を起こさないように、静かに。




一時間ほどかけて支度を済ませても、奏はまだ起きなかった。


全身かけて歌う奏を思い出す。


そうだよね、あんなに力いっぱい歌ったら、疲れるよね。


私はちょっと悩んだけど、起こさずに出勤することにした。


奏、拗ねるかな?


想像する。

思わず緩む口元を、慌てて引き締める。


メモだけ残して仕事に行くことにした。


テーブルの上に奏へのメッセージを残して、私は静かに家を出た。


「奏、行ってくるね」


小声で伝える。奏には届かなくても。



✢✢✢✢✢✢✢



「…………ん……?」


ゆっくりと奏は目を開いた。


朝……?

それにしては、静かで人の温度もない。


だるそうに起き上がって周囲を見回す。


誰も、いない。


時計を見ると、既に正午を回っていた。


「あ……れ?」


寝すぎたかなと首を傾げる。

立ち上がり、ひとつ大きく伸びをした時に、テーブルの上に気づく。


テーブルまで行くと、メモが残してあった。


『仕事に行ってきます。疲れてたみたいだから、起こさなかったよ。ゆっくりしててね』


少しだけ口元が緩んだけど、すぐに消える。


その場に座り込み、肘をついて顔を乗せる。

細めた目でメモを見つめた。


それから、


「……ふぅーん?」


つまらなそうに息を吐いた。


……帰ってくるのは、まだ先。


奏の視線は遠い窓の向こうを見ていた。



✢✢✢✢✢✢✢


「ただいまっ!!」


元気よく、扉を開ける。


しかし、返ってきたのは沈黙だ。


「……?」


なんか、デジャブ。

前にもこんなこと、あったような……。


「奏……?」


部屋に入る。

奏はいつものソファにいた。

暮れかけた夕日が、奏を照らしてる。


ちょっと、ホッとする。


「……おかえり」


静かな口調で奏は言った。

ゆっくりと振り返った顔は――


少しだけ、不機嫌そうだ。


「ただいま……」


もう一度、私は言って、窓の下に座る。

奏を見上げる。


奏はまだ、何も言わない。


怒ってるのかなぁ?


「……奏?」


声をかけてみる。


チラッと視線だけで私を見て、奏は口を開いた。


「……いなかった……」


「え?」


あまりにも小さな声に思わず聞き返す。


「……起きたら、夕莉いなかった」


憮然とした声が返ってくる。


一瞬ぽかんとしてしまった私は、すぐに苦笑いする。


ホントに拗ねちゃったんだ……。


「ごめんね、奏疲れてそうだったから」


「……でも、起こして欲しかった」


ちょっと子どもみたいな奏が、なんか可愛い。


「うん、ごめんね」


私はもう一度謝った。


「次は起こせよ?」


ぶっきらぼうに奏は返す。

私はまた苦笑いしながら、


「わかったよ」


そう答えた。


奏はやっとこちらに身体を向けて、いつもの雰囲気に戻る。


「お疲れ様」


そう言った笑顔は、やっぱり何よりも眩しくて、尊くて……。


私はまた崩壊しそうな顔を両手で覆う。


「でも、やっぱり奏、疲れてたでしょ?」


ごまかしながら聞く。


「……少しだけな」


不本意そうな奏。

私はまた、ちょっと可笑しくなってしまった。


「ふふっ」


つい笑ってしまう。


「……夕莉?」


すると、奏はいつもの笑顔で刺してくる。

やばっ。また言いくるめられるヤツだ。

そう思って私は、もう一度謝る。


「ごめんって」


それからすぐに言い訳じゃないけど、言い訳をする。


「前に雑誌でさ、ライブの次の日は死んだように寝てるって言ってたから、今日もそうなのかなって、思って」


そう言うと、奏は呆れたように笑った。


「まあ……そうなんだけど……」


「夕莉、そんなことまで覚えてんだ?」


「もちろん!」


即答すると、奏は面食らってた。

それからちょっと困ったように、


「夕莉にはかなわねぇな」


と。


……何が??


私の頭の中は疑問符でいっぱいだった。


「……次は……次の日、夕莉が休みの時にな?」


私の疑問なんかお構いなしに、奏は言う。


「え?」


「……でも、次は起こせよ?」


私は一瞬ぽかんとしたけど、すぐにわかった。


ちょっと温かい気持ちになる。


「うん、約束ね」


灰色(グレー)の目に深い色が重なり、こちらを見ていた。

私も笑顔で奏に返した。





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