新・私のエッセイ~ 第277弾:過去作からのシングルカットエッセイ ~ 森で出会った彼女
【宮城県の研修から戻って ~ 2025年4月上旬の出来事】
・・・いやー、キツかったっすねぇ~。
まいったまいった。
悪いスけど・・・
もうニ度と行きたくないですよ。。。
・・・と、まずは「グチ」を聞いていただきました❤️
今回の研修なんですが、
セコムジャスティックさんがからんだものでして、
ぼくがいま所属している警備会社独自のものでした。
消火器や消火栓、避難誘導などに関する内容だったんですけど・・・
いやー、キツイッ!!
「右向け右ィッ!」
「左向け左ィッ!」
「回れ右ッ!」
「敬礼ッ!!」
などの警備員の基本動作もビッチリやられましたし、
座学での「講義」も。
いねむりなんかできませんからねぇ・・・。
7年前の2018年度から毎年やっている訓練らしいんですが、
今年の「選抜メンバー」としての宇都宮営業所の警備員からは、
ぼくと相馬隊員のふたりが参加。
・・・まぁ、
こんなハナシを聞いても、皆さんだって退屈でしょうし、眠くなっちまいますよねぇ(笑)。
そこで、こんなエピソード・・・というのか、
『みやげ話』をば。
・・・今回の警備研修は、1泊2日の泊まりこみだったんですが、
一日目の夕食というのがですね、
宿泊所兼屋内訓練所から、1キロ以上も離れた場所にある、
個人経営のペンション・・・じゃねぇ。
いや、民宿ですね、ありゃー。
・・・に、全員が歩いていきます。
一日目のカリキュラムが終了したのが、夜の7時でした。
すでに道は暗く、
懐中電灯でもないと、まず、歩けません。
一応、舗装されてはいるものの・・・
あちこちに亀裂が入ったり、
森の中に作られた集落なので、風で折れた木の枝なんかが道路上に散乱していたりして、
暗闇での歩行は、かなり危険でした。
ぼくは、この研修が初めての参加だったということもあり・・・
こんな暗い道を、夕食のために歩かされるなんて思ってもみなかったもんですから、
懐中電灯なんて用意してなかった。
スマホのライトでは、じゅうぶんじゃなかったし。
・・・だいたい、宿泊部屋に置いてきちまったですよ、そんなの。
だから、仲間や先輩たちのあとにくっついて、
例のペンションに到着しました。
『どんぐりⅡ』っていうお店です。
・・・もしかしたら、泊まった経験のある地元の読者の方もいるかもね。
夕食のメニューは、カレーライスでした。
なかなかうまかったですよ。
カレールーにコクがあって、
ご飯もホカホカでね。
・・・食っている最中に、ぼくといっしょにここまで来たメンバーが、
そそくさと食い終わって、どんどんペンションをあとにします。
で・・・ひとり取り残されたぼくも、宿泊所に帰ろうとしたわけ。
ところがッ!!
いざ、ペンションを出て、路上を見渡してみますとね・・・
まったくといっていいほど、「明かり」がない!
数軒の民家はあるものの・・・
そこから離れると、
森の中を通る道は、「漆黒の闇」と化します。
・・・わずかに足元が確認できるくらい。
でもね・・・
ペンションまでのルートは、それほど複雑なものではなかったので、
「暗くたって、なんとかなるさ!」
などと、タカをくくっておりました。
暗闇の中、
ときどき頭上に見える、
森の木々のすきまから漏れてくる「星明かり」や青黒い空と、ここまでたどってきた記憶をたよりに、
ひたすら、奥へ奥へと進んでゆきます。
「あれぇ・・・? こんなに遠かったっけ?? 途中にたしか、昼間訓練した施設を通過するはずなんだがな・・・。」
・・・おかしいって気づきました。
こんなに歩くわけないし、
それに足元が、砂利になってきとる・・・。
砂利の道なんか、来るときには、絶対に通りませんでしたよ。
そして、前方には、
さらなる、別の大きな森が現われはじめました。
「やっべ! 完全に間違った道を歩いてっぞ・・・どうすっぺ・・・素直に引き返すかぁ・・・」
でもね・・・
そう思っても、足がいうことをききません。
自分の意思とは反対に、どんどん歩を進めています。
・・・と。
前方、右手・・・
暗闇の中に、
ぽつんと、小さな明かりが。
(なんだ、ありゃ・・・?)
いぶかしんでいる間もなく、
光源に近づくぼく。
「んんっ・・・『人』か、あれは・・・?」
闇の中に、
誰かが立っています。
小さい、ペンライトみたいな明かりを持って。
「・・・こんばんは。」
その人が、話しかけてきました。
「あぁ・・・こ・・・こんばんは。」
目の前に立っているのは・・・
そうですねぇ、
トシのころは、20代なかば・・・って感じの、スリムな若い女性。
メガネをかけた、なかなかの美人。
・・・背は、あまり高くない。
「これから、どちらへ・・・?」
抑揚のないイントネーションで、
女性が、表情を変えずにたずねてきます。
ゾクリとするような、青白い顔。
「いや、そのぉ・・・おはずかしい限りなんですが、どうも道に迷ったようです。いまさっきまで、『どんぐりさん』でカレーなんか食べてたんですけどね・・・。」
「・・・この先はあぶないですよ。道も悪いし、家もなにもありませんから・・・。」
「そうなんですか?」
「ええ。引き返されたほうがいいですね。『どんぐりさん』なら、わたしも、かなり以前に泊まったことがありますので・・・。」
「あ・・・ありがとうございます! 引き返そうにも、真っ暗闇なもんですから・・・足元もおぼつかない状態で、正直、困っていたところなんですよ。」
「・・・ご案内します。」
親切な美人に誘導されて、
ふたり仲良く並んで、ペンションへと向かいます。
(・・・いやー、助かった! あれぇ・・・? ちょっと待てよ。)
ようやくぼくも気づきます。
(おかしいぞ。あんな真っ暗闇の森の手前に、こんな時間に、若い女性が一人で立ってるなんて・・・。)
(もしかしたら、この人・・・)
一瞬、そんな考えが頭をよぎりましたが、
ぼくの、そんな不安を払ってくれるように、女性はいいます。
「・・・心配なさらないでください。わたしはいま、たしかに、あなたといっしょに、こうして並んで歩いていますので。なにもこわがらないで・・・。」
(・・・そうか。やっぱり、この方・・・。)
(でも、いいさ。悪いようにはしない感じだもんな。それに、この人といっしょにいると・・・なんだか、ほっとするんだよ・・・。)
そのうちに、
『どんぐりⅡ』の明かりが見えてきました。
「いやぁー、ありがとうございました。本当に助かりました。これこそまさに、『地獄になんとやら』ってヤツでして・・・」
礼をいいながら振り返ると、ぼくは・・・
たった一人で、ペンションの玄関の前に立ってました。
・・・女性の姿は、もうありません。
いつの間にか、いなくなってました。
でもぼくは、
ちっとも怖くなんかなかった。
(本当に、ありがとうございました。きっと、あなたが生きていらして、ぼくと出会っていたなら、もしかしたら、いまごろは、ふたり仲良く、手をつなぎながら散歩していたかもしれませんね・・・。)
(・・・この研修はキツイから、ニ度と参加したくはないけど、優しいあなたに会えるんなら、もう一度、ここへ来てもいい。この時間にね。あんな暗闇の中、見ず知らずの中年男のぼくを助けてくれるなんてね・・・よほどぼくを信用してくれたんですね。きっと生前のあなたは、みんなから好かれ・・・そして、愛されるキャラクターだったんでしょう。ぼくは、そう思ってますからね・・・。)
突風が、
そこで、どーっと吹き荒れました。
彼女が「返事」してくれたんですね、きっと・・・。
・・・その後、
ペンションに残っていた教官らと合流したぼくは、
無事、宿泊所に帰還することができました。
・・・みんな、あの若い女性のおかげですよ。
(ありがとう・・・本当にありがとう・・・では、おやすみなさい。)




