③何で小説を書くのか。
最終的に漫画を描きたい。
話を面白いと思って貰えたら、読んだ人を夢中に出来たら。
そんな気持ちがあって、作品を作っている。
そして小説投稿の活動をやってて思ったんだけど。
僕はそもそも、小説を書くために小説を書いていない。
やったのは上位作品の簡易的な文体の模倣だけ。
だから小説を読む人の心には届かない。
小説を読む人の気持ちを考えたことなど無い。
なぜか?
僕が小説を読まないからだ。
自分がやらない事をやってる人の気持ちが分かるワケが無い。
本当に小説を読むのが好きなら、面白い作品や、自分の趣味に合うものに時間を使いたいだろう。そうなるとランキングで探すか、自分の好きなジャンルで検索するのが普通。
それは新作小説を丹念に見回りする人ではない。
だから今度は真面目に他人の小説を読んでみた。
ランキングの方ではなく、最新の更新作品を見てみた。
ブクマ0、評価0の作品がずらりと並ぶ更新一覧。
無作為に手当り次第に見てみた。
新作の名作を発見する探検家のような感覚だ。
作風は色々だけど、読みにくいと思ったらスクロールせずに去るし、何が起きてるかさっぱり分からなければ、やっぱり去る。いきなり専門用語連発されても去る。
個人的な尺度に引っかかって、一作品を通して見るのなんて10クリックに一回程度。それでもせいぜい3000文字。
中には、これは面白いけど評価つけられてないな。って思う作品がある。そうしたら評価だけ入れてくる。
その時に思った。
それが無名の新作小説を読みに来ている人だ。
ここに居る人、僕がそれになった瞬間だった。
そして、自分の作品も新作探しの探検家達が、チラ見して通り過ぎていく、その中のひとつに過ぎないと言う事に気づく。
pixivはイラストだ。絵だから一瞬で分かる。
ニコニコ動画は動画だ。目と耳で眺めていればいい。
Xは短文だ、視界の範囲で1ポストを読み終える。
小説は違う、読むのに覚悟がいる。
読むというエネルギーを消費する行動をとる覚悟だ。
それをタイトルで来てくれた人にして貰わなくてはいけない。
それこそ必死に手を上げて、宣言するんだ。
乗っけから「これ面白いからっ!」「読んだ時間、無駄にさせませんから!」って物語を通して叫ぶ。それが刺さらなければ、1スクロールすらもして貰えない。
評価ボタンなんて遥か向こう。宇宙の彼方だ。
ってのは言い過ぎで、ブラジルくらいかもしれない。
とにかく遠い。
僕は漫画を描こうと思っていた。
漫画の為にプロットを書いた。
プロットをいじって小説にした。
でも小説は漫画じゃない。
当たり前のことだけど、言葉で「そうだね」ってなるのと、感じて「そう思う」のって違う。
漫画的に面白いことをしていても、小説では面白くならない。
それが真実だった。
小説を書く為の小説が必要だ。
数多くある小説の中から、自分を見つけて選んで来てくれた人に対して、内容を届ける為の小説。
それを考えなくてはいけない。
反応を貰えるような作品を作れるだろうか。
来た人を掴んで離さないような文章、言葉の罠を書くことが出来るか。
結局のところ、僕は漫画を諦めて、小説を妥協と捉えていた。
漫画が大変だから、長大な作業への確証が欲しいから、小説に逃げてきた。
でもその確証を得るには、小説を本気でやらなきゃいけない。
中々に皮肉な話だ。
漫画を描くために小説を始めたのに、小説を書くためには小説を読まなきゃいけないし。小説を本気で研究しなくてはいけない。
だったら、やってみよう。
小説を書く為に小説を書こう。
小説を書く為に小説を読もう。
自分の物語が面白いという確証を得るために。
反応を貰えるような作品を投稿する為の研究だ。
その先に、漫画がある。
まだ駆け出しですが、四カ月前の作文と同じシーンを書いた表現の変化だけ公開。
2025年7月版
ネオは眉を寄せ、笑った顔で見下す。
「一般市民様に優しい正義の味方が好みなんだけどな、私は」
そう言ってネオは腰を深く落とす。ジャスティスも構えを取った。
「お前は一般市民じゃないだろう」
2025年11月版
ネオの顔は余裕に満ちた笑顔だった。
ブースターで飛べば余裕で逃げられると思っているわけではない。彼女にとっての正義のひとつは、既に守る事を達成していたからだ。既に勝利の余韻に浸っていた。
火災の奥から吹いた黒煙交じりの風が、地面を殴って不完全燃焼の匂いを運んでくる。
ネオは髪を揺らして腰を落とし、ライフルを胸に引きつけてから、細い指を立てて煽り飛ばす。
「一般市民様に優しい正義の味方の方が、好みなんだけどな。私は」
「お前が一般市民のワケが無いだろう」
ジャスティスは相変わらず顔色ひとつ変えず即答し、ボクシングのステップに入った。
*
文字数重い。長くなった。
でも長い方が、読みやすさも景色も浮かぶと思う。
これは漫画ならキャラ対面2コマと風景1コマで終わる会話。
作風によっては一コマで対峙した二人で済むかもしれない。
小説にするには、書く事も考える事も多い。
しかし漫画では伝わらない事を伝える事も出来る。
特に匂いとか煙とかは、漫画では煙の上がった風景しか伝えられない。
間違いなく、小説じゃないと伝えられないものだと思う。
そしてまた、人の作品を読んでみる。
その時に感じる、良い所をフィードバックさせる。
それも重要だけど、ここ読み飛ばしたくなったな。ここで読むのやめたくなったな。ってなる瞬間、その理由を考える。そして同じことをしないように心がける。
それが、小説を書く為に小説を書く。小説技術が成長するって事だと思うから。
また改めて見た時に、これで成長を感じてたのか。改稿しよ。
なんて、思えるくらいにね。
あなたは、なんで小説を書いていますか?




