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SSB  作者: Primo
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The Backs

 絶望の中アレックスはロンドンへと戻った。リンダを失った今、その隙間を埋めるものは何もない。形見である量子論の本を見るともなしに眺めてみるが専門用語が多く、その全てを理解することはできなかった。だがリンダが読んでいたという、ただそれだけの事実が今もリンダとの繋がりのように思えて、気がつけばその本を手に取って日々を過ごしていた。アレックスは本をテーブルに置き、タバコの箱を手に取るが、リンダの言葉が頭をかすめ、そのままゴミ箱に投げ捨てた。生きている時にタバコをやめていたらリンダは喜んでくれただろうか? ロンドンに来なければ何かしら運命の歯車の回転を変えることができたのだろうか? リンダをロンドンに連れてきていたなら……、そんな無意味な仮定が何度も何度も頭の中で繰り返される。


 いつまでも引きずっていても仕方ないことは分かってはいる。だが、アレックスにとってそう簡単に割り切れるものではない。くだんの震源地はケンブリッジを縦断するケム川のほとりにある緑地公園、ザ・バックスだと知ると、そこへ行ってどうなるものでもないとは分かってはいても、その目で確かめずにはいられない。アレックスは再びケンブリッジの地を踏む。


 そこは、風光明媚な観光地であったが、今となっては、その面影を伺い知ることはできない。不自然に隆起した地形、ひび割れた地面、尋常ではないエネルギーが加わったことが伝わってきた。公園は立ち入り禁止になっていたが、アレックスは規制線をくぐり中へと足を踏み入れた。

 ここが、こここそが災いの元凶であり、リンダの命を無情にも奪ったのだと思い、アレックスは拳を握りしめた。足元に注意しながら、かつて遊歩道であったであろう場所を、探りながら歩く。ケム川はかつての流れを取り戻したようだ。そしてそれは、ここがかつてリンダと何度も訪れた場所であることをアレックスに思い起こさせた。

 その時、強い揺れがアレックスを襲う。


 余震


 足元の地面が裂け、バランスを崩したアレックスはそのまま地割れの中へと吸い込まれていった。

 

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