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野草から始まる異世界スローライフ  作者: にのまえ
第一章

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第七十六話

「キキさん、ごめんなさい」

「すまない」

「ごめんなさい」


 学園に通うのは無理で、これ以上モブがこの物語に干渉しすぎるのも良くないと思う。今の、私のいちばんの目的はサタ様、アール君と冒険をすること。


 キキに今は冒険がしたいので、ここにずっとはいられない、月一くらいに解毒薬を持って顔をだすと約束した。


 その提案にキキは喜んでくれた。

 次に会う時までに、魔導具のことをモサモサ君に聞いておくからと、彼女と言ってくれた。『また会おうね』と私達は学園から離れた。王都の見学はまたにして、ヌヌと一緒にホウキで、原っぱまで戻ってきた。


 頭の上にいるサタ様が原っぱを見て。


〈エルバ、ヌヌ、青花から離れた場所に降りてくれ、青花に誰かいる〉


〈分かった〉

〈分かったよぉ~〉


 サタ様の念話で『例の青い花』に誰かいると言った。私達はその青花に居る人に見つからないよう、離れた茂みに降りた。

 降りた茂みからコッソリ覗くと。短な黒髪で、モサモサ君と同じ学園の制服を着た男性が、月明かりの下花を見ていた。


 その男性を、サタ様はじっくり見て……


〈エルバ、アール、ヌヌ、そこにいるのは新しい魔王だな……〉


 と言った。

 

〈え、新魔王様?〉


〈おお、その様ですね……新魔王様だというのに、側近、執事も連れず、ここで何をなさっているのでしょう?〉


〈新魔王様、若いねぇ~〉


 新魔王ローザンは青花をぼんやり見つめていた。

 

 彼の足元には数『野菜の植え方』『野菜の育て方』『農具資料』の数冊の書物が積んである。


 彼は髪をかき揚げ。


「ハァ……あの女性が書庫に来ると隣に座って、読書の邪魔ばかりして……勉強がはかどらない。ボクはみんなが出してくれた学費と、奨学金で学園に通わせてもらっているんだ……3年間しっかり勉強がしたい」


 新魔王ローザンは拳をキツく握り、苦しげな表情を浮かべた。


「……1人でもいい、言葉を話せなくてもいいから……魔族の友達がほしい。やはり爺やのいう通り、付き人を1人連れてくればよかった……でも、みんなは人間が怖くて嫌い、無理に頼むことができなかった」


 シュンと、肩を落とす新魔王様。


〈うむ、魔王は完璧なホームシックだな……わかるぞ〉

〈ええ、わかりますね〉

〈わっかるぅ~〉


 サタ様達は彼に同情した。そんなサタ様達を見て、私もわかると頷く。多くの魔族に慕われて、魔王国で楽しく住んでいただろうなと。


 ローザンもまた新魔王として、みんなに慕われているんだ。


「でも負けない、ボクには夢がある。いま畑は枯れてしまったが……お優しかった前魔王サタナス様と同じく、魔王城の周りに畑をたくさん作り。魔王国のみんなで、いろんな種類の野菜を作って食べて、静かに暮らすんだ!」


(ヤンデレじゃない……ローザンは小説とは性格が違う。彼もサタ様と同じで国を思う優しい魔王様だ)


〈新しい魔王様もサタ様と同じく良き人です。畑ですか……懐かしいですね。サタ様は冒険で得た報酬で、面白そうだと言っては名前も知らない野菜のタネを大量に買って、魔王の周りに僕達と植えていましたね〉


〈うむ、枝が伸び野菜が実る、または土の中、上に野菜が実るのだぞ……ハーブは肉魚の匂い消しにもなり、野菜は調理して食べれば美味い。目で楽しめて腹もふくれる一石二鳥だ〉


〈作った野菜は美味しいですが……僕達の調理法は焼くしか、ありませんでしたけどね〉


(焼き野菜かな? ――ピーマン、パプリカ、アスパラガス、オクラ……食べたい)


〈野菜を焼くだけか……ククッ、そうだったな。あれだ、あれ……ジャロ芋だったかな? 芋をそのまま焚き火で丸焼きしたが、中まで火が通らず固かったな……〉


〈はい、最後みんなは生かじりで食べていましたね。――この前、エルバ様が細切りにしたジャロ芋を、油で揚げだときは正直驚きました。確か調理名がフライドポテト、ほくほくサクサクで美味しかった〉


〈フライドポテトか、あれは塩コショウかけて食べると、酒のアテにピッタリだ〉

 

〈何々? サタナス様、アールが言った、フライドポテト食べたぁ~い!〉


 みんながジャロ芋の話をするから、私も食べたくなってきた。だけど、フライドポテトは油の後片付けが面倒だから。ジャロ芋を千切りにして、フライパンに引き詰めて焼く……ガレットはどうだろう?


 お手軽だし、一度に量もたくさんできる。


〈ヌヌ君、フライドポテトは今度作るから……いまは、ジャロ芋のガレットにしない?〉

 


〈〈ガレット?〉〉

 


 みんなは驚きと、そく『食べたい!』と瞳を光らせた。

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