第六話
お米だ!
お米だ!
この世界でお米を見つけた、あまりの嬉しさに稲を持ってキッチンで舞っていた。そこに夕飯の支度に調合室から出てきた、ママと鉢合わせ。
「「えっ!」」
コメ草を手に舞う私と。
そんな私を見て驚くママ。
「エルバ、どうしたの?」
「マ、ママ……えっ――と、これはなんの薬草かなって? 気になって振っていたの……」
なんたる苦し紛れの言葉……ほんとうはコメを見つけ『喜びの舞』を舞っていたのだけど……。
「ああ、それはね。鬼人族の方が作る、名前がコメ草というめずらしい薬草なの」
「鬼人族? コメ草?」
(おお、名前もお米に似てる!)
ママにコメ草について詳しく教えてくれた。
魔法都市の北に住む、亜人種族の鬼人たちはコメ草という薬草を栽培している。――このコメ草から採れる白い粒に水と熱を加え、鍋でトロトロに煮込み"コメのり"というノリを作っていると言った。
ほかにも。鬼人たちは木の皮から作られる鬼紙といわれる紙も作っていて、手帖、障子の紙、電気のカサ、提灯、雨よけのキシ傘などにキシとコメのりが使われるのだとか。
ママたちは高級な羊皮紙よりも、キシは書きやすくて使っている者は多い。
――多分、鬼紙は和紙だ。
そして、ママは前からコメ草が気になっていたらしく。傷薬などの薬とコメ草を物々交換してきて、コメ草から薬が作れないかを実験するらしい。
その実験も面白そうだけど。
博士の情報からしてコメはかなりの確率で美味い。
ママにそのコメを炊いて食べると"美味しいよ"と伝えたいの……だけど「その知識は何処で知ったの?」と聞かれると。
どう説明をしたらいいのか。詳しく、前世の記憶から話さなくてはならないかも。
そして、おかしな子だと思われてママに嫌われる?
生まれ変わって、優しい両親と出会えた……もう1人ぼっちは嫌だ。伝えたくてもいえない私に、ママは私の顔を覗き込み。
「エルバ、言いたいことがあったら、なんでもママに言っていいのよ」
と、微笑んで言われて。思い切ってママに"コメを炊きたい"と伝えた。ママは変に思うどころか『コメを炊くの?』『それは面白そうね。さっそく、やってみましょう』と言ってくれた。
ホッ、よかった。
ママに変な子だと、思われなかったみたい。