おふだを剥がす肝試し
「なろうラジオ大賞4」投稿作品です。
三百年前、この地を荒し、人々に危害を加えたモノが居た。そのモノは陰陽師によって捕らえられ、木箱に収めおふだで封印され、沼地の奥の祠の中に祀られた。今でもそのモノは、封印が解かれる事を虎視眈々と狙っている。
現代になってこの場所は、地元の若者にとって肝試しの穴場となっていた。
今宵も若者二人が沼地にやってきた。
「センパ~イ、めっちゃ震えてるじゃないですか」
「お前が急に『肝試しやろう』って言うから、心構えがまだ出来てねぇわ。こーゆーのはな、もっと事前に言ってくれないと」
先輩は腕を組んで前かがみになって、周囲をキョロキョロしながら歩いている。
「センパ~イ、ビビッてんでしょ?」
「ビビッてねーし!オレがここらで一番ツエーって知ってるだろうが!魑魅魍魎だって怖かねーわ」
「センパイ、難しい言葉知ってたんすね。あ、祠が見えてきましたよ。おふだ取って帰りましょう。他の奴らに見せびらかすんですよね」
「お、おうよ」
二人は沼の淵を歩いて祠に辿り着いた。周囲には木がうっそうと生えている。
「ザクロの木がいっぱいですね。もう実は終わってるので残念ですけど。『ザクロは血の味』と言いますから、祠に封印されてるのって、もしかしたら僕の仲間の吸血鬼?いや東洋だと鬼子母神かな?」
「今なんて?吸血鬼?お前、吸血鬼?」
先輩はぎょっとして後輩を見る。
「あれっ、聞いてませんでした?新歓の時に『吸血鬼で~す、血を飲みま~す』ってカミングアウトしたのですけど?」
「そんなタイミングだと誰も信じないって。え、何?ウソ?ひょっとして今、肝試しって誘ってここに来て・・・え、オレ血ぃ吸われるの、お前に?まさか仕組んだ?」
「そんなビビんなくても~。分別はちゃんとあるんで。センパイの事、尊敬してるんですよ? ほら、祠を開けて、おふだ剥がしてくださいよ」
「いや、ちょ、お前の方が怖いわ。でもおふだ剥がすか」
先輩は祠の中へ手を伸ばし、木箱を取ろうとした。
「センパイ、やっぱ我慢できんかった」
先輩に覆いかぶさる後輩。牙が首筋にかかる。
「ああ、うそ、あ"ぁ"~っ」
ぢゅるぢゅるぢゅる~~~
「ふぅご馳走様。さて先輩の記憶を消して、また来よう!」
封印されたモノは『何度目だっけかコイツら』と思った。
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